【純愛百合】檸檬色に染まる泉【純愛GL】

里見 亮和

文字の大きさ
14 / 78

異常事態……

しおりを挟む
 私は帰宅すると、自分の部屋へ直行して着替えをする。

 それから一日中ほとんど見ることもないスマホをバッグから取り出して、机の充電器に挿す。

 しかし、この充電を忘れてしまうこともよくあって、次の日までバッグに入れっぱなしだった、なんてこともよくあったりする。

 つまり、スマホへの関心なんて今まではほとんどなかったと言う事だ。

 当然、スマホは次の朝まで決して触れる事もないので、部屋から持ち出すことはしない。

 正直、スマホ依存の人たちの感覚がイマイチよく理解できなかった。

 ただ美香に言わせると私の方がよほど理解に苦しむらしく、よくバカにされていた。

 そもそも私のスマホのメモリに登録されている人数が極端に少ない。

 悲しい事に、これはイコール友だちが少ないってことなのだが。

 そんな訳だからスマホが手元になくても不安になる事なんか全く無かった。

 それなのに。

 今ではスマホを片時も離さなくなった。

 今更になって“今どきの女子高生”の気持ちがよくよく分かってしまった。

 理由はもちろん維澄さん。

 彼女からの連絡があるかもしれないと思うと、とてもじゃないがスマホを手放すことなんかできない。

 この小さな機械の向こう側に維澄さんが繋がっていると想像するだけで、まるでそのスマホが維澄さんであるかのように愛おしく思えてくるから不思議だ。

 まあ、そんな想像したところで、維澄さんから個人的な連絡がくるはずもないのだが。

 そんな毎日を過ごしていた時に、事件は起こった。

 その日、いきなり維澄さんから着信があったのだ。

 着信があった時は、悲しいかな維澄さんからだという想像すらできず“誰だ?”と訝しんでしまった。

 だから、スマホの画面に“維澄さん”と表示されているのを見た時は、驚きのあまり大声を上げてしまった。

 私はあわてながら通話ボタンを押した。

「檸檬です……い、維澄さんですか?」

 私は興奮気味に尋ねると……

「ご、ごめんなさい急に……」

 そう話す維澄さんの声が聞こえたが、私はその声を聞いた途端、一気に緊張した。

 維澄さんは声のトーンを落とし、聞き取れないほどに小さな声を出したのだ。

 しかも明らかに声が上ずっている。

 そもそも維澄さんがいきなり連絡してきたこと自体が普通ではない。

「ど、どうしたんですか?」

「なんか……つけられてるみたいで」

 それを聞いた私はあまりの緊張に内臓がぐるりと鈍く動かされたような焦燥感を感じた。

 つけられてる?

 ま、まさかストーカー?

 とっさに前に絡んできた男性の顔が思い出された。

 いや、別の男の可能性だってある。

 だってあの維澄さんだ。

 私ですらストーキングされた経験があるのだから……

「い、今……ど、どこですか?」

 動揺しすぎて声が上ずってしまった。

「まだ自宅から結構距離あるんだけど、動けなくて……」

「自宅にはいかないで!自宅を突き止められたらやっかいだから。すぐに人通りの多いところに移動してください」

 私は思ったことを早口に言った。

「維澄さん、近くに目印ありますか?」

「稲橋公園の裏あたりなんだけど」

 稲橋公園の裏?く、暗いじゃないか?なんだってあんな場所に!!

 私はいてもたってもいられず、部屋を飛び出した。

「翔!!」

 女子高生の私一人ではどうにも不安だ。

 その点、空手有段者の翔がいれば安心だ。

「なに?そんなに慌てて」

 翔も私の動揺ぶりを目ざとく察知して、眼に緊張感が宿った。

「ちょっと付き合って。アルバイト先の女性が、男につけられてるっぽい」

「え?マジで?警察呼んだの?」

「まだだけど、そんな暇なさそう。稲橋公園だから直ぐ自転車で駆け付けたい」

「分かった。二人乗りじゃあスピード出ないから……別々に行こう!」

 そういって二人で稲橋公園を目指した。

 その後、維澄さんに何度連絡しても通話に出なくなってしまった。

 いやな想像ばかりが後から後から湧きあがってくる。

 私は不安で押しつぶされそうになった。

 私の家から稲橋公園までは自転車で飛ばしても15分程度はかかる。

 盛岡の中心部に向かう大通りを、足がちぎれるくらいに全力でペダルを漕いで飛ばした。

 大通りとは言え、まだ開通してそれほど年数の経っていないこの道路沿いは、空き地しかない。

 維澄さんから連絡があったのは、その大通りから一本路地を曲がったところにある公園。

 人通りは少なく、この時間に女性一人で歩くなんてとんでもない。

 私と翔は、公園の周りを一周したが、ついに維澄さんの姿は見当たらなかった。

 私は激しい焦燥感で吐き気が催してくるのをなんとか耐えた。

 歩きならそんなに遠くには行けないはずだ。

 でも、考えたくないが車で拉致されるような事があれば、もうどうにもならない。

 私は、電話で咄嗟にひとけのある方に行くことを指示したので、今いる公園から人通りのある通りまで自転車を飛ばした。

 すると大通りに出る手前に一軒だけコンビニがあるのが目に付いた。

 もしや?と思い、私はコンビニの駐車場に自転車を乗り入れて、慌てて店内をのぞきこんだ。

 すると……

 い、……いた。

 私はホッとして崩れ落ちそうになった
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

身体だけの関係です‐原田巴について‐

みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子) 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。 毎日19時ごろ更新予定 「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。 良ければそちらもお読みください。 身体だけの関係です‐三崎早月について‐ https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

処理中です...