32 / 72
第六章 同級生遼子、ホステスから庭師へ転身
⑨喜んで下さるお客様の為に
しおりを挟む
ナンテンの生垣を作りロウバイを植え終わった遼子が寺の裏玄関へ報告に行くと、白い髭を伸ばした老師が現れた。仕上がった生垣と参道を見て老師は柔和な顔で言った。
「おお、なかなかの上出来じゃ。結構、結構」
遼子は「有難うございます」と頭を下げた。
「ところで、ものは相談じゃが、寺にある使い残しの材料を使って、薬師堂の周りに“お百度参り”をする為の道を造って貰えんじゃろうか?あまり高い金は払えんのじゃが」
寺にはこれまでの補修や改修に使った大小さまざまな古い平板が残っていた。遼子はその平板を組み合わせて作れば何とか出来るだろうと算段した。
「在り合わせの材料で感じ良く、というのがこの工事のモットーですね。解かりました」
翌日、遼子は、他の工事で使ってセメントが着いたまま残っていた平板の中から使えそうなものを選んで市松模様に仕上げることにした。市松模様は規格の平板で作る方がプランも立て易いし、使い易くもあるが、今回はエコに仕上げるよう頑張った。遼子が最も苦心したのは周りの構造物と繋げる為の勾配であったが、試行錯誤を繰り返して何とか上手く仕上げることが出来た。終始強風が吹いて作業は大変だったが、仕上がりは上々であった。
「後は生コンを打設すれば完成です。二、三日内の雨の降らない日に業者を寄越しますから、後はその仕上がり具合を見て下さい」
「ほおう、なかなか良さそうじゃな。有難う、有難う」
遼子は納得そうな老師の顔を見て何と無く嬉しい気持になった。
「なあ、植木屋さん」
えっ、植木屋さん?と遼子は思ったが、直ぐに「ハイ」と返事をして老師の顔に視線を戻した。
「うちの檀家に市の有形文化財に指定されている大きな庭の有る屋敷が在るのじゃが、そこの維持管理をやってみる気はないかね?」
「えっ、そんな立派なお庭の管理をやらせて頂けるのですか。是非お願い致します」
「そうか、では、一寸待っていなさい」
そう言って奥へ引っ込んだ老師は暫くして出て来ると、屋敷の住所や名前、電話番号を書いた小さな紙切れを遼子に手渡した。
「電話を入れておいたからな、明日にでも訪ねてみると良いよ」
「うわあ~、有難うございます」
遼子は何度も何度も礼を言い、丁寧に頭を下げて感謝の意を表した。
会社へ帰った遼子は後藤に翌日の同行を依頼した。
指示された屋敷は直ぐに判った。
正面の大きな冠木門に気圧されながらインターフォンを押すと、中から上品な声が返って来た。
「石垣に沿って左へ廻った所に勝手口がありますから、其方の方へ廻って下さい。今、開けますから」
勝手口と言っても普通の民家より余程大きな戸口だった。一歩足を踏み入れると玄関口までS字型の石畳が続き、石畳の南側には大きな桜の木が二本、枝を伸ばしている。桜は未だ蕾しかつけていなかった。
後藤が枝を見上げて言った。
「これが満開になるとさぞ綺麗だろうなあ」
桜の木の北側には大きな池があった。赤い鯉と黒い鯉が何匹も泳いでいる。池の水面には、風が吹く度に母屋や離れの家屋が揺らめいて映っていた。池の東側やその奥には高い塀に沿って潅木が林立していた。
こんな建物でこんな処に住めるなんて何て素敵なことだろう、と遼子は少し羨望を覚えた。
頼まれた仕事は市の有形文化財に指定されている庭の年間管理と夫人のガーデニングパートナーを務めることであった。夫人はこれまで庭をかなり造り込んで来られた様子で、ソヨゴやアオハダ等も植えられていた。
ぽかぽかと暖かい早春の一日だったので、今日の仕事は鉢植えの植物を地植えにし、季節の花の手入れをすることになった。
依頼された仕事が一通り終わった後、遼子がつくばいの掃除をしようと水を取り替えていると、それは水琴窟になっていた。
「うわあ、水琴窟なんですね」
「そうよ。水が落ちると綺麗な音がするでしょう」
水琴窟は地中に埋められた甕に水が落ちると、綺麗な音がする隠れた仕掛けである。遼子はその水琴窟に赤い花を浮かべて見た。とても彩が映えた。
「まあ、綺麗!」
今度は夫人が感嘆の声をあげた。
帰途の車の中で後藤が言った。
「大したもんだな。うちの職人達じゃあれだけの応対はとても出来ないよ」
遼子は運転台で軽く微笑を返した。
遼子は時間の許す限り庭を見て廻った。公園や大庭園よりも先ずは民家やお寺の庭を見ることを主眼にした。技術や知識も勿論大事であるが、それ以上にセンスが重要だと考えて、色んな場所に出向き、見たり触ったりしてセンスを磨こうと努めた。
