【天才アスリート少女】普通男子と天才少女の物語【普通男子の武道家】

里見 亮和

文字の大きさ
24 / 64

俺のための記者会見

しおりを挟む
 記者の質問に対して未惟奈は一瞬迷った様子を見せ、不自然に沈黙してしまった。

 こんな未惟奈の動揺を“勘の鋭い”記者たちが見逃さなかった。

「半年前に天才高校生の有栖天牙を瞬殺している未惟奈さんが、普通の高校生に負けるなんてことはないだろうと勝手に想像していましたが。あの噂、まさか事実なんですか?」

 未惟奈は少しだけ視線をエドワード・ウィリスに向けると、彼は未惟奈の視線に気づき、“アイコンタクト”をしながら頷いた。

 すると未惟奈は視線を正面に戻し、意を決したように話し始めた。

「ええ、私は今通っている北辰高校の部活説明会で、ある男子高校生に一瞬で“倒された”経験があります」

 未惟奈がそこまで言うと、また記者たちからどよめきが起きた。

「私はきっと慢心していたのだと思います。だから彼に会って、自分はまだまだだと思い知らされました。もっと空手を学ぶ必要があると思ったんです」

 未惟奈の想像以上のぶっちゃけぶりに、俺は焦りを通り越して呆れ返ってしまった。

 確かに俺の名前こそ言ってはいないが、これでは全部ぶちまけてしまったようなものだ。

 この流れでいったら、記者たちが当然“誰に倒されたのか”ということに興味を持つに決まっている。

「それは、未惟奈さんのいる北辰高校に、それだけの実力者がいるということですか?」

「誰なんですか?」

「有栖天牙より強いってことですか?」

「過去の実績はどれくらいあるんですか?」

 興奮した記者から矢継ぎ早に怒涛の質問が未惟奈に向けられ、会見場は騒然となってしまった。

 未惟奈はさすがにどう応えていいか当惑している様子で、それが意地の悪いマスコミたちをさらに調子に乗せてしまっていた。

 その時である。

 ウィリス父が、突如大声で未惟奈と記者のやりとりに介入してきた。

「お静かに願います。今日は未惟奈の会見です。その男子高校生は一般人ですよ? 個人情報をここでお話しできるはずがないでしょう?」

 もう恫喝と言ってよいほどに怒気を含んだエドワード・ウィリスの声に、記者たちは一瞬で凍りついてしまった。

「その高校生の男性に関する取材は、是非とも固く控えていただけるようにお願いします。もし彼に迷惑が掛かるようなことがあれば、そのメディアとの付き合いは考えさせてもらいます」

 完全に脅しだ。

 さすがに興味本位で未惟奈に食いついていた記者たちは、たちどころにシンと静まり返った。

 その様子を見ていた美影が、意外なことを言った。

「どうやらこの会見は、君のために企画されていたようだな」

「え? どういうこと?」

「ウィリス君がわざわざ空手を続ける理由に、君の存在を匂わせたのは、きっと父親に今のセリフを言わせるためだろう。エドワード氏は、あらかじめ準備されていたセリフを言ったように見えたが」

 相変わらず妙に鋭い美影は、こともなげに言う。

「そんなバカな……」

「おそらくマスコミの矛先が君にいかないよう、釘を刺すのがこの会見の目的だったんじゃないか? もしかすると、すでに君の存在に気づいて近づこうとしていたメディアがあったのかもしれないな。だから動かれる前に先手を打った」

「ま、まさか……未惟奈が、なんでそんな気を回して俺を庇う必要があるんだ?」

「さあ、それは知らんが、彼女は世間から一挙手一投足を注目されている存在だ。そんな彼女に巻き込まれて、君に迷惑が掛かるのを嫌ったんじゃないか」

 確かに美影の言うことは、いちいち辻褄が合っている。

 ――記者会見は、美影の想像を裏付けるように、ウィリス父が恫喝した直後にすぐお開きとなってしまった。

 これは見方によっては、言いたいことだけを一方的に言い切った会見とも取れる。

 だからそれ以上の質問は一切受け付けないという、マスコミ側から見ればまったくメリットのない、印象の悪い会見だったように思われた。

 記者たちは納得した様子ではなかったが、未惟奈とウィリス父はそそくさと会見場を後にしてしまった。

 考えてみれば、色々と不思議なことがある。

 部活説明会での未惟奈の対戦を動画で録画していた人間は、大勢いたはずなのだ。

 それなのに結局、SNSでもこのネタがバズることはなかった。

 春崎さんと俺が初めて会った時、彼女は俺の情報がリークすることを懸念していた。

 だが冗談交じりに、エドワード・ウィリスがマスコミに圧力をかけて抑え込めるようなことを言っていたのを思い出す。

 それが案外、事実だったりするのだろうか。

 俺は未惟奈の会見が終わって、しばらく経ってから彼女に連絡を入れた。

「あ、翔……連絡遅くない?」

「いやいや、気を使って時間置いて電話してんだけど?」

「なんだ、ずっと待ってたのに」

「だったらそっちからしろよ? ってか、なんで俺が連絡する前提なんだよ?」

「だって、あの会見見たら絶対、怒って連絡してくると思ったもの」

「別に怒りはしないよ」

「怒らないの?」

「だって今日の会見は、俺を庇う意味が強かったんだろ?」

「え? なんで分かったの?」

やっぱりそうなのか。

俺のための会見……

「いや、美影がそうなんじゃないかって」

「ああ、なるほどね。彼か。翔がそこまでは気づかないと思ってた」

「鈍いって言うな」

「言ってないし。ってか被害妄想やめてよね?」

 いや、絶対言おうとしてただろ!

全く──

「でも、実は翔のことを執拗に嗅ぎ回ろうとしている人間がいるって情報が、昨日入ってね」

「俺のことを嗅ぎ回る? それはやっぱりマスコミなのか?」

「いや、マスコミならまだ抑えられたんだけど……どうもそうじゃないらしいんだ」

「マスコミじゃない? 誰なんだ? 俺のことを嗅ぎ回るとか」

「有栖天牙と、その関係者よ」

「な、なんだって!?」

「どうも有栖天牙が、私を倒した相手との対戦を強く望んでいるらしいの」

「はあ? なんだそれ!?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...