7 / 32
七話 なんで???
しおりを挟む
両親の相手はいつも疲れる。
私のことを愛しているのもわかるし、貴族として娘の相手をすぐに決めて子供が欲しいのもわかる。
でもやっぱりまだそういうの要らないしな……
現状が一番幸せなんだよ。
夕飯も食べてる気がしなかった。
ただ風呂に入って、泥のように眠った。
それから一週間ほどした時だった。
両親が再び私の館を訪れた。
だが、用件は前と違った。
「領主になる……? お二人が?」
私の言葉に、うんうんと母親が頷く。
「そうなの! 色んな事情で領主がいない土地にね、移住すると色々と支援してくれるのよ。しかも選ばれし者だけが選ばれるのよ。『領主として優秀な貴族』ってね」
なるほど。人を選ぶ田舎移住支援制度、みたいなやつかな?
父親も喜んでいるみたいだけど……
いや、母親が見せてくれたパンフレット見たけど、これここから結構離れてない?
土地の魔素も少なくて、移動魔法使うにも時間かかる南の島だし。
それ以前に王家が作った制度なんだから勝手にどっか行くことは出来なさそう。
「二人は、ここでいいの?」
「うん! 南の島での生活、お母様ずっと憧れてたのよ~」
「私ももう一度領主として仕事が出来ると思うと楽しみでな。今から腕が鳴るぞ」
「そう……あの――」
「ドロシーちゃんの結婚のこともわかってるわ。もう、それならそうと、遠慮せずにお母様にいってもよかったのにぃ」
……え? 私の結婚?
なんのこと?
「おいおい、それは秘密だろう? まだ、な」
「あらやだ! そうだったわねぇあなた! うふふ。お祝いは楽しみに取っておくわぁ。結婚式は派手になるわねえ」
??????
ハテナマークがずっと浮かんで止まらない。
この二人は何を言ってるの、まじで。
結婚式って言ってるけど、私産まれてこの方彼氏も出来たことないけど?
私の疑問もそのままに、両親はそのまま荷物を纏めて去っていった。
「……どういうこと?」
家の前には首を傾げる私だけが残された。
取り敢えず、わかっていることは両親が離れて暮らすっていう事だ。
それに、どういうわけか私が誰かと結婚すると思っていて、お見合いへの圧力はなくなった。
……っていうか、あれだけ相手にこだわっていた両親を納得させた人間って誰?
私上位貴族と関わったことないだけど?
「ドロシー様、ただいま戻りました」
「あ……おかえり、ルルくん」
そうこうしているうちに、ルルくんがクエストから帰って来た。
私の様子がおかしいことに気づいたのか、彼はそっと訪ねてきた。
「どうしました?」
「ああ……うん。あのね……」
信じてもらえないと思うけど、私は今日あった事を話した。
ルルくんは「ふむ」と唸って、私に耳打ちした。
「……実は、ドロシー様にある噂が立っておりまして」
「噂?」
「はい。ドロシー様には公爵家子息と相思相愛だという噂が」
「……は?」
は? は?
はああああああああ?
待って待って待って。
私公爵なんて会ったことないよ?
港町であった元公爵なら見たけど、あんなのカウントするべきじゃないだろうし。
いくらギルドマスターとしてそれなりに名が挙がってるからって、公爵家なんて同じ貴族だとしても雲の上の存在だもの。
「な、な、なんでそうなってるの?」
「なんでも……大旦那様の元を訪れたその貴公子は、血華を浮かべたそうです。なのでお二人は彼を公爵家の子息と思い、その彼が『実は私とドロシー嬢は秘かに想いあっている。なので機会が出来るまでそっとしておいて欲しい』と告げたんですって」
「血華ぁ? 本当なの?」
血華とは、公爵家のみが顕現できる魔術だ。
この国、レオポルド王国には四つの公爵家がある。
彼らの祖先は建国時に最初の王と共に魔王を退けたとされる、四匹の聖獣だ。
故に公爵家の血を引いている者には、その聖なる血統を誇るための特別な魔術がある。
それが血華。
己の血を浮かべ、その血に宿る聖獣の紋章を形作る。
他の魔術師や貴族が出来るわけがない、固有の魔術だ。
だからこそこの世界では、同じ貴族でも公爵家とそれ以外は大きな差がある。
だからこそ、さらに私の頭は痛くなる。
……どうしてそんなことをする人が私の恋人を名乗って、勝手に両親に会っているの? ストーカー?
「どうしようルルくん……私、公爵家の人とはったこともないし、ましてや恋人なんてとんでもないのに。これ、私が悪いってなって、不敬罪になったりしない?」
「そんなことにならないでしょう。まだ大旦那様たちが仰っているだけですし。もしかしたら何か勘違いしただけかもしれませんし。いい方に考えたら、もう婚期についてしつこく迫られることもないでしょう?」
「……そうだけど」
そそっかしくて、思い込みが激しいあの人たちのことだ。
勝手なことを言った人のしたことを、勘違いしただけかもしれない。
それでも勝手に私の恋人だって言ってる人がいるのは怖いけど。
「大丈夫ですよ。不逞な輩がドロシー様に近づかないように、私が守りますから。役所にも『勝手に婚姻届と出す輩がいたら止めてくれ』と命じておきましょう」
「……うん」
彼の言葉に従い、私はルルくんに支えられながら家に向かう。
件の噂のお陰か、私に絡んでくる人間は前より少なくなって来た気がする。
噂の主はしばらく経ってからも見つからない。
不安はあるけど、ルルくんや周りも警護を強めてくれる。
(……このまま、なにもないと、いいけど)
私のことを愛しているのもわかるし、貴族として娘の相手をすぐに決めて子供が欲しいのもわかる。
でもやっぱりまだそういうの要らないしな……
現状が一番幸せなんだよ。
夕飯も食べてる気がしなかった。
ただ風呂に入って、泥のように眠った。
それから一週間ほどした時だった。
両親が再び私の館を訪れた。
だが、用件は前と違った。
「領主になる……? お二人が?」
私の言葉に、うんうんと母親が頷く。
「そうなの! 色んな事情で領主がいない土地にね、移住すると色々と支援してくれるのよ。しかも選ばれし者だけが選ばれるのよ。『領主として優秀な貴族』ってね」
なるほど。人を選ぶ田舎移住支援制度、みたいなやつかな?
