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共通のバックボーン
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「フフフ、少し話を戻しましょうか」
春崎さんは、俺のバックボーンの話をまとめて説明してくれた。
重要なポイント。
まず、祖父・鵜飼貞夫は、フルコンタクト空手に中国武術である『大気拳』を取り入れていた。
これは、俺が毎日欠かさず基礎鍛錬としてやっている「立禅」と「這い」という動禅のことを指す。
閉ざされた道場の外では、誰もがその価値を知らない地味な動きだ。
そして、祖父が取り入れた『大気拳』は、澤井健一という日本人が創始した武術だった。
澤井健一の名は空手界でも有名で、既に伝説化している。
もちろん俺も知っている。
「じゃあ、翔くん……『大成拳』は知ってる?」
「ああ、前に春崎さんが教えてくれましたよね? じいさんから俺が教わってる大気拳の基になった中国武術でしょ?」
「そうね」
大気拳に大成拳……どちらも似たような名前で、何がどう違うかなんて想像もつかない。
でも、そこに答えがあるらしいのでなんとか話についていくしかない。
「翔くん? いい、ここからが重要よ?」
「はい」
春崎さんはかなりのハイテンションになっており、一呼吸置いて……続けた。
「この大気拳の源流である『大成拳』の創始者が『王向斉(おうこうさい)』なの!」
春崎さんは得意げに言ったが、少なくとも俺は「ぽかん」と口を開けるしかない。
だって知らないだろ? 王向斉?
「……ふーん。その王様だか何だか知らない人の技が、翔のおじいさんにまで繋がってるってわけ?」
未惟奈も何も知らないはずだが、分かりやすく咀嚼してくれた。
美影は「したり顔」でうんうんと頷いている。
やっぱりお前は王向斉も知ってるんだな……。
「つまり、鵜飼貞夫に大気拳を教えた澤井健一の師匠が王向斉ってことよ」
春崎さんはそう説明してくれた。
「はあ、そうなんですね」
俺はそう答えたものの、武術家の名前なんかに何の感慨もない。
簡単に言えば、祖父・鵜飼貞夫は王向斉の孫弟子ということか。
「あれ? そこは驚くところよ? 翔くんは伝説の武術家の系譜にいるということなんだから」
「いや、知りませんよ。それに俺が大気拳をやる理由は空手の技術そのものではなく補助訓練ですから」
「まあ、確かにそれはそうなんだけど。じゃあ、翔くん? 今度は芹沢薫子と伊波紗弥子の対戦を思い出して」
「ええと、あの一撃のことですよね? 確か形意拳の崩拳とかいう……」
「そうね。そして薫子が話してくれた『半歩崩拳、あまねく天下を打つ』という郭雲深という武術家の逸話」
「ええ、そんな話ありましたね」
春崎さんが続けた。
「その『半歩崩拳、あまねく天下を打つ』の郭雲深の高弟子が、その王向斉なのよ」
「よくわからないけど、その形意拳から大成拳が生まれて、その大成拳から大気拳が生まれて、その大気拳が俺に伝わってると……」
「要するに、その『天下を打つ』っていう技を、さっき見た試合で使ったってことでしょ」
未惟奈が、挑発的に芹沢の方を顎でしゃくった。
「神沼くん? 私に武術を仕込んだ祖母・李永秋は、王向斉の最晩年の弟子。だから私のバックボーンは純粋な形意拳というよりは、王向斉の大成拳」
「ってことはじいさんの師でもある澤井健一と芹沢先生の祖母は同門ってこと?」
「そういうことなのよ、神沼くん……だから私は、あなたと同じ構えをしたってこと」
芹沢は鋭い視線をそらさず、そう言い切った。
なるほど。
これが先日、芹沢が俺と同じ構えをした理由か。
「それにしても……だとすると芹沢先生は歴史に名が残るほどの武術家の直系ってことなんですね? 強いわけですね」
「まあ、そういった意味では、翔くんもそれに近しいんだけどね」
春崎さんが補足した。
色々芹沢の謎が解けていく。
俺と芹沢薫子のバックボーンが同じということ。
違いは芹沢は大成拳直系。
俺の場合は、日本人の澤井健一からじいさんに受け継がれ、さらにそれを俺が学んだという意味で直系ではないし、おそらくは空手に取り込むという技術体系になっているはずだ。