そして、会社案内のパンフレットと後藤が作ってくれた「有限会社後藤造園 庭師 小泉遼子」の名刺を持って営業にも廻った。夜の勤めで接客には慣れていたので初対面の人への気後れも無かったし、客あしらいは丁寧で明るく嫌味が無かった。
真言宗の寺の入口に出来たナンテンの生垣が見応えのある素晴しいものだ、という評判が口コミで広がって、次第に新しいお客からの注文が入るようになって行った。
そんな新規のお客から、シラカシの剪定とスギ五本の伐採の仕事を貰った。
遼子は伐採の時には切り株を隠すことにしていた。切り株が見える状態で伐採すると見た目が悪いので、周りの砂利を掻き出し、地面すれすれで伐採した。チェーンソーの刃は土や砂利を咬むと直ぐに駄目になるので細心の注意を払って作業を行った。最後に砂利で隠すと切り株が見えなくて綺麗に仕上がった。これがお客に大変喜ばれ、玄関先に在る大きなメタセコイアの手入れをする見積りも頼まれた。大掛かりな仕事になりそう、頑張らなくっちゃ・・・と遼子は思った。
この仕事を終えた後、遼子は庭造りの現場調査と打合せの為に、もう一件の新規先へと急いだ。施主とは初対面であったが、事前に何度もメールでやり取りし、庭の写真も添付受信していたし、それに対する簡単な図面も送信してあったので、話は早く進むだろうと考えていた。が、予期に反して、四時間近くもかかってしまった。何しろ既存物撤去から始まって、花壇を作って家庭菜園の畑を作る、園路を作って化粧砂利を敷きラティスパネルを設置する、それに植栽もするという盛り沢山の内容だったのである。
雨が降って外の仕事が出来なくなった日の午前中、遼子は時間を貰って病院へ行った。
一月ほど前から右手中指の第二関節が腫れて痛かったのを治療する為である。診察の結果は、指先に刺さったままのバラの棘から菌が入って炎症を起していた。棘は一ミリくらいの小さなものだった。
「こんな小さな棘なのに炎症を起してしまうのですか?先生」
「そうだよ。ちゃんと薬を飲まないと半年くらい炎症が残りますよ」
医師は怖いことを言って、一週間分の抗生物質を処方してくれた。
一ミリの棘で、遼子の見習い日給の半額ほどが消えて行った。
会社へ帰った遼子は、山のように溜まっているデスクワークを精力的に処理している後藤に手を貸した。
このところ遼子は次第に仕事が忙しくなって来ているが、苦痛に感じることは無い。体力的には慣れない作業の連続で、疲れて苦しい時もありはするが、喜んで下さるお客様の為に一庭ごとに心を込めて造りたいという気持が勝って、仕事が楽しいという思いが強まっている。これまで経験したことの無い初めての感覚だった。風邪など引いていられないわと、薬を飲み、温かくして栄養のあるものを食べ、よく眠るように心がけている。
「おお、なかなかの上出来じゃ。結構、結構」
遼子は「有難うございます」と頭を下げた。
「ところで、ものは相談じゃが、寺にある使い残しの材料を使って、薬師堂の周りに“お百度参り”をする為の道を造って貰えんじゃろうか?あまり高い金は払えんのじゃが」
寺にはこれまでの補修や改修に使った大小さまざまな古い平板が残っていた。遼子はその平板を組み合わせて作れば何とか出来るだろうと算段した。
「在り合わせの材料で感じ良く、というのがこの工事のモットーですね。解かりました」
翌日、遼子は、他の工事で使ってセメントが着いたまま残っていた平板の中から使えそうなものを選んで市松模様に仕上げることにした。市松模様は規格の平板で作る方がプランも立て易いし、使い易くもあるが、今回はエコに仕上げるよう頑張った。遼子が最も苦心したのは周りの構造物と繋げる為の勾配であったが、試行錯誤を繰り返して何とか上手く仕上げることが出来た。終始強風が吹いて作業は大変だったが、仕上がりは上々であった。
「後は生コンを打設すれば完成です。二、三日内の雨の降らない日に業者を寄越しますから、後はその仕上がり具合を見て下さい」
「ほおう、なかなか良さそうじゃな。有難う、有難う」
遼子は納得そうな老師の顔を見て何と無く嬉しい気持になった。
「なあ、植木屋さん」
えっ、植木屋さん?と遼子は思ったが、直ぐに「ハイ」と返事をして老師の顔に視線を戻した。
「うちの檀家に市の有形文化財に指定されている大きな庭の有る屋敷が在るのじゃが、そこの維持管理をやってみる気はないかね?」
