真実の愛のおつりたち

毒島醜女

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ミラン子爵夫人

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次期公子妃の為の妃教育。
相手は変われど、私のすることは変わらない。

今日はマナーの勉強であるが、彼女は全てをこなしていっている。
時折躓いてはいたが、素質と聞き分けがよいお陰で妃教育は順調に進んでいた。

「……まだ緊張されているようですが、上々です。明日も励んでいきましょう」
「ありがとうございました。先生。よろしくお願い致します」

チェルシー様はそう言ってカーテシーを披露する。
その仕草については、指摘をするまでもなく完璧な礼だ。
彼女と別れた私は次の授業のカリキュラムを考えていた。
マナーを応用するために、パーティーでの立ち振る舞いを教えた方がいいかもしれない。
勉学や美術などの知識面に関しては不安はない。
なので彼女が苦手とする社交についての教育が相応しいだろう。

「はあ……」

チェルシー様は優秀な生徒だ。
しかしそれ故に私の胸の内は複雑だった。
いっそ全てにおいて不得手で、できないできないと駄々をこねる我儘な娘であったらどれほどいいか……などと思ってしまう自分が恥ずかしい。

ブリジット・ジブリール公爵令嬢。
彼女は全てにおいて完璧だった。
容姿だけではない。立ち振る舞いも、知性も、相手を慮れる慈悲深さも。
この方が妃となられたのであれば、この公国の平和は間違いないだろうと思えた。
しかし今はどうだ。
今まさに、公国派は――

「ご機嫌よう、ミラン夫人」

そんな事を思いながら回廊と歩いていると、侍女長が声を掛ける。
彼女は侍女長のフリーゲ夫人だ。
大公陛下と同じく王国への嫌悪を隠そうともせず、王国からいらしたローズマリー正妃のみならず、ブリジット嬢に対してもいい感情をむけていなかった。
流石に表立ってそれを口にすることはなかったが、フリーゲ夫人の高揚した上機嫌な様子から彼女が婚約破棄を喜んでいることは手に取るようにわかる。

「フリーゲ夫人……ご機嫌よう」
「これからお帰りになられるの? もしお時間が合ったら、少し休憩しませんこと? 私もちょうど今からブランチでして」

ただの食事ではないことはわかっていた。
私もただで時間をくれてやるつもりはない。こちらも彼女の腹を探ることにしよう。

「ええ、お誘いいただきありがとうございます。いただきますわ」

ブランチの内容は、思った以上に私の思い通りの内容だった。

彼女曰く、婦人議会に興味はないかといった。
女性の社会進出については我が国も取り組んでいた議題である。それに大公陛下としては王国に先んじたい気持ちもあったのだろう。
議会に所属していない私は知らなかったが、現在その中で頭角を現しているのはチェルシー様のお母上であるコロンバイン夫人である。フリーゲ夫人はその彼女の熱心な信奉者であるようで、目を輝かせて彼女の力になるように訴えていた。
私は話を保留し、その場を後にした。

「……彼女に限って、ないとは思うけど」

公子妃になった娘を使って権力を得ようだなんて、そんなはずないわよね? ただ、タイミングが良すぎただけよね?
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