君を好きな僕を僕は好きになれない

足立賢人

文字の大きさ
1 / 2

〜プロローグ〜

しおりを挟む
「あれ?けんちゃん?けんちゃんだよね?」中学からの仲間と飲み会をしていた居酒屋を後にして二次会はスナックか、それともカラオケかなんて言っていたら不意に後ろから声を掛けられた。
振り向いた瞬間、俺は良くも悪くも酔いが覚めた。目の前にいる凛とした大人びた女性に見覚えがあったからだ。彼女の名を仲間の笑い声で聞こえなくなるくらいの小さな声でボソっとつぶやいた。「菜美…」。
彼女も飲み会の帰りかなにかだったのだろう。凛とした顔つきから高校の頃と全く変わらない笑顔に顔を変えた。そう、俺が3年間片想いしていたあの頃の笑顔に。
「久しぶりだね!けんちゃんと会うのなんて高校の卒業式以来じゃない?高校の頃より少し太ったでしょ?今は実家?それとも一人暮らし?」相当飲んだのか、それとも久しぶりに会う高校の同級生にテンションが上がっているのか、彼女はマシンガンの如く矢継ぎ早に質問をしてきた。だんだんあの頃の記憶が蘇る。ああ、俺が彼女に惚れたのはこの明るさだ。この笑顔だ。俺は酒の勢いもあったのだろう。彼女を唐突に食事に誘ってみた。「質問が多すぎるよ!今度ゆっくりご飯でも行こ。俺も聞きたい事とかあるし菜美と話したいし!それに俺、今は中学の仲間と飲みに来てるんだ。菜美も飲み会か何かだろ?」
彼女は俺の質問に一瞬顔をしかめた。その後すぐに顔を先ほどの笑顔に戻し思ってもいない、予想もしていなかった一言を俺に告げる。「あ、今日は飲み会じゃないの!私ね、先週お付き合いしてる人にプロポーズされて、今日はその人とその人のご両親と食事だったんだ!これからタクシーで帰るところ!」
俺は突然の告白に戸惑ってしまった。そして、調子に乗って食事に誘った事を後悔しながら、ぶつけようのない感情を噛み殺し今まで誰にも見せたことの無いような汚く、ぎこちない笑顔で彼女を祝福する。「そうなんだ!おめでとう。じゃあ今度お祝いしなきゃだね。」嘘だ。おめでとうなんて思えない。お祝いなんてしたくない。こんな事を思う自分が嫌いだ。俺は君の事をまだ好きだ。いや、久しぶりに会って、またあの頃のように好きになってしまった。この想いをどこに向ければいい?この想いを捨てられる場所を教えてほしい。
俺がそんな事を思っているとも知らない菜美は、不思議そうな顔をしながら聞こえないくらいの声で何かを俺に言った後に手を振って去っていったのだった。
仲間の1人がぼーっと歩道に立っている俺に気が付き15メートルくらい先から大きめの声で俺を呼ぶ。町には雪がちらついている。彼女は俺になんて言ったのだろう。考えている間、仲間の声は俺には届かない。肩を叩かれその声にようやく気がついた。その肩には雪が少しだけ乗っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

あんなにわかりやすく魅了にかかってる人初めて見た

しがついつか
恋愛
ミクシー・ラヴィ―が学園に入学してからたった一か月で、彼女の周囲には常に男子生徒が侍るようになっていた。 学年問わず、多くの男子生徒が彼女の虜となっていた。 彼女の周りを男子生徒が侍ることも、女子生徒達が冷ややかな目で遠巻きに見ていることも、最近では日常の風景となっていた。 そんな中、ナンシーの恋人であるレオナルドが、2か月の短期留学を終えて帰ってきた。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

【完結】大好きなあなたのために…?

月樹《つき》
恋愛
私には子供の頃から仲の良い大好きな幼馴染がいた。 2人でよく読んだ冒険のお話の中では、最後に魔物を倒し立派な騎士となった男の子と、それを支えてきた聖女の女の子が結ばれる。 『俺もこの物語の主人公みたいに立派な騎士になるから』と言って、真っ赤な顔で花畑で摘んだ花束をくれた彼。あの時から彼を信じて支えてきたのに… いつの間にか彼の隣には、お姫様のように可憐な女の子がいた…。

夫が勇者に選ばれました

プラネットプラント
恋愛
勇者に選ばれた夫は「必ず帰って来る」と言って、戻ってこない。風の噂では、王女様と結婚するらしい。そして、私は殺される。 ※なろうでも投稿しています。

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

処理中です...