父親も喜んでいるみたいだけど……
いや、母親が見せてくれたパンフレット見たけど、これここから結構離れてない?
土地の魔素も少なくて、移動魔法使うにも時間かかる南の島だし。
それ以前に王家が作った制度なんだから勝手にどっか行くことは出来なさそう。
「二人は、ここでいいの?」
「うん! 南の島での生活、お母様ずっと憧れてたのよ~」
「私ももう一度領主として仕事が出来ると思うと楽しみでな。今から腕が鳴るぞ」
「そう……あの――」
「ドロシーちゃんの結婚のこともわかってるわ。もう、それならそうと、遠慮せずにお母様にいってもよかったのにぃ」
……え? 私の結婚?
なんのこと?
「おいおい、それは秘密だろう? まだ、な」
「あらやだ! そうだったわねぇあなた! うふふ。お祝いは楽しみに取っておくわぁ。結婚式は派手になるわねえ」
??????
ハテナマークがずっと浮かんで止まらない。
この二人は何を言ってるの、まじで。
結婚式って言ってるけど、私産まれてこの方彼氏も出来たことないけど?
私の疑問もそのままに、両親はそのまま荷物を纏めて去っていった。
「……どういうこと?」
家の前には首を傾げる私だけが残された。
取り敢えず、わかっていることは両親が離れて暮らすっていう事だ。
それに、どういうわけか私が誰かと結婚すると思っていて、お見合いへの圧力はなくなった。
……っていうか、あれだけ相手にこだわっていた両親を納得させた人間って誰?
私上位貴族と関わったことないだけど?
「ドロシー様、ただいま戻りました」
「あ……おかえり、ルルくん」
そうこうしているうちに、ルルくんがクエストから帰って来た。
私の様子がおかしいことに気づいたのか、彼はそっと訪ねてきた。
「どうしました?」
「ああ……うん。あのね……」
信じてもらえないと思うけど、私は今日あった事を話した。
ルルくんは「ふむ」と唸って、私に耳打ちした。
「……実は、ドロシー様にある噂が立っておりまして」
「噂?」
「はい。ドロシー様には公爵家子息と相思相愛だという噂が」
「……は?」
は? は?
はああああああああ?
待って待って待って。
私公爵なんて会ったことないよ?
港町であった元公爵なら見たけど、あんなのカウントするべきじゃないだろうし。
いくらギルドマスターとしてそれなりに名が挙がってるからって、公爵家なんて同じ貴族だとしても雲の上の存在だもの。
「な、な、なんでそうなってるの?」
「なんでも……大旦那様の元を訪れたその貴公子は、血華を浮かべたそうです。なのでお二人は彼を公爵家の子息と思い、その彼が『実は私とドロシー嬢は秘かに想いあっている。なので機会が出来るまでそっとしておいて欲しい』と告げたんですって」
「血華ぁ? 本当なの?」
血華とは、公爵家のみが顕現できる魔術だ。
この国、レオポルド王国には四つの公爵家がある。
彼らの祖先は建国時に最初の王と共に魔王を退けたとされる、四匹の聖獣だ。
故に公爵家の血を引いている者には、その聖なる血統を誇るための特別な魔術がある。
それが血華。
己の血を浮かべ、その血に宿る聖獣の紋章を形作る。
他の魔術師や貴族が出来るわけがない、固有の魔術だ。
だからこそこの世界では、同じ貴族でも公爵家とそれ以外は大きな差がある。
だからこそ、さらに私の頭は痛くなる。
……どうしてそんなことをする人が私の恋人を名乗って、勝手に両親に会っているの? ストーカー?
「どうしようルルくん……私、公爵家の人とはったこともないし、ましてや恋人なんてとんでもないのに。これ、私が悪いってなって、不敬罪になったりしない?」
「そんなことにならないでしょう。まだ大旦那様たちが仰っているだけですし。もしかしたら何か勘違いしただけかもしれませんし。いい方に考えたら、もう婚期についてしつこく迫られることもないでしょう?」
「……そうだけど」
そそっかしくて、思い込みが激しいあの人たちのことだ。
勝手なことを言った人のしたことを、勘違いしただけかもしれない。
それでも勝手に私の恋人だって言ってる人がいるのは怖いけど。
「大丈夫ですよ。不逞な輩がドロシー様に近づかないように、私が守りますから。役所にも『勝手に婚姻届と出す輩がいたら止めてくれ』と命じておきましょう」
「……うん」
彼の言葉に従い、私はルルくんに支えられながら家に向かう。
件の噂のお陰か、私に絡んでくる人間は前より少なくなって来た気がする。
噂の主はしばらく経ってからも見つからない。
不安はあるけど、ルルくんや周りも警護を強めてくれる。
(……このまま、なにもないと、いいけど)
50
あなたにおすすめの小説
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。
大森 樹
恋愛
【短編】
公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。
「アメリア様、ご無事ですか!」
真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。
助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。
穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで……
あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。
★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?
綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。
相手はとある貴族のご令嬢。
確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。
別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。
何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?
【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる