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ミラン子爵夫人2
しおりを挟む港町にあるホテル。
ここは外から見えにくいし、スタッフも皆口が堅い。故に会議や会合に向いている。
今日、私はそこに懐かしい友達に呼ばれた。
マルガレータ・ガンス。
王国に拠点を移し、一家総出で公国を出ていった彼女は真剣な眼差しでこういう。
「これから公国への風当たりは更に厳しくなるわ。だからね、クレア……妃教育が終わったらすぐにこの国を出なさい」
「マルガレータ……なにを」
「向こうの公爵家とうまくいきそうなの。あなた達に良い職場も紹介出来るわ」
確かに、私の夫や子供たちは困窮してる。
あのジブリール家が公国を出たせいだ。
しかし、フリーゲ夫人ほどではないが王国にいい感情を持っていない家族は、言っても聞かないだろう。それに私はチェルシー様の教育係だ。万が一のことも考えて代役は用意しているものの、そんな私が国を出るのは気が引ける。
「話してくれて、ありがとう」
「いい返事を待っているわ。ここが新しい私の連絡先よ」
そういってカードを渡してくれた。
変装を整えて帰っていく友人の背中を見送って、私は考える。
ずっと最近感じるもやもやの正体を見つけた気がした。
家に帰った私を、青い顔をしたメイドが慌てた様子で出迎えた。
夫が先程倒れ、家に運ばれてきたと。
寝室に駆け込むと夫は息子と娘に囲まれ、永遠の眠りについていた。
「マレンツィオ! ああ……嘘……そんなこと……」
彼の死の原因はわかっている。心労だ。
昨今の資金繰りの苦しさ、次々消える得意先。元々体調を崩した夫は回復することなくそのまま倒れ、息を引き取ってしまった。
その時私の心にあったのは哀しみではなかった。
ようやくこの複雑な気持ちから解放される道が出来た、と思ってしまった。
「デニース、ロジェル、リディア……話があるの」
涙する三人の子供に、私は説いていった。
始めは戸惑っていたが、私からの説得、そして父の末路をみた彼らはすぐに納得してくれた。
私たちはすぐさま王国に向かった。
引き継ぎは代役にと選んだ人間を送った。
去り際、コロンバイン夫人から手紙を受け取った。
そこにはいかに私が身勝手で卑怯な人間かが書かれていた。
その文字を見て、ああ、自分は正しかったと思った。
そうして私はマルガレータの連絡先に向かった。
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