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少年妃は溜息をつく
しおりを挟む「ひどいのだわぁん!」
肚兜と腰巻きだけを身に纏い、頭ほどある肉の房をぶるぶると揺らして頬を膨らませる。
その下品な姿と鼓膜をつんざく甲高い声に、私は辟易としながら答える。鼻腔を刺激する甘ったるい香りに顔を顰めぬように気をつけながら。
これがこの国の皇太子妃とはな……
「どおして私のお手伝いをしてくれないのおっ?」
「ですからランパオ妃、夏至祭の祭りの主催は王妃様の役目です。それは代々この国の決まりです。側妃でありまだ未熟者の私は――」
「だってだってだってぇ、おばさんばっかの茶会なんてつまんないんだもん! 妾の詩や踊りだけじゃなくて、ただ歩いてるだけで悪口言って意地悪してくるんだめん! フジンノツドイ、なんて行きたくなぁい! だからシリウにお願いしてるのに! んもおいいわあ! ユウユウに言いつけちゃうから!」
ユエチャン皇太子をまるで子供のように呼びながら、ランパオ妃は腕をぶんぶんと振るわせながら自分の宮に走っていった。彼女の側にいた侍女たちは同情の眼差しを私に向けて、主の後を追う。
彼女たちが去ったのを確認すると、長椅子に横たわる。通り雨のように疲れがどっと溢れて、溜息が止まらない。正直、どの政よりもこの時間が一番苦痛だ。
「はああああぁぁぁ……」
「お疲れ様です。シリウ様」
「なんで自分より年上の駄々っ子の相手しなきゃいけないんだよ」
私に労いの言葉をくれるのは、私の従者であるダリ。
この後宮で唯一の同性であり、私の味方。
彼の淹れた茶を飲みながら私はこの日々に至るまでを思い出す。
私、シリウは高級文官の息子だった。
物心つく前からその才能は確かなもので、周囲から麒麟児と崇められ、両親からの期待を常に感じていた。
そんな彼らは、自分の望む未来を見る事は出来なかった。
夫婦揃って赴いた茶会の帰りで、事故に遭って亡くなった。
その遺体は無惨なものだったらしく、彼らの亡骸は即座に荼毘に伏されて骨壺に納められた。
親戚たちは強かであり、私が喪に服している間に私の行く末を勝手に決めた。
私は元服を迎える前に後宮に側妃として献上された。
男の体でも妊娠できる『妊夫の術』が出来て数十年、男同士の婚姻が認められ十数年、初めての男の妃の誕生であった。
私が側妃に出された理由は一つ。
皇太子と正妃に代わって政を担う事。
絶世の美貌と豊満な体にいつも桃の花が散っているかのようなおめでたい頭を持った正妃と、そんな彼女の言いなりの皇太子。
王宮の皆は私にそんな彼らの舵取りを私に、親戚たちは王宮の乗っ取りを私に求めていたのだ。
皇太子は正妃に惚れこんでおり、他の女も男も求めていないのは不幸中の幸いだった。
私の才能をひけらかした両親に、自分の今を見せてやりたい。
そう思い、自嘲の笑みを浮かべる。
「湯浴みの準備をしてくれ。もう、寝たい」
「そういうと思って、もうしてありますよ」
ダリはサラサラとした黄金色の髪を揺らし、眼鏡の下でニコリと陶人形のような笑みを浮かべる。背は他の男よりも群を抜いて高く、細身でありながらしなやかな筋肉を纏うその姿は宛ら絵巻物に出てくるような貴公子だ。
脱衣所で旗袍をダリに脱がさせ、下履きを解かせる。
これから一番恥じるべき行為をしなければならない事に、私は歯噛みする。しかもそれは自分の口から命じなければならないのだ。
「ダリ。鍵を……早く外せ」
「はい。ただいま」
私は踵を返してダリと向かい合い、自分の下肢を指さした。太腿の間、男根がある場所には悍ましい拘束具がされていた。闘犬にする口輪のようなものが私の男根には絡み付いており、根元の方には鍵穴がついている。
男根を下向きに固定した貞操帯の鍵をニタリと笑いながらダリは取り出す。それから、わざわざ私の男根に拘束具越しに触れながら開錠する。
この屈辱的な縛めは私の身を守るためのものだ。
当然のことだが後宮の中には私とダリを除いて女しかいない。
