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10. 悪役令嬢は、魔法がお好き
しおりを挟む魔法学園
ユニオール王国が誇る名門中の名門。国中の貴族の子息だけではなく、平民も一度は入学を考えると言われているこの学園。
その理由は入学特別監督官が担当する特別入学試験制度。この特異な入学試験が理由である。
この特別入学試験に合格すれば、その後も入学特別監督官の特別推薦者として、入学後は名を馳せることとなり貴族も平民も関係なく羨望の眼差しで見られることは約束されたも同然なのだ。
そのため、この特別入学試験を行う前に入学試験許可試験を入学希望者は行わなければならず、これにより大多数の人々が振るいにかけられることとなる。
その振るいに残った一握りの宝石の原石たちを、魔法学園は社会階級関係なしに平等に入学させることを全ての人間に約束している。
特別入学試験では、学校目標である魔法力に関係する『力』、そして判断力に関係する『知』、最後に人としての人間性が試される『心」が毎年試験内容では、厳しく評価され、この3つの得点を総合した結果が特別入学試験に合格できるか、といった点で非常に重要になっている。
この特別入学試験はこの学校目標に基づいて行われ、試験内容自体は当日まで門外極秘であるために、入学志願者は万全の準備を期して挑むことが最も望ましいと言えるのだ。
学園歌にも記されている
初めの3年心を育て、真ん中3年頭を使う、最後の3年力を伸ばす。
というフレーズは、正しく学校の教育目標に基づいたものであることに間違いない。――
魔法学園の入学試験。
突然出てきた聞き覚えありまくりの名前にフィアンナは仰天した。
嫌な予感が拭えないフィアンナは、その真意を確かめるべく、今まさにやり切ったという面持ちを持っていたルカ殿下に開口した。
「で、殿下? その、入学試験を受けることがなぜ宰相殿との婚約と関係があるんですの?」
「……シルヴァンは魔法学園の出身で、そこでとても優秀な成績を残したから、優秀な学園出身者だけが任される、入学特別監督官を任命されたんだ」
……つ、つまり。
「――私と貴方が婚約をする、という前に貴方がどれほどの人間なのかを、私たちに示していただかなければいけないということですよ」
お分かりですか?というように鼻を鳴らしてフィアンナに語るのは、件のシルヴァン宰相。
そんなシルヴァンに一言物申してやりたくなるが、フィアンナにはそんな証明ができるはずもない。中身は普通のOLなのだから、もし今ここで何かして見せろと言われてもできる保証もないのだ。
「……そもそもが間違いだったのです。貴方が私や殿下にふさわしい人間なのかということを、ハッキリとさせていなかったこと、貴方が本当に私たちの力たるのかということを知らぬままにしてしまった」
そうはおもいませんか。
ヴィシャス公爵夫妻?
そのシルヴァンの一言に、イレーナは眉を吊り上げた。
「あら。それは、私たちの娘が信用できないようなおっしゃり様ですわね」
上機嫌になり方眉を挙げるシルヴァン宰相に、喋りかけることも業腹であると口元をビキビキと引き攣らせるイレーナ。
「つまりは、この騒動。両者を納得させるに、シルヴァンが特別監督官を担う特別入学試験を乗り越えることでお嬢さんが婚約者たるかをはかり。それと同時に、試験に受かることでこの先ルカを支えていくに価するのかも両方分かるというわけか」
面白い、実に面白い。
とカアン国王はすっかり満足したようで膝をついたままルカ王子の髪の毛をその大きく分厚い掌でぐしゃりと撫ぜた。
「やれば、できるじゃあないか」
「……!」
ルカ殿下は褒められたことで緊張の糸が切れたのかぼすんと大きい音を立ててカアン国王の首筋へと抱き着いた。
その動きにしばし目をぱちくりとさせていたカアン国王だったが、そのうちふっと笑ったかと思うとおずおずと優しく抱きしめ返し、そのままルカ殿下を腕に座らせ持ち上げた。
「――さて、ヴィシャス公爵夫妻よ。私はこの取り決めが一番良いように思う」
ギリギリと扇を持つ手を震わせながら口惜しいとばかりに憤怒の眼差しを向けるイレーナ。
「…………また、あなたのお芝居に巻き込まれたのかしら?」
そんなイレーナにも臆さず爽やかに笑みを流すカアン国王。
「いいや。この話、どちらにとっても不足はないはず。ただ単に、試験に合格さえすればよいのだ。――ヴィシャス公爵夫人の娘御ならば、問題なかろう?」
出来ないとは言わせない。
そのような含みのある言葉を、当然イレーナは拒否できるわけがなかった。
「…………よろしいでしょう」
イレーナは派手に扇を開き、ばさりと口元を隠して鋭い眼光を放ちながらこう宣告する。
「必ず、私の娘は魔法学園の特別入学試験に合格し、シルヴァン・オーギュスト宰相と婚約を結んでみせますわ!!!」
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