「えっ、そんな立派なお庭の管理をやらせて頂けるのですか。是非お願い致します」
「そうか、では、一寸待っていなさい」
そう言って奥へ引っ込んだ老師は暫くして出て来ると、屋敷の住所や名前、電話番号を書いた小さな紙切れを遼子に手渡した。
「電話を入れておいたからな、明日にでも訪ねてみると良いよ」
「うわあ~、有難うございます」
遼子は何度も何度も礼を言い、丁寧に頭を下げて感謝の意を表した。
会社へ帰った遼子は後藤に翌日の同行を依頼した。
指示された屋敷は直ぐに判った。
正面の大きな冠木門に気圧されながらインターフォンを押すと、中から上品な声が返って来た。
「石垣に沿って左へ廻った所に勝手口がありますから、其方の方へ廻って下さい。今、開けますから」
勝手口と言っても普通の民家より余程大きな戸口だった。一歩足を踏み入れると玄関口までS字型の石畳が続き、石畳の南側には大きな桜の木が二本、枝を伸ばしている。桜は未だ蕾しかつけていなかった。
後藤が枝を見上げて言った。
「これが満開になるとさぞ綺麗だろうなあ」
桜の木の北側には大きな池があった。赤い鯉と黒い鯉が何匹も泳いでいる。池の水面には、風が吹く度に母屋や離れの家屋が揺らめいて映っていた。池の東側やその奥には高い塀に沿って潅木が林立していた。
こんな建物でこんな処に住めるなんて何て素敵なことだろう、と遼子は少し羨望を覚えた。
頼まれた仕事は市の有形文化財に指定されている庭の年間管理と夫人のガーデニングパートナーを務めることであった。夫人はこれまで庭をかなり造り込んで来られた様子で、ソヨゴやアオハダ等も植えられていた。
ぽかぽかと暖かい早春の一日だったので、今日の仕事は鉢植えの植物を地植えにし、季節の花の手入れをすることになった。
依頼された仕事が一通り終わった後、遼子がつくばいの掃除をしようと水を取り替えていると、それは水琴窟になっていた。
「うわあ、水琴窟なんですね」
「そうよ。水が落ちると綺麗な音がするでしょう」
水琴窟は地中に埋められた甕に水が落ちると、綺麗な音がする隠れた仕掛けである。遼子はその水琴窟に赤い花を浮かべて見た。とても彩が映えた。
「まあ、綺麗!」
今度は夫人が感嘆の声をあげた。
帰途の車の中で後藤が言った。
「大したもんだな。うちの職人達じゃあれだけの応対はとても出来ないよ」
遼子は運転台で軽く微笑を返した。
遼子は時間の許す限り庭を見て廻った。公園や大庭園よりも先ずは民家やお寺の庭を見ることを主眼にした。技術や知識も勿論大事であるが、それ以上にセンスが重要だと考えて、色んな場所に出向き、見たり触ったりしてセンスを磨こうと努めた。
そして、会社案内のパンフレットと後藤が作ってくれた「有限会社後藤造園 庭師 小泉遼子」の名刺を持って営業にも廻った。夜の勤めで接客には慣れていたので初対面の人への気後れも無かったし、客あしらいは丁寧で明るく嫌味が無かった。
真言宗の寺の入口に出来たナンテンの生垣が見応えのある素晴しいものだ、という評判が口コミで広がって、次第に新しいお客からの注文が入るようになって行った。
そんな新規のお客から、シラカシの剪定とスギ五本の伐採の仕事を貰った。
遼子は伐採の時には切り株を隠すことにしていた。切り株が見える状態で伐採すると見た目が悪いので、周りの砂利を掻き出し、地面すれすれで伐採した。チェーンソーの刃は土や砂利を咬むと直ぐに駄目になるので細心の注意を払って作業を行った。最後に砂利で隠すと切り株が見えなくて綺麗に仕上がった。これがお客に大変喜ばれ、玄関先に在る大きなメタセコイアの手入れをする見積りも頼まれた。大掛かりな仕事になりそう、頑張らなくっちゃ・・・と遼子は思った。
この仕事を終えた後、遼子は庭造りの現場調査と打合せの為に、もう一件の新規先へと急いだ。施主とは初対面であったが、事前に何度もメールでやり取りし、庭の写真も添付受信していたし、それに対する簡単な図面も送信してあったので、話は早く進むだろうと考えていた。が、予期に反して、四時間近くもかかってしまった。何しろ既存物撤去から始まって、花壇を作って家庭菜園の畑を作る、園路を作って化粧砂利を敷きラティスパネルを設置する、それに植栽もするという盛り沢山の内容だったのである。
雨が降って外の仕事が出来なくなった日の午前中、遼子は時間を貰って病院へ行った。
