真実の愛のおつりたち

毒島醜女

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ノエル将軍

「ひどいな……」

帰国を果たしたローズマリー様から公国の現状を聞いたが、そんな言葉を思わず漏らしてしまった。

大公は公国内にいる王国派の人間や団体への抑圧を始めた。
ほぼ言いがかりのような理由で商売を邪魔したり、活動を制限したり、ひどいときには逮捕までした。
彼が妻を寝取ったフリーゲ男爵もその一人だ。

そんな横暴をしてなお、大公の暴走は止まらなかった。
なんと教会に圧をかけて、フリーゲ夫人を離婚させ自分と結婚させようとしているのだ。
ローズマリー様と結婚した際にした誓約を無下にして。
つまりは神に誓った言葉に背くという事だ。そんなことをする施政者についていく人間などいるだろうか?

「つまりは、真実の愛ってやつに生きたいじゃない? 息子みたいにさ」

めちゃくちゃだ。
それで巻き込まれる民の身にもなってほしい。

「側妃はどうしたのですか?」
「ああ……ブリジットを巻き込んだあの馬鹿女ね。完全に狂っちゃってもう離宮に幽閉みたいよ? まあ元からそこに引きこもってたから何にも変わらないみたいだけど」
「王太子はダンマリ、とは……実の母があんな目に合ったというのに」
「元から関係が希薄というか毒親とその子供って感じだったらしいからねえ。お父上に対しては自分が我儘を通した手前、強くは出れないでしょう」
「認めざるを得ない、と。確かに言えますね」

当初は無礼な公子と思っていたが、その過去を知ると彼も被害者だったのだと思ってしまう。
喧嘩ばかりの両親。自分の側には威圧的で権威主義の塊の母親。
だからこそ上流階級の出身であるブリジット様に対して委縮してしまったのだろう。
だからこそ平民の慎ましい女に、虐げられた者同士惹かれたのだろう。
彼がしたことは男として許せないが、同情はしている。

「ところで、ブリジットは元気になったわね。城では表立って会えなかったけど、公国にいる時より表情が晴れやかだわ」
「色んなしがらみも無くなりましたからね」
「ふふ、はたしてそれだけかしら」
「……は?」

意味ありげな眼差しをこちらに向けながら、彼女は紅茶を啜る。
また彼女はおかしなことを言う。
私とあのお方はそんな仲ではないのに。

「あまりからかわないでください」
「身分、品性、性格、外見。あなた以上にあの子に相応しい相手はいないわよノエル。彼女だって心を開いてるからあんな笑顔を見せてるんじゃなくって?」
「それはただ拠り所として……」
「ブリジットは私にとって我が子同然よ。そんな親心からいってるの。キメるところは男のあなたからキメないと。既成事実は勿論駄目だけどね?」

……勘弁してくれ。
ローズマリー様の生母である王妃様がよく「あなたの堅実さが爪の垢ほどでもあの子のあれば」と嘆いていた理由がわかる。

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