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びおら

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第四章【その色の意味編】

第十四話『黒の転校生』

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 イワトコーポレーション。主に医療機器を取り扱うメーカーであるが、その他にも様々な事業に手を広げる、国内はおろか海外でもその名が知れ渡る有名大企業である。
 そこの現代表が後藤狢(ごとう むじな)という四十代の男性である。彼は元々は大学で脳科学の研究をしている研究者だったが、先代である父の隠居により会社を受け継ぐことになり、研究者をやめて社長に就任した。畑違いと当初は役員たちに軽く扱われていたが、やがて会社経営の才能を発揮し、業績を大きく伸ばす事に成功する。
 この彼には会社経営とは別に、時代から続けている、あるライフワークがあった。
 『ヒトの脳の活性化』。人間の脳の使用されていない部分を解明することで、人はさらなる高みへと進化できると考えており、その研究の中には超能力の発現も含まれていた。
 後藤は岩永不如帰を崇拝していた。彼女こそが人間のあるべき姿だと考え、全ての人間に彼女のような超能力があれば、この世はさらに栄えると信じて疑わなかった。
 多くのツテや資産を投入して岩永を調べてる中で、ユーザーの存在を知る。何人かのユーザーを治験と称して人体実験にかけるなど非人道的な研究も多く行った。そして能力の解析に成功し、医療機器の技術を取り入れて様々な装置を開発する。その中には人をスキャンすることでユーザーかどうか、そしてユーザーだった場合は持っている能力を判別するものや、ユーザーの意識を拡張させて能力の有効範囲を広げるものなどがあった。しかし、後藤の研究は終わることはなかった。それには一種の私怨のようなものがあった。
 後藤自身は、ユーザーではなかった。二年前に彼は能力を授かっていなかった。そのことが彼の最大の悩みであった。そのため、彼の最終目標は『ユーザーから能力を他人に移す』ことであった。しかしなぜかそれだけは、いかなる手を使っても成功に至らなかった。まるで岩永不如帰の魂がそれを拒絶しているようにも見えた。
 研究が行き詰まっていたある日、後藤は岩永の資料を読み漁り、ある一つの能力の存在を思い出す。
『人の心を動かす能力』。この能力さえあれば、自分に能力がなくとも世の中の仕組みを変えることができる。そう思った後藤は、この能力を持つユーザーを探し始める。手当たり次第、虱潰しでユーザーを拉致監禁して調べるも、一人だけスキャン不能というイレギュラーは見つかるものの目的の能力を持つ者は見つからなかった。しかしその中で、COLORSという組織の存在を知る。これらに接触すれば、何か分かるかもしれないと思った…。

 自然史博物館事件の犯人である恐雲美千瑠は未成年のため、彼女の名が世に出回ることはなかったが、筆舌にしがたい余罪が数多く発覚したことから、彼女は施設に送られることとなった。そのため、学校では彼女は家の都合で急遽引っ越ししたことになっていた。その事が朝礼で担任から伝えられ、クラスはざわついていた。そしてそれを制した担任は、代わりと言っては差し支えあるが転校生が来ているというと、クラスはもう美千瑠の事など忘れたかのようにその話題に切り替わっていった。小百合はその空気に嫌悪感を覚え、机の下で掌に爪を喰い込ませていた。
「入れー」
 担任の声掛けに、教室のドアが開く。入ってきたのは、いわゆるイケメンと呼ばれるような容姿を持つ切れ長な目に、吸い込まれそうな艶のある黒髪の男子だった。
「目黒誠児です、隣の月読市から引っ越してきました。よろしくお願いします」
 通りの良い声で挨拶する彼に、クラスの女子たちが浮足立ち、男子たちが身構えた。小百合は興味なさそうに窓から外を眺めていた。
「じゃあ、そこ、赤坂の隣が空いてるから」
 目黒の席は、つい昨日まで美千瑠が座っていた席だった。
「隣になるけど、よろしく」
 目黒は爽やかに小百合に声を掛けた。小百合は慌てて、にこやかに挨拶を返した。
(もうあの子の席じゃないのよね…ま、どーでもいいけど。それに、ユーザーでもないヤツが転校してこようが隣に座ろうが、アタシには何の関係ないわ)

 放課後、下校準備をしている小百合は隣から声を掛けられた。
「あ、あの、…赤坂さん」
「…なにか、用かな?」
「もし良かったら、ホントに良かったらなんだけど、学校の近く、案内してもらえたら嬉しいな…って、あ、いや、急にごめんね、困るよね」
「…私で良かったら良いけど…特にお店とかないよ、この周り」
「それでもいいんだ。…自分が住む街を知りたいんだ。ボク、家の都合で学校の近くに一人暮らししてるんだけど…慣れなくて」
「それは大変だね…学校で何か困ったことがあったら言ってね、お隣のよしみ、じゃないけどさ」
「うん、ありがとう。助かるよ」
 それから小百合は転校生の目黒と学校を出て、駅までの道を色々見て回りながら帰った。目黒は別れ際までずっと爽やかな笑みを浮かべていた。
(ったく、馴れ馴れしいわね…まるでアイツみたいに喋ってくんじゃない…けどコイツのほうが爽やかよね)

 小百合が駅に入るのを見送ったあと、目黒は駅とは本体の方向へ歩く。実は借りてる部屋は学校の本当にすぐ近くだったが、小百合と歩きたいがために遠回りをしていた。
(赤坂さん、かぁ…初対面なのに図々しかったかな。でも、ちょっとでも良いから、仲良くなりたいなぁ…なんて)
 目黒は思わずしていたニヤついた顔を振り払い、コンビニに寄って好物のチーズケーキと夕食を買って帰った。

つづく
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