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びおら

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第四章【その色の意味編】

第十五話『ピンク・エンカウンター』

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『ねーねー、今日って暇ー?』
 休日の早朝六時、良助のスマホにメッセージが届く。
「なんだよ…この感じ…赤坂と…同じ匂いがする…いや…アイツよりタチが悪いか…おやすみ…」
 そのまま眠りにつく。その五分後に再びメッセージが強襲する。
『ねーねー、既読なってンけどー? 起きてるんでしょー?』
 良助は起きなかった。それから約三時間後、その二軒目のメッセージに既読マークが付くことになる。すかさず返信が襲来する。
『起きたー? ねー、今日、暇ー?』
「桃谷ぃ…? あぁ…あの素顔分からない子か」
 良助は詫びを入れて返信する。
『すまん、今起きた。別に用事はないけど…』
 桃谷の返信は一分かからなかった。
『じゃー今からそこ行くからー』
「…え?」
 チャイムが鳴る。
「…嘘だろ? なんで部屋知ってんだ…じゃなくてぇ」
 チャイムが鳴る。メッセージも届く。
『なんででてこないのー?』
 慌てて、取り敢えず人前に出られる格好に着替えて鏡を見て取り敢えず人に見られても差し支えない感じに整えて、玄関のドアを開けた。そこにはやはりフードを目深にかぶり、派手な丸い形のサングラスをかけて、大きめなマスクをした小柄な少女が立っていた。表情は伺いしれない。
「やっほー」
「やっほー。じゃねぇよ。何なんだよ色々と」
「何がなんなのー?」
「まず何なんだよあの時間は…あんな早朝に送るかフツー…」
「えー、だってワタシは起きてるしー? っていうか立ち話嫌だから入るねー」
 桃谷は良助の了解も得ずに部屋に押し入ってきた。幸い、良助の部屋には見られて困るようなものがその時は無かったので、仕方なく止めはしなかった。
 桃谷は、部屋の真ん中に置いてある丸テーブルの前でしゃがみ込み、肩にかけているポシェットからガムやらグミやらゴミやらをテーブルの上にぶちまけた。そのうちのグミを一つ、マスクの下から口に放り込んで噛みはじめた。
「座ったらー?」
 言われて良助も向かい合うように座った。
「あらゆる意味で怖いわ…」
「なにがー? ワタシ、さゆりちゃんみたいに非常識な人間じゃないよ?」
「いやアイツが真っ当な常識人に見えるわ。え、何度か会ってるけどさ…君さ、割と大人し目というか…ねぇ」
「そうー? いつもはライト君がうるさいの。ちゃんとしろーって」
「あいつはマトモなやつだよな、うん。そう思う」
「グミ食べる?」
「いらねぇ。で、なに、用は?」
「え、用がないと来ちゃいけないのー?」
「そりゃそうだろ…一人暮らしの男子大学生の部屋にさ、女子高生が一人で来んなよな…不用心な…」
「ワタシ女子高生じゃないよー?」
「え、でも赤坂と同い年くらいじゃ…?」
「同い年だよ。けどワタシ高校行ってないから女子高生じゃないのー」
「そうだったのか…悪い」
「別に何も事情とかないよ。家でちゃんと勉強してるし」
「そ、そうか…じゃなくて、あーもういいや、で、何か用事、あんだろ?」
 桃谷は次のグミを口に入れてから喋った。
「モゴッ。まーねー。なんか白さんが親睦? 深めて来いって。あなたとサシで話したことないのワタシだけだからーって」
「そういえばそうだな…いつも青山の後ろにいるもんな」
「ライト君とは付き合い長いからねー、まぁ腐れ縁ってやつかな」
「それにしても相変わらず、すごいアニメ声だよな…うん」
「それ私の前で言ったらヒドい目見るから気を付けてね。一回は許すから」
「は、はい…」
「それと、今からワタシはフードを上げて、サングラスとマスクを外します」
「な、なんだよ急に改まって」
「仲間になる以上、隠し事は良くないって、ライト君に言われて」
「そ、それはまぁ…そうだけど、何を意味するんだよ、それは…?」
「ワタシね、昔からあるコンプレックスがあって、それでまぁ学校行けなくなったんだけど…」
「充分、事情あんじゃねえか…」
「まあそれはいいの、それでね、暫く引きこもってたんだけど、ライト君に無理連れ出されて、結局それで立ち直れた」
「なんでそんなパーソナルなこと俺に言うんだよ…?」
「今は乗り越えたから。それにあなたは人にそういう話をさせやすい人だと思うよ、能力は別にして」
「喜んで良いのか…?」
「それで、そのコンプレックスなんだけど、まず先に口で説明するね。ワタシは生まれつき黒目がとても小さいの、三白眼、っていうやつ、あれの凄いバージョン。で、つり目。凄く目つきが悪いの、さゆりちゃんよりね」
「ちょっと失礼なこと言ってるよな」
「んで、口が人より大きいというか、裂けてるというか、口避け女って昔いたんでしょ、それみたいな感じ。しかも歯がギザギザでトゲトゲ。ワニみたいな」
「ほうほう…」
「想像出来たよね、じゃあ今から見せるから、怖かったら言ってね」
 そう言って桃谷はフードを上げた。髪はとても鮮やかなピンク色のショートボブだった。次にサングラスを外し、マスクを取った。先ほど説明にあった通りの顔だった。
「ほうほう…で?」
「で、じゃなくて、ビクッとかならないの?」
「いやだって、さっき言った通りだから、そうだなーって思っただけだが」
「怖くないの?」
「それよりもまず、そのキレーなピンク髪のほうが目に入るから気にならないけどな。…それに、こんな不気味な能力持ちの俺を受け入れてくれたんだ、そんな事思うわけないだろ」
 桃谷はいそいそとサングラスを着てマスクをしてフードをかぶり直した。
「やっぱりカミングアウトして良かったー。これが親睦を深めるってやつなのねー」
「まー…そうかもな」
「じゃ、帰るねー」
 唐突に桃谷は立ち上がって部屋を出ていった。テーブルの上はそのままに。
「ゴミ置いてくなよ…あ、これは中身あんのか」
 良助は、その中にあったガムを一つ、口に放り込んだ。

つづく
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