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第2話 永遠の初恋
⑤「ねえ、あたしに勉強を教えてくんない?」
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父親に会って東京から帰って以降、香織の中で何かが少しずつ変わり始めた。相変わらずジーンズのジャケットにロングスカートという伊出達は変わらなかったが、頭の中の意識や胸の中の思いが変わって行くのが自分でも解った。
ビリギャルだって猛勉強して東京の有名大学に受かったんだ、私にだって出来ない訳じゃ無い・・・
だが、二年近くの間、途中で居眠りするなどして授業さへ真面に聞いていなかった香織にいきなり受験勉強が出来る訳がなかった。
或る日、授業が終わると直ぐに、彼女は聡亮を何日かの市営公園へ誘い出した。
「ねえ、あたしに勉強を教えてくんない?」
「えっ?」
聡亮は学年全体で上位五本の指に入る秀才となり、国立大学を目指して受験勉強に明け暮れていた。
「何を言っているんだ?急に・・・」
「勉強するのよ、あたしも」
「どうしたんだ?また」
「勿論、大学へ入る為よ、あんたと同じように、さ」
「本気で言っているのか?・・・真実にマジか?」
「本気だったら、教えてくれるのか?」
聡亮はまじまじと香織の顔を凝視した。香織も聡亮に負けず劣らずの強い視線で彼を見返した。
「よし、分った。本気でやるんなら、俺で良けりゃ、出来る限りの協力はするよ」
「出来る限りじゃなく、とことん最大限、力を貸してよ、ねぇ!」
「中間テストや期末試験と違って、受験勉強は一夜漬けでは駄目だぞ、良いな!」
「うん、解かっている」
その日から聡亮との二人三脚による香織の猛勉強が始まった。
「良いか、先ずはとことん憶えることだ。何が何でも丸暗記するんだ」
「丸暗記?」
「そうだよ、其処からがスタートだ」
そして、聡亮は「俺の勉強が丸切り出来ないじゃないかよ」と文句を言いながらも、毎日、香織に発破をかけつつ丁寧に教えた。
高校二年の夏休み中のことだった。
真昼の暑い最中に聡亮が怖い貌をして香織の家にやって来た。
「これは、君が書いたのか?」
いきなり手渡されたのは封書に入った聡亮へのラブレターだった。差出人は香織になっていた。
最後にこう書かれていた。
「紅き花の咲き行く如く情熱を燃やした日々よ。去り行きし日の慕わしさ、あなたと共に在りせばこそ。二年一組のホープ、斎藤聡亮さん。いつまでも私を忘れないでね。そして、悲しい時、私を思い出して下さいね。受験なんかに負けずに闘って!やさしくまた逢う日はいつ、我知らず、せめて捧げん。さようなら!さようなら!別れ行く今宵よ、星はせめて耀け、あなたの御健康とご幸福を陰ながらお祈りします。木村香織」
読み乍ら香織は笑い出した。
「ハッハッハッハ、なかなかの名文じゃん?あんた、気持ち良いでしょう」
「ほんとうに君じゃないのか?」
「何であたしがこんなものをあんたに出さなきゃならないのさ。あたしなら自分の口ではっきり言うわよ。第一、今、あたしがあんたと別れなきゃならない理由なんて有ると思う?二人で受験勉強に必死で取り組んでいると言うのに・・・」
「じゃ、誰が、何の目的で、こんなものを?」
「きっと、あたしへの嫌がらせね、これは」
「と言うと?」
「あんたと仲睦まじく勉強していることを知った誰かが焼きもちを焼いたのよ、あたしに」
「まさか・・・」
「さもなきゃ、本当にあんたに恋をしている誰かがあたしの名を騙って胸の思いをぶっつけたんだわ」
「それならきちんと本名で堂々と言えば良いじゃないか!」
香織は面白がって揶揄い半分に笑いながら聡亮に言った。
「二学期が始まったら、誰がこんな悪戯をしたのか突き止めてあげるわ。それまでジタバタしないで無視しておけば良いのよ。あたしに任せなさい、ね」
聡亮は少し躊躇ったが、やがて頷いた。
「うん、解かった」
そして、漸く気持を落ち着けた聡亮は、改めて、香織をしげしげと見詰めた。彼女はジーンズのジャケットも羽織らずロングスカートも履いていなかった。洗い晒しのTシャツにジーパン姿だった。想像以上に胸の膨らみが大きく、腰の辺りにくびれも出来て、身体の線が綺麗だった。
聡亮の視線に気づいた香織が言った。
「何処見ているのよ、嫌らしい!あんたにもその気が在るのか?やっぱり男だもんね。どう?一発やってみる?・・・ハッハッハッハ」
聡亮はしどろもどろになって返事が出来なかった。
夏休みが明けると直ぐに、香織はロングスカートを翻して、一人で虱潰しに聞き込みを始めた。聡亮が冷やかし半分に皆から揶揄われるのを防ぐ為に誰の力も借りなかった。
十日後、香織は悪質な悪戯の犯人を特定して学校の近くに在る公園へ呼び出した。コーラス部の女生徒二人に男子生徒一人の三人だった。男子生徒は二人に相談されたことをすらすらと喋ったが、女生徒は二人とも頑なにしぶとく白を切った。
