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21話 消えた証拠
しおりを挟む「え?」
佐山乃亜という名前に私の体が反応した。急いでテレビのボリュームをあげ画面を食い入るように見た。
「警察によりますと、昨日午前一時頃、被害者女性が暮らすマンションの一室で火事があり消防が駆け付けたところ、住人の佐山乃亜さんが血を流した状態で倒れているのを発見しました。佐山さんは病院に運ばれましたが、その後死亡が確認されました。またこの火事で現場の一室が全焼。他の住人に怪我はありませんでした。
警察は現場近くにいた向井川容疑者を殺人未遂の疑いで緊急逮捕。調べに対し男は殺人と放火を認めているとのことです。
向井川容疑者と被害者女性の間には金銭トラブルがあったと話しており、警察は動機や殺害に至った経緯などを調べています」
私は慌ててスマホを取り出し佐山に電話を掛けた。わかってはいたが、何度掛けても繋がらない。彼女は死んだのだから当然ではあるが、一つの不安が頭を過った。
火事で彼女のスマホは焼けてしまったのかもしれない。部屋が全焼したのであればコピーなどあったとしても残ってないだろう。
最強の切り札が消えてしまった……
おれは事件の数日後、元吹奏楽部の生徒から事件の詳細を聞くことができた。
どうやら佐山はドラッグをやっていたらしく、大学にもほとんど行っていなかったそうだ。違法薬物や特殊詐欺など、かなり危ない仕事もしていたらしく殺された相手とは麻薬絡みの付き合いだったようだ。
なんらかのトラブルがあったのだろう。犯人はそれらの証拠隠滅のため部屋に火を放った。おそらく佐山の所持品もほとんど焼けてしまったはずだ。
これであの動画も消えた。仮にどこかに残っていたとしても、あいつの証言がなければ意味をなさない。
「いろいろ教えてくれてありがとう。どうだい大学は? 楽しんでる?」
おれは電話先の元教え子に尋ねた。
「はいそれなりに。バイトばっかりやってますけど。そういえば先生は今、海蘭《うんらん》高校に赴任してるんですよね?」
流石、噂好きの情報屋だ。耳が良い。
「よく知ってるね。あまり知られないようにしたつもりだったんだけど」
「あんなことがありましたからね。ちなみに愛伊香ちゃんの妹が海蘭高校に通ってるって知ってましたか?」
「妹!? 羽田さんは妹がいたの?」
「確か四つ下だったから……今高二くらいかな? あの事故の一年後くらいに羽田さんの御両親は離婚したらしくて。妹さんは母親に引き取られて、今はそっちの県で暮らしているらしいですよ」
「……その妹さんの名前とかは知ってる?」
「ん~確か……祐加理……苗字が変わって今は城山祐加理ちゃんだったかな?」
おれは言葉を失った。愛伊香に妹がいたのは全く知らなかった。ましてその妹が祐加理だとは……まさか彼女はおれと愛伊香の関係を知ってて……
「――先生!? 高橋先生! どうかしました?」
「ん、あぁ大丈夫だ……今日はありがとう。また連絡するよ」
おれは電話を切るとソファーに深く体を沈めた。ふぅーと息を吐き天井を見つめ改めて考えた。
もし祐加理がおれと愛伊香の関係を知っていたとしたら、はたしておれに体を許したりするだろうか? おれが愛伊香の死の原因を作ったと疑ってるのではないか。
「まさかそれを探るために?」
そういえばこの前はやけに慌てて帰ったような気がする。おれが寝ている間に何か見つけたのか? いやだが、交換日誌や愛伊香に繋がるようなものは全て処分した。
あの日は確か……
「そうかっ! 佐山からのメッセージかっ!」
おれはガバッとソファーから立ち上がり、急いでスマホの履歴を見る。
受信した日時は祐加理がここに来た日で、時間もおそらく彼女が帰った少し前だ。
彼女は佐山とコンタクトを取った。そしておそらくあの動画の存在を知った。
ではなぜ何も言ってこない? あれから何か月も経っているはずだ。佐山が何も教えなかったのか?
祐加理の狙いが見えてこない……
「仕方ない。直接聞くしかないな」
おれはスマホを手にすると彼女にメッセージを送った。
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