彼女の中には私との間に既成事実を作り、不幸に作られた子供を脅迫材料に使わんとする不逞の輩もいる。そうなることを防ぐために、装着している。勿論渋々だ。
こうしてようやく、温かな湯の抱擁にありつけた。しばしそうして体をほぐした後、体を清める。西側の国から献上された石鹸を泡立たせ、ダリはそれらを私の体に纏わせる。
上質な綿に包まれているようで、とても心地いい。
机上の仕事と大きな駄々っ子の姿が霞んでくる。
肩と腕、そして背中を洗っていた彼の手が、前に伸びる。それだけで身構える事はない。そのはずだ。なのに戸惑うのは、コイツのせいだ。
肋骨をなぞる様に触れ、中央から滑らせていき、臍の穴の輪郭を指でなぞる。それから掌を張りつけ、更に下に伸ばしていく。
それは、あの『行為』をする合図だ。
「っ、ダリ」
「前にここを解きほぐしたのは三日も前です。今宵も私めが癒して差し上げますね」
「いいっ、離せ」
命じているのにダリは聞かず、弄っている手とは逆の手を私の腰に回して縛り付ける。やっと自由になった筈なのに捕らえられた私の男根を、成長途中で皮を被っているそれをすっぽりと包む。大きな手に一番敏感な場所の全体を捕らえられ、私は思わず「ひう」と声を漏らしてしまう。
根元をキュッと指で掴みながら、人差し指を中指で男根を挟みゆっくりと上下させていく。
近づいていくうちに、ダリは後頭部に鼻先をくっつける。
「あの様子では、正妃様は夜伽を終えたまま来られたのでしょう。シリウ様の御髪にもベッタリと麝香と情交の匂いが移っております」
「……知るか、ン、そんなの」
「それを下心なしで出来てしまうのですから、大したお人だ」
後ろでクスクスと笑うダリの息が、熱くてゾワっとする。温かいはずなのに背筋に氷でも垂らされたように体が跳ねる。この前にそうしたように、指先で皮を捲り、亀頭を露わにする。そこを泡をくっ付けながらつまむように弄り出す。
前はそれだけで精を放ってしまったのに、怒りのせいか疲れのせいかそれが出来ない。
ずっと行き場のない快楽の波が体で渦巻いて、もどかしい。
「手だけでは飽きてしまわれましたか?」
「ち、違うっ!」
「でしたら――」
ぐるん、と世界が回転した。
気が付くと、私は四つん這いになっていた。
ダリの眼前に何も纏っていない臀部を晒して。
すぐに体勢を直そうとしたが、肛門に感じだ滑った感触に身動きが取れなくなる。
それは決して泡ではない。生々しく、もっと悍ましいものだ。
「ひぅ!」
「閨教育では知らないでしょう? 『妊夫の術』を使わずとも、ココは女のものと同じように、口や手で愛でると悦ぶんですよ?」
粘膜にアイツの熱い息がかかる度に、ガクガクと腰が震える。指に力が入らず、そのまま床に伏すことになった。
孔の皺を一つ一つに唾液を滲みこませようにねっとりと舐めあげたかと思うと、穴の奥へ舌先を滑り込ませる。
ずちゅ、ずちゅ、じゅるるる
やらしい音が反響し、耳の奥まで犯されているような心地になる。
肛門の口淫も恥ずかしくて受け入れがたいのに、男根への刺激も止めどなく与えられる。
「あ゛う~ッ!? ひゅ、い! ぁ、アッ、やだ、ダリぃ!」
もう声を抑える事が出来なかった。息も絶え絶えになりながら、必死に酸素を吸って、ダリにやめてくれと懇願する。しかしそれを聞き入れる事はなかった。
心臓の音が五月蠅い。今でも弾けてしまいそうだ。
太陽の光が目を刺すように目の前が白くなっていく。
この感覚を、私は知っている。
でも、いやだ。こんな格好で達したくない。
「く、くるっ、きちゃう! だしてっ! 口ぃ、ぬいてえぇ!」
私に出来るのは、そんな情けのない声をあげる事だけだった。
そこからすぐに目の前が完全に真っ白になっていった。
数回、目の前が点滅すると、栗の花の匂いが周囲を包んだ。
やっと自由になった体で振り返ると、完璧な笑みを浮かべたダリの姿があった。
「たっぷり出されましたね。シリウ様。すっきりされました?」
「……っ、死ね!」
私が懸命に投げた風呂桶は、彼には当たらなかった。
無常だ。
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