「可愛い顔して、良いスタイルして、なのに、頭は低能なのか、お前たちは!少しは恥を知りなよ!恥を!」
辛抱し切れなくなった香織は短い髪を振り乱して二人を袋叩きにした。自分でも訳の判らぬ凶暴さに駆り立てられていた。傍に居た聡亮が吃驚して途中で止めに入った程だった。男子生徒は聡亮に這いつくばって謝り、香織から強烈なパンチを一発喰らって、そそくさと逃げ去った。
ビリギャルだって猛勉強して東京の有名大学に受かったんだ、私にだって出来ない訳じゃ無い・・・
だが、二年近くの間、途中で居眠りするなどして授業さへ真面に聞いていなかった香織にいきなり受験勉強が出来る訳がなかった。
或る日、授業が終わると直ぐに、彼女は聡亮を何日かの市営公園へ誘い出した。
「ねえ、あたしに勉強を教えてくんない?」
「えっ?」
聡亮は学年全体で上位五本の指に入る秀才となり、国立大学を目指して受験勉強に明け暮れていた。
「何を言っているんだ?急に・・・」
「勉強するのよ、あたしも」
「どうしたんだ?また」
「勿論、大学へ入る為よ、あんたと同じように、さ」
「本気で言っているのか?・・・真実にマジか?」
「本気だったら、教えてくれるのか?」
聡亮はまじまじと香織の顔を凝視した。香織も聡亮に負けず劣らずの強い視線で彼を見返した。
「よし、分った。本気でやるんなら、俺で良けりゃ、出来る限りの協力はするよ」
「出来る限りじゃなく、とことん最大限、力を貸してよ、ねぇ!」
「中間テストや期末試験と違って、受験勉強は一夜漬けでは駄目だぞ、良いな!」
「うん、解かっている」
その日から聡亮との二人三脚による香織の猛勉強が始まった。
「良いか、先ずはとことん憶えることだ。何が何でも丸暗記するんだ」
「丸暗記?」
「そうだよ、其処からがスタートだ」
そして、聡亮は「俺の勉強が丸切り出来ないじゃないかよ」と文句を言いながらも、毎日、香織に発破をかけつつ丁寧に教えた。
高校二年の夏休み中のことだった。
真昼の暑い最中に聡亮が怖い貌をして香織の家にやって来た。
「これは、君が書いたのか?」
いきなり手渡されたのは封書に入った聡亮へのラブレターだった。差出人は香織になっていた。
最後にこう書かれていた。
「紅き花の咲き行く如く情熱を燃やした日々よ。去り行きし日の慕わしさ、あなたと共に在りせばこそ。二年一組のホープ、斎藤聡亮さん。いつまでも私を忘れないでね。そして、悲しい時、私を思い出して下さいね。受験なんかに負けずに闘って!やさしくまた逢う日はいつ、我知らず、せめて捧げん。さようなら!さようなら!別れ行く今宵よ、星はせめて耀け、あなたの御健康とご幸福を陰ながらお祈りします。木村香織」
読み乍ら香織は笑い出した。
「ハッハッハッハ、なかなかの名文じゃん?あんた、気持ち良いでしょう」
「ほんとうに君じゃないのか?」
「何であたしがこんなものをあんたに出さなきゃならないのさ。あたしなら自分の口ではっきり言うわよ。第一、今、あたしがあんたと別れなきゃならない理由なんて有ると思う?二人で受験勉強に必死で取り組んでいると言うのに・・・」
「じゃ、誰が、何の目的で、こんなものを?」
「きっと、あたしへの嫌がらせね、これは」
「と言うと?」
「あんたと仲睦まじく勉強していることを知った誰かが焼きもちを焼いたのよ、あたしに」
「まさか・・・」
「さもなきゃ、本当にあんたに恋をしている誰かがあたしの名を騙って胸の思いをぶっつけたんだわ」
「それならきちんと本名で堂々と言えば良いじゃないか!」
香織は面白がって揶揄い半分に笑いながら聡亮に言った。
「二学期が始まったら、誰がこんな悪戯をしたのか突き止めてあげるわ。それまでジタバタしないで無視しておけば良いのよ。あたしに任せなさい、ね」
聡亮は少し躊躇ったが、やがて頷いた。
「うん、解かった」
そして、漸く気持を落ち着けた聡亮は、改めて、香織をしげしげと見詰めた。彼女はジーンズのジャケットも羽織らずロングスカートも履いていなかった。洗い晒しのTシャツにジーパン姿だった。想像以上に胸の膨らみが大きく、腰の辺りにくびれも出来て、身体の線が綺麗だった。
聡亮の視線に気づいた香織が言った。
「何処見ているのよ、嫌らしい!あんたにもその気が在るのか?やっぱり男だもんね。どう?一発やってみる?・・・ハッハッハッハ」
聡亮はしどろもどろになって返事が出来なかった。
夏休みが明けると直ぐに、香織はロングスカートを翻して、一人で虱潰しに聞き込みを始めた。聡亮が冷やかし半分に皆から揶揄われるのを防ぐ為に誰の力も借りなかった。
十日後、香織は悪質な悪戯の犯人を特定して学校の近くに在る公園へ呼び出した。コーラス部の女生徒二人に男子生徒一人の三人だった。男子生徒は二人に相談されたことをすらすらと喋ったが、女生徒は二人とも頑なにしぶとく白を切った。
「可愛い顔して、良いスタイルして、なのに、頭は低能なのか、お前たちは!少しは恥を知りなよ!恥を!」
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