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ゲヘナ編
三十八章
しおりを挟む慣れないスローセックスしたせいか、事を終えた後はかなり怠い。
それでもここで眠るわけにはいかない。
「眠気覚ましに、さ、一緒にシャワーあびよっか」
「……ん。そだな」
そういってお互いの液やら汁で汚れたオレたちは、来た時よりも慎重に階段を降りていく。
この家の風呂はホテルよりも小さく、男二人一緒に入ると体をくっ付けないといけなくなる。
「この前みたいに、オレが洗ってやるよ」
「ああ。よろしくな」
そう言って玄二はスポンジで泡を立て、オレの体にそれらを擦り付ける。
「さっきの」
「ん?」
「オレと、ずっと一緒って……あれ、プロポーズってことでいい?」
改めて聞かれるとすっげー恥ずかしいこと言ったなオレ。
でも否定はしない。だって本心だから。
「そのつもり、だけど?」
「……! うれしい」
そういって泡だらけのオレに抱き着いてきた。
おお、デカい胸が目の前にある。また反応しちゃうから離そうとしたが、今日はなかなか振りほどけなかった。
「オレもさ、ずっとこんな日が続いて欲しいなって思ってた。いつかはお母さんと恋白にも認めてもらえるような……そんな幸せな日が、オレと兄貴が家族になれる日が来たら……って」
「玄二……」
「ほんとーに嬉しいんだ。兄貴がそう言ってくれて」
少し体を離して、オレの唇にキスをしてから玄二は満面の笑顔を向けた。
「これからずっと、よろしくな。兄貴……大好き」
玄二から好意を伝えられ、オレの言葉を喜んでもらえて、本当に嬉しかった。
今度はオレから抱きしめると、玄二は腕を回して受け入れる。
「まだずっと先になるし、オレ、頼りないとこ結構あるけど……こんなオレだけど、よろしくな」
「大丈夫。オレが支えるから」
「ハハ。締まらねえや。やっぱり」
最後まで格好つかなかったけど、それでも玄二はオレの想いを受け入れてくれた。
この幸せが続くのなら、オレはなんだってする。
シャワーを終えて服を着た時には、もう外が白みかかっていた。
「じゃ、オレ、いくから」
「うん。またな」
そして、今度は二人同時のタイミングでキスをする。
唇を離すと、お互いどちらともなく笑ってしまった。
「……じゃあな」
それからリビングの窓からオレは家に帰った。
幸いパートが休みの日だったおかげか母さんはまだ寝ていて、オレはこっそり自室に戻る事が出来た。
「はぁ~……」
ベッドに横たわると、さっきの余韻に浸る。
玄二の体温。言葉。香り。
それが永遠にオレのモノだと思うと、笑みが止まらなくて心臓が苦しくなってくる。
そんな風に、性欲とは関係ない意味で興奮してしまって、オレはそのまま朝まで起きてしまった。
※
その日の集会はいつもと違った。
紅の『クライシス』の衣装を身に纏った槐とかつて『ゲヘナ』だった者たちが新たに四番隊としてそこに集まっている。アジトの外からは、千麻が中を覗き込んでいる。
彼女は槐よりも、ミキとルイに熱い視線を送っている。確か彼女は前世でミキとルイの絡みが好きな腐女子だったっけ。そんな彼女にとっては今のこの状況は堪らないよな……そう思うと槐のその後を応援してしまう。
そうしてると、玄二に手を引かれた。
玄二はオレの耳元でぼそっと呟いた。
「あの佐々木ってやつ、いたろ?」
「え?」
「あいつが盗んだのはヤクザの金だろ? それをわかって手つけたんだ。未成年のカタギでも、この街から逃げないと大変なことになるぜ……ま、ヤクザから逃げ切れたらって話だけど」
そう言って笑う顔は冷たく、それでもオレには艶っぽく見えた。
取り敢えず、あいつがもうオレたちを巻き込むことはない。それがわかって良かった。
「だからもうあいつらの心配もいらないぜ?」
「……妬いてた?」
「当たり前だろ」
すねたように言うと、オレの手を握る。昨晩オレに縋って来たように、固く。
色々と気がかりだが、これからの事は彼女たちに任せよう。もし困る時が来たら、オレらが仲間として助けてやればいい。
壇上に向かうと、いつもの仲間たちがいる。
鳳兄弟はいつものように余裕綽々な笑みを浮かべ、カズは口を真一文字に結んでいる。ルイは……少し体の動きがぎこちない。きっと昨日の怪我が響いているんだろう。だがミキはそんなルイを支えて、しきりに声をかけている。
「ルイのことはミキに任せた方がいいな」
「だな。巻き込まれて蹴飛ばされたくねえし」
言えてる。あのミキに愛されてルイも苦労するな。
こんな日々が、ずっと続くように。
オレの居場所があるここで、オレの愛する人たちとの日常が、美しい世界が、いつまでも。
玄二の手を握りながら、オレはそう願っていた。
***
ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。
「オレが推しを抱くなんて! かませ犬転生元社畜×闇深最強ラスボス」は一先ずここで区切るつもりです。
潮と玄二の物語はこれからも続いていきます。
これからは番外編も出していく予定ですので、皆の活躍を待っていて下さるとうれしいです。
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