それでも、俺の空手を武道たらしめている技術の根幹が、中国武術である可能性はあるのかもしれない。
春崎さんは、俺のバックボーンの話をまとめて説明してくれた。
重要なポイント。
まず、祖父・鵜飼貞夫は、フルコンタクト空手に中国武術である『大気拳』を取り入れていた。
これは、俺が毎日欠かさず基礎鍛錬としてやっている「立禅」と「這い」という動禅のことを指す。
閉ざされた道場の外では、誰もがその価値を知らない地味な動きだ。
そして、祖父が取り入れた『大気拳』は、澤井健一という日本人が創始した武術だった。
澤井健一の名は空手界でも有名で、既に伝説化している。
もちろん俺も知っている。
「じゃあ、翔くん……『大成拳』は知ってる?」
「ああ、前に春崎さんが教えてくれましたよね? じいさんから俺が教わってる大気拳の基になった中国武術でしょ?」
「そうね」
大気拳に大成拳……どちらも似たような名前で、何がどう違うかなんて想像もつかない。
でも、そこに答えがあるらしいのでなんとか話についていくしかない。
「翔くん? いい、ここからが重要よ?」
「はい」
春崎さんはかなりのハイテンションになっており、一呼吸置いて……続けた。
「この大気拳の源流である『大成拳』の創始者が『王向斉(おうこうさい)』なの!」
春崎さんは得意げに言ったが、少なくとも俺は「ぽかん」と口を開けるしかない。
だって知らないだろ? 王向斉?
「……ふーん。その王様だか何だか知らない人の技が、翔のおじいさんにまで繋がってるってわけ?」
未惟奈も何も知らないはずだが、分かりやすく咀嚼してくれた。
美影は「したり顔」でうんうんと頷いている。
やっぱりお前は王向斉も知ってるんだな……。
「つまり、鵜飼貞夫に大気拳を教えた澤井健一の師匠が王向斉ってことよ」
春崎さんはそう説明してくれた。
「はあ、そうなんですね」
俺はそう答えたものの、武術家の名前なんかに何の感慨もない。
簡単に言えば、祖父・鵜飼貞夫は王向斉の孫弟子ということか。
「あれ? そこは驚くところよ? 翔くんは伝説の武術家の系譜にいるということなんだから」
「いや、知りませんよ。それに俺が大気拳をやる理由は空手の技術そのものではなく補助訓練ですから」
「まあ、確かにそれはそうなんだけど。じゃあ、翔くん? 今度は芹沢薫子と伊波紗弥子の対戦を思い出して」
「ええと、あの一撃のことですよね? 確か形意拳の崩拳とかいう……」
「そうね。そして薫子が話してくれた『半歩崩拳、あまねく天下を打つ』という郭雲深という武術家の逸話」
「ええ、そんな話ありましたね」
春崎さんが続けた。
「その『半歩崩拳、あまねく天下を打つ』の郭雲深の高弟子が、その王向斉なのよ」
「よくわからないけど、その形意拳から大成拳が生まれて、その大成拳から大気拳が生まれて、その大気拳が俺に伝わってると……」
「要するに、その『天下を打つ』っていう技を、さっき見た試合で使ったってことでしょ」
未惟奈が、挑発的に芹沢の方を顎でしゃくった。
「神沼くん? 私に武術を仕込んだ祖母・李永秋は、王向斉の最晩年の弟子。だから私のバックボーンは純粋な形意拳というよりは、王向斉の大成拳」
「ってことはじいさんの師でもある澤井健一と芹沢先生の祖母は同門ってこと?」
「そういうことなのよ、神沼くん……だから私は、あなたと同じ構えをしたってこと」
芹沢は鋭い視線をそらさず、そう言い切った。
なるほど。
これが先日、芹沢が俺と同じ構えをした理由か。
「それにしても……だとすると芹沢先生は歴史に名が残るほどの武術家の直系ってことなんですね? 強いわけですね」
「まあ、そういった意味では、翔くんもそれに近しいんだけどね」
春崎さんが補足した。
色々芹沢の謎が解けていく。
俺と芹沢薫子のバックボーンが同じということ。
違いは芹沢は大成拳直系。
俺の場合は、日本人の澤井健一からじいさんに受け継がれ、さらにそれを俺が学んだという意味で直系ではないし、おそらくは空手に取り込むという技術体系になっているはずだ。
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