愛の裏切り

相良武有

文字の大きさ
85 / 99
第二話 魅せられて

②聡介、ゴルフ場で息を飲む美女と出逢う

しおりを挟む
 それは聡介が二十五歳の夏のことだった。
聡介は「今どきの珍しい成功者」を口癖にする大企業の社長から、毎週末を軽井沢のゴルフクラブで過ごすことが出来るゲストカードを贈られた。そこで、彼は、或る土曜日にクラブの受付でサインして、当の社長の他に投資先の社長二人を加えた四人で午後からゴルフを始めた。
 その日は、日頃から聡介が良く抱く束の間の印象が幾つも交錯しながら去来する奇妙な一日となった。
当の社長が十五番ホールのグリーン近くで見失ったボールが元で、ちょっとした出来事が起きた。四人がびっしり生い茂ったラフの草叢の中を探していると、突然、後ろの丘の向こうから危険球を知らせる「フォア―!」と言う大きな声が聞こえて来た。四人が頭を挙げて振り返った瞬間、いきなり、真新しいボールがスライスしながら飛んで来て、社長の肩を掠めて過ぎた。
「危ないじゃないか!」
社長が怒声を上げた。
と、声と同時に頭が一つ、丘の向こうから現れた。
「此方を先にやらせて頂けないかしら?」
「君のボールが儂の肩を掠めたんだぞ!」
色を成して社長が言った。
「あら、本当?」
娘が四人の一団に近づいて来た。
「ご免さない!あたし、フォア―って叫んだ筈よ」
彼女は男たち一人一人をさり気なく見遣ってから、フェアウエイに視線を落としてボールの所在を入念に捜し始めた。
「ラフに飛び込んじゃったのかな?」
間も無く、彼女のパートナーが現れてボールは見つかった。
「此処に在るわよ」
「あら、そう。ちゃんとグリーンに乗る筈だったのに、おかしなものにぶつけちゃった」
 彼女が五番アイアンを使って短いショットを打つ為にスタンスを構えた時、聡介はその姿をまじまじと眺めやった。襟首と肩に白い縁が付いている青いシャツが、日焼けした肌の小麦色を一際鮮やかに引き立てていた。情熱的な眼の色や口をきゅっとへの字に結ぶ貌は息を呑むほどに美しかった。頬の紅味が絵画の色調のように全体の感じの基調を成して居て、眼は甘美な悲哀の色を湛えているのに、全体的には激しい生命、燃焼する活力と言う感じであった。情熱の炎とも言えるような輝きの中に、大勢の男に果てしない苦悩を味わわせる悪魔的なものが宿っていた。
彼女が苛立たしそうな様子で無造作に五番アイアンを振ると、ボールはグリーンを越えて向う側のバンカーに入ってしまった。彼女は素早く形ばかりの微笑を浮かべ、お座なりに「どうも」と言い残して、ボールの後を追って行った。
聡介たちはそれからも、次のティーで先を行く彼女がセカンド・ショットを打つまでの間、ちょっと待たされた。
「それにしても美人だ!」
別の社長が言った。
「美人だと?」
当の社長が吐き捨てるように断じた。
「四六時中抱いて貰いたい、というような貌をしているじゃないか」
もう一人の社長が言った。
「彼女、その気になればゴルフもかなり良い線を行くんじゃないかね」 
「フォームがなっとらん!」
別の社長が聡介にウインクしながらこの話を締め括った。
「スタイルが抜群だったな!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...