4 / 10
【箱庭】
しおりを挟む
我は魔族の公爵だ。魔界に広い領地を持ちそこに複数の居城を構え、それはもう有り余るほどの眷属を従えている。魔王様からの信頼も厚い。
だが、我には魔王様にも言えないような秘密が一つある。実は我の前世は人間、それもこことは別の世界…つまり前世の我で言うところの現実世界と呼ばれる所の生まれなのである。前世の記憶も曖昧ながら保持している。
だがその事自体はまぁ、別に魔王様に隠す必要はない。転生は抗えぬ定められた事象であり、我らにはどうすることもできない。魔王様はそういう事情への理解が深い御方だ。
だが、秘密というのは別のことで、魔王様から賜われたこの領地を、まぁ、有り体に言えば私物化しているということだ。
既に与えられた領地なので基本的には我のものではあるが、あくまで領地や眷属の使い道は、魔王様の威光を世に広め、この世を魔族で支配するという大いなる目的の為に利用しなければならないものである。
しかし我はこの領地を魔王様に黙って、それはもう、好き放題にしてしまっている。リノベーションとかそういう次元の話ではなく、この領地一帯が我の庭のような感じに整備してしまっている。
百歩譲ってそれはまぁ良いとして、しかしその有様が問題ありなのだ。いや、我としては些かの問題も感じてはいないが客観的に見たら不味いと言うか要するに多分魔王様に怒られる仕上がりになっていると思っている。だから隠しているのだ。
我は前世の記憶を曖昧だが残している。そしてその記憶の中にある前世の世界の景色が、それはもう、懐かしくてしょうがないのだ。眷属たちにそれとなく言うと、最近ではそういうのを懐古厨と呼ぶそうだ。嫌な気はしない。
しかしその記憶も年々より曖昧となり薄ぼやけてきている。何とかしてこの記憶の中にある景色を残したい。そう考えた我は、与えられた領地を魔力で改変することにした。
我が住む居城は、前世の世界では戦国時代に建てられたとされる荘厳な天守閣が目立つ城に変え、魔族の子供たちが通う魔法学校は、我が最も輝いていた高校時代に通っていた高校の校舎を再現した。また、街全体のディテールを求めるために細部にも拘ってみることにした。
アーティファクトを扱う商店はコンビニに、ポーション屋は薬局に、そして眷属たちの傷を癒す兵舎は病院にした。特に病院では看護師に扮した眷属達に普段の振る舞いや医療行為の修練を徹底した。なぜなら我の前世は医者だからだ。仕事にはプライドと使命感を持って取り組んでいた記憶がある。しかし今や、その手で歯向かう人間どもの命を奪っているとは、何とも皮肉な事だと少し自嘲している………。
おや、我が領地にネズミが一匹忍び込んだみたいだ。我のように転生して来た者か、あるいは………
おわり
だが、我には魔王様にも言えないような秘密が一つある。実は我の前世は人間、それもこことは別の世界…つまり前世の我で言うところの現実世界と呼ばれる所の生まれなのである。前世の記憶も曖昧ながら保持している。
だがその事自体はまぁ、別に魔王様に隠す必要はない。転生は抗えぬ定められた事象であり、我らにはどうすることもできない。魔王様はそういう事情への理解が深い御方だ。
だが、秘密というのは別のことで、魔王様から賜われたこの領地を、まぁ、有り体に言えば私物化しているということだ。
既に与えられた領地なので基本的には我のものではあるが、あくまで領地や眷属の使い道は、魔王様の威光を世に広め、この世を魔族で支配するという大いなる目的の為に利用しなければならないものである。
しかし我はこの領地を魔王様に黙って、それはもう、好き放題にしてしまっている。リノベーションとかそういう次元の話ではなく、この領地一帯が我の庭のような感じに整備してしまっている。
百歩譲ってそれはまぁ良いとして、しかしその有様が問題ありなのだ。いや、我としては些かの問題も感じてはいないが客観的に見たら不味いと言うか要するに多分魔王様に怒られる仕上がりになっていると思っている。だから隠しているのだ。
我は前世の記憶を曖昧だが残している。そしてその記憶の中にある前世の世界の景色が、それはもう、懐かしくてしょうがないのだ。眷属たちにそれとなく言うと、最近ではそういうのを懐古厨と呼ぶそうだ。嫌な気はしない。
しかしその記憶も年々より曖昧となり薄ぼやけてきている。何とかしてこの記憶の中にある景色を残したい。そう考えた我は、与えられた領地を魔力で改変することにした。
我が住む居城は、前世の世界では戦国時代に建てられたとされる荘厳な天守閣が目立つ城に変え、魔族の子供たちが通う魔法学校は、我が最も輝いていた高校時代に通っていた高校の校舎を再現した。また、街全体のディテールを求めるために細部にも拘ってみることにした。
アーティファクトを扱う商店はコンビニに、ポーション屋は薬局に、そして眷属たちの傷を癒す兵舎は病院にした。特に病院では看護師に扮した眷属達に普段の振る舞いや医療行為の修練を徹底した。なぜなら我の前世は医者だからだ。仕事にはプライドと使命感を持って取り組んでいた記憶がある。しかし今や、その手で歯向かう人間どもの命を奪っているとは、何とも皮肉な事だと少し自嘲している………。
おや、我が領地にネズミが一匹忍び込んだみたいだ。我のように転生して来た者か、あるいは………
おわり
0
あなたにおすすめの小説
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる