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スリ夫人3
一瞬の出来事だった。
集会所も兼ねている教会でスピーチのため壇上に上がっていた。
いつもの事だった。
水差しを持った女性がこちらに近づくのも日常であった。
だから彼女が隠し持っていたナイフで私の首を切りつけるなんて思いもしなかった。
痛みと寒さで立てなくなり、床に跪くと女は叫びながらナイフを振り下ろす。
「モール男爵家を貶めた報いを受けろ!」
遅れて駆け付けた警備員に取り押さえられ、引き剥がされても、女は叫び続けた。
「旦那様のご慈悲を無下にしやがって! 娘への虐待だってお前がしたことだろうが! お前がチェルシーを打ち据え、罵倒したんだろうがぁ!」
違うわ。
アレは教育よ。
世間があの子をどういう風に見ているか、何をするか教えてあげただけ。
だから私の言葉も、暴力も、私からのものじゃない。
あなたたちのように私を見下す、汚らわしい世間の。
女の声を聞いて、半数の女の目が変わった。
立ち上がって否定しなくては。
そうしたいのに手足がかじかんで指一つ動かせない。
ああ、ダメよ。こんなところで、私は……
チェルシー……助けなさい……どうして、こないの……私は――
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