ボクと王子サマの田舎生活

毒島醜女

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これからの私。決めた答え

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朝ご飯の片付けを終えると、正樹は例の水晶をリタの前に差し出した。
それを見た瞬間、リタは目を開いた。

「なんで、兄様の……が」

そこで正樹は全てを話すことにした。
異世界の扉を開ける儀式をした集団がいるということ。
リタの兄、シグウィンと名乗る男が水晶玉越しに話し合ったということ。
さすがに同意なく連れて帰ろうとしたのは言わなかったが、そこまで聞くとリタは驚いた。

「兄様、帰ったんですか?」
「うん、わかってくれたよ。まずは君と話がしたいって」

ここで驚くということは、シグウィンは日常的にあのような支配感情をリタに向けていたのだろう。
よく自分の説得で納得してくれたと、今になって正樹は安堵した。

「……マサキ先生」
「うん」
「私、兄様と話してきます」
「うん。いってらっしゃい」

そうして水晶玉を持ち、リタは自室に入っていく。
正樹は扉一つ挟んだ場所で彼らの会話を聞いていた。

兄弟の会話が始まると、次第にリタは感情を露わにして兄にぶつける。

魔法が無くても出来る事を探していても、いつも「何もしなくていい」と言われて、裏で笑われるより兄に否定され拒絶されたことがつらかった。
剣術で鍛えた腕も過剰な回復魔法で筋力も元通りにし、全てを無かったことにされて悲しかった。
そして最後の決め手に、

「私は赤子じゃないんだ!」

と聞いたこともない大声を発した。
シグウィンはそれを否定も謝罪もしなかった。

沈黙の後、ただ一言「帰りたくなったら、いつでも声をかけてくれ」と告げた。
そこから間をおいてから、正樹はドアを小さくノックした。

「入っていいかい?」
「……はい」

部屋に入ると、リタはぎこちない笑顔で迎えてくれた。
それでもどこかすっきりしたような顔をしている。

「大丈夫?」
「初めてで、兄様に、あんなに本当のこと話したの……私と兄様は年が離れてるし、父のように尊敬する存在なのに」
「兄弟なんて喧嘩するもんだよ。よく頑張ったね、リタくん」

そう言って、正樹はリタの頭を撫でる。
銀色の絹のような髪は触れ心地が良かった。
リタは青い瞳を見開いて、しばらく無言だったが次第に目尻に雫を溜め、ポロポロと静かに涙を流していった。
正樹は何も言わずに、彼を思う存分泣かせることにした。
これまで堪え続けていた感情を全て吐かせることで、リタは成長できるはずだ。
そしてしばらくして、泣き止んだリタと一緒に正樹はベッドに腰かけていた。

「気はすんだ?」
「はい……」
「ごめんなさい、あんな姿見せてしまって」
「大丈夫だよ。感情を表に出すのも心の治療のひとつなんだから」

そう言われると、リタは顔を俯かせてポツリと呟いた。

「私、まだこれからどうすべきか、わかりません」

ぱっと顔を上げ、真っすぐな目で正樹に訴えた。
今リタは勇気をもって正樹に話してくれているのだ。

「本当はロクサータ王国に戻るべきなのはわかっています。でも、私は初めてここで一人の人間になれた。一から色んなことを学べた。魔法のない世界に来たから居心地がいいだけなのかもしれない。それでも、私――まだ、この世界にいたい」

再び彼の目に涙が浮かぶ。
一度吐き出した感情は、もうリタの中で止まらないのだろう。

「あの世界から逃げるわけじゃない。ただ、私が誇れる私になりたいんだ。私に出来る事、ここでまだ見つけたい。もう大丈夫って、思えるまで」
「よく言ってくれたね」

今度は自分で涙を拭ってたリタの肩を正樹は両手で持つ。

リタの答えは決まった。
ならばもう正樹が取るべき行動は決まっている。

「僕は大人として、君を責任もって支えるよ」
「……っ、ありがとうございます」

リタの小さな手を握り、二人は固く握手をした。

未来はまだ決まっていない。
それでもいい。
自分で描いていけばいいのだ。

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