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ゲヘナ編
三十三章 ※
しおりを挟むルイを背中に担いでなんとか家に着いた。
オレのアパートまで来ると、なんとか鍵を開ける。
「家、着いたぞ。大丈夫か?」
「はい……もう、一人で歩けますから」
縄の跡がくっきりと残る手首を擦って、ルイは答える。その青紫色の痣がオレの気に障る。脳味噌がチリチリと火花を立てる。
まだあの臭いがする。
饐えた無機物と、土と、血。そしてオレの知らない、男の臭い。
「ミキくん。あの――」
「服脱げ。手当の前に、風呂入んぞ」
そう、肩を掴んでルイを風呂場へ連れて行った。足跡のついたシャツを見て、思わず舌打ちが漏れた。
気遣うとか、何か励ます言葉いうとか、そんな余裕なんてなかった。ただ、ルイに残ってるアイツらの痕跡をみんな消したかった。
ルイを裸にすると、オレも同じように脱いで風呂場へ向かう。
人肌の温度のシャワーをルイの頭から浴びせる。
石鹸を泡立て、てっぺんから体の隅々まで塗りたくる。
ルイはずっと黙っていた。口を噤んで、オレから目を背けていた。
まるで、出逢った頃の、傷だらけだった時みたいに。
「……ごめんなさい」
急に謝られて、オレはシャワーを止める。
あまりに小さなその声を聞き逃したくなかった。
「なんで謝るんだ」
「オレ、ヤラれるばっかで、ダサいって、思ったんでしょ?」
意味がわからない。
ダサいのはみすみす敵にルイを送ったオレの方だ。
言葉一つまともにかけられないオレだ。
なのになんでルイが自分を責めてるんだ?
「言ってる意味わかんねえんだけど」
「されるがままで弱いオレなんて、嫌いでしょ? 本当は、皆みたいに強くて、相手チームやっつけられるような、そんな風な強い奴が欲しかったでしょ? でもオレ、出来なかった。『クライシス』が、ミキくんとの絆が、やっと見つけたオレの居場所がなくなるのが、こわ、くて」
次第にルイの声は上擦っていく。
段々、呼吸もしづらそうなって、ついには肩を震わせた。
ルイはその頬からいくつも涙を流しながら、オレに訴える。
「っ……ごめんな、さい……これ、ずっと側にいてくれたのに、こんな、で……う゛っ……お願い、ですから……嫌いにならないでぇ……!」
シャワーに濡れてもわかる涙の粒。
それを見た瞬間、オレはルイを抱きしめていた。
直接触れ合うのはこれが初めてじゃない。
それでも直で体温を、オレの心を教えてあげたかった。
「オレがムカついてんのは、オレだ。お前を守れなかった。オレ」
そう言うと腕の中のルイの緊張が解けていった。
頭の中ごちゃごちゃしてるけど、言いたい台詞を今ここで全部言わないと気が済まなかった。
「お前が強くなりたいためにオレの側に来たのは知ってる。でも、もう決めたんだ。ルイ。お前はオレのもんだ。お前の傷も、痛みも、涙だって、全部オレが貰ってやる。喧嘩すんななんて言わねえ。でも、オレの事は絶対に忘れんな。お前が『クライシス』であることも……オレが一生お前を愛してるってことも」
そこまで言うと、体を離す。
ルイはまだ泣いている。でもポロポロと泣きながら、笑っていた。本当にこいつは笑った顔が可愛い。一生手放してやるもんか。
「いいん、ですか? オレ、み、ミキくんの側にいて」
「イヤだっつっても離さねえよ。地獄にだってついていく」
「オレそんな悪人じゃないっすよ」
「そうなったとしても、愛してるよ」
そこまで言うとどちらともなくキスをした。
鉄と石鹸の味がして、ちょっとしょっぱい。
それでもオレらにとっては仲直りの特別なものだ。
「……ルイ。風呂から出たらさ、ヤろうぜ」
「は!? 何言ってんすか!? オレ、こんなんだし、つかムードってもんがない!」
「上書きしたいんだよ! ルイが知らねえ奴に好き勝手されたってのが気に入らねえし」
「そんな、お、オレ、ミキくんが思ってるようなこと、されてねえけど……」
赤らめてそっぽ向くルイがすっげー可愛くて、シャワーで全身洗って、その手を引っ張った。お互いの体をバスタオルで拭くと、そのまんま敷いてある布団の上にルイを寝かせた。
「ミキくん、ね、ほんと待って……オレ、綺麗じゃない、から」
ルイはそう言って慌てて顔を隠した。
頬にはスリ傷があるし、唇も切れている。
体中に青紫色の痣がある。
だがそれが何だっていうんだ。
「綺麗じゃなくたって、ルイはルイだよ。オレの大好きなルイだ」
黒髪に指を這わせて、頭を撫でる。濡れていて指に絡み付く髪の感触が心地いい。
そこでようやく顔を見せたルイは赤くなった顔で、オレに懇願してきた。
「じゃあせめて……優しくして、ください」
……そういうのが逆効果だってわかんねえのかな、コイツ。
そこまで言うともう堪え切れなくなって、あいつの頬のキズにキスをした。
「ん」
ルイが受けた痛みをオレで上書きするように、体中に出来た痣に優しくキスをする。
その度にルイはいつもの可愛い声を出す。オレも同じように優越感に浸る。
いくらルイを傷つけても、誰もこんな風にルイに触れる事は出来ないんだ。本当の意味でルイに触れ合えたのは、このオレだけだ。ざまあみろ。
「ひ、ぅ。あっ」
胸元に吸い付くと、声が高くなって切なそうに鳴く。
ルイはここ弱いもんな。
でも今日は許されるよな? 一瞬でもオレがルイを嫌いになるとか思ったとか許せねえし。
そんな風に思って、オレはルイの乳首を唇で挟んだ。
「あ! ゃだ、ミキくっ、それ、やだってえ!」
本気で嫌がってるのか、ルイは足をバタバタさせる。そうしたって上に乗っかってるオレには届かないのに。本当に可愛い。
口を窄めて音を立てて吸ったり、舌で舐めたりすると、声を抑えながらも甘ったるい声を出してきた。
「はぁ、うぅ、ンっふ」
「可愛いな、ホント」
「ひ、く、くわえながら、やめて」
乳首を咥えながら言葉を話され、唇の振動がくすぐったいのか腰をくねらせて逃げようとする。
ルイは色が白い。それがコンプレックスらしいがオレは好きだ。ミルクアイスみたいに甘くて美味しそうじゃん。興奮した時の乳首は血色がよく艶やかで、まるでクリームの上に乗せられた苺だ。
指先でくにくにと弄りながら、柔らかい尻を撫でる。
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