一月ほど前から右手中指の第二関節が腫れて痛かったのを治療する為である。診察の結果は、指先に刺さったままのバラの棘から菌が入って炎症を起していた。棘は一ミリくらいの小さなものだった。
「こんな小さな棘なのに炎症を起してしまうのですか?先生」
「そうだよ。ちゃんと薬を飲まないと半年くらい炎症が残りますよ」
医師は怖いことを言って、一週間分の抗生物質を処方してくれた。
一ミリの棘で、遼子の見習い日給の半額ほどが消えて行った。
会社へ帰った遼子は、山のように溜まっているデスクワークを精力的に処理している後藤に手を貸した。
このところ遼子は次第に仕事が忙しくなって来ているが、苦痛に感じることは無い。体力的には慣れない作業の連続で、疲れて苦しい時もありはするが、喜んで下さるお客様の為に一庭ごとに心を込めて造りたいという気持が勝って、仕事が楽しいという思いが強まっている。これまで経験したことの無い初めての感覚だった。風邪など引いていられないわと、薬を飲み、温かくして栄養のあるものを食べ、よく眠るように心がけている。
6
あなたにおすすめの小説
まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!
小林汐希
ライト文芸
2年5組の生徒:松本花菜(17歳 高校2年生)
2年5組の担任:長谷川啓太(23歳 教師歴1年目)
幼い頃から、様々な悩みを抱えながら過ごしてきた花菜。
それは幼い頃に父との離別を経験した家庭環境だったり、小学校の最後に作ってしまった体の古傷であったり。
学校外の時間を一人で過ごすことになった彼女の唯一、かつ絶対的な味方でいてくれたのが、近所に住む啓太お兄ちゃんだった。
しかし年の離れた二人の関係では仕方ないとはいえ、啓太の大学進学や環境変化とともに、その時間は終わりを迎えてしまう。
ふさぎ込む花菜を前に、啓太は最後に「必ず迎えに来る」という言葉を残して街を離れた。
言葉を受け取った花菜は、自分を泣かせないための慰めだったという諦めも入りつつ、一方で微かな希望として心の中で温め続けていた。
数年の時を経て二人が再び顔を合わせたものの、もはや運命の意地悪とでもいうべき「担任教師と生徒」という関係。
最初は様子伺いだったけれど、往時の気持ちが変わっていないことを再確認してからは、「一人じゃない」と嬉しいこと・辛いことも乗り越えていく二人には少しずつ背中を押してくれる味方も増えていく。
再会した当初は「おとなしい終末的運命キャラ」になっていた花菜も次第に自信を取り戻し、新米教師の啓太も花菜のサポートを裏で受けつつ堂々と教壇に立ち続けた。
そんな互いを支えあった二人の前に開けた世界は……。
たった一つだけの約束を胸に、嬉しいときは一緒に喜び、悲しいときは支えあって走り抜けた二人の物語です。
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う
もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。
将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。
サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。
そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。
サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。
偽夫婦お家騒動始末記
紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】
故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。
紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。
隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。
江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。
そして、拾った陰間、紫音の正体は。
活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる