7 / 10
【運命】
しおりを挟む
この世界には昔から魔法という概念が存在している。それは空気や水の様にごく当たり前に常に誰しもの側にあるものだ。
そしてモンスターと呼ばれる怪物もまた、昔からこの世に蔓延っていて人々に仇なしていた。
やがてそのモンスターの中でも知能や魔力の高い個体が現れ出してそれらは魔族と呼ばれる種となり、下位のモンスターを使役することで繁栄を築いていった。そしてその魔族の中から魔王と恐れられる強大な存在が生まれ、人々と魔族との全面的な争いの時代へと時は移り変わっていくのだった。
戦乱は数百年に及んだ。当初は力なき人々は魔族に一方的にやられるのみであったが、ある時、人々の中から奇跡的に魔族と対抗しうる力を持つ者が現れる。それを人々は勇気ある者、勇者と呼び讃えた。
そして遂に勇者とその仲間たちの手によって魔王は打倒され、世に平和が訪れることとなった。
それから幾星霜の時が経つも、一度たりとも人々とモンスターによる大きな争いは起こっていない。それどころかモンスターもここ最近は殆ど姿を見せなくなり、魔法の力もとても弱くなってきている。地方によってはモンスターも魔法も一切存在しない所まで存在している。文明こそ衰退しているものの、恒久的に平和な世界が続いていた。
「どうして世界はずっと平和なの? おじいちゃん?」
庭先のウッドチェアに腰掛ける老人の足元に座り込んで膝に頬を寄せている孫娘は、その純粋無垢な瞳で問いを投げかけた。
「お前は平和な世界が好きじゃないのかい?」
「そんなことないよっ ずーっと平和だったら、こうやって、ずーっとおじいちゃんとお話してられるもん」
「そうかい、おじいちゃんもそう思っているんだよ」
「えー、じゃあ、どうして世界がずっと平和なのか、知ってるってことだよねー?」
「………もしかしてお前も、そうなのかい?」
「だって、またあれやるのヤダもんっ」
「おじいちゃんも、本当にそう思うよ………」
今、この世界で生きる『生命体』の殆どは転生者である。それも殆どが前世が勇者だった者である。
彼らは争い続けることに疲れたのだ。もしまた争いになってその命を落とすことになれば、また勇者に転生するハメになってしまう。
一度、勇者となってしまった者は次に転生しても必ず勇者となってしまう運命なのだ。だが誰もが争わなければやがて勇者という存在がこの世界から必要なくなる。魔王がいたとしても、勇者がいたとしても、争わなければそれらは単なる肩書に他ならない。そしていつの日か、魔王は生まれなくなる。なぜならこの世は、勇者だけになってしまうのだから。
おわり
そしてモンスターと呼ばれる怪物もまた、昔からこの世に蔓延っていて人々に仇なしていた。
やがてそのモンスターの中でも知能や魔力の高い個体が現れ出してそれらは魔族と呼ばれる種となり、下位のモンスターを使役することで繁栄を築いていった。そしてその魔族の中から魔王と恐れられる強大な存在が生まれ、人々と魔族との全面的な争いの時代へと時は移り変わっていくのだった。
戦乱は数百年に及んだ。当初は力なき人々は魔族に一方的にやられるのみであったが、ある時、人々の中から奇跡的に魔族と対抗しうる力を持つ者が現れる。それを人々は勇気ある者、勇者と呼び讃えた。
そして遂に勇者とその仲間たちの手によって魔王は打倒され、世に平和が訪れることとなった。
それから幾星霜の時が経つも、一度たりとも人々とモンスターによる大きな争いは起こっていない。それどころかモンスターもここ最近は殆ど姿を見せなくなり、魔法の力もとても弱くなってきている。地方によってはモンスターも魔法も一切存在しない所まで存在している。文明こそ衰退しているものの、恒久的に平和な世界が続いていた。
「どうして世界はずっと平和なの? おじいちゃん?」
庭先のウッドチェアに腰掛ける老人の足元に座り込んで膝に頬を寄せている孫娘は、その純粋無垢な瞳で問いを投げかけた。
「お前は平和な世界が好きじゃないのかい?」
「そんなことないよっ ずーっと平和だったら、こうやって、ずーっとおじいちゃんとお話してられるもん」
「そうかい、おじいちゃんもそう思っているんだよ」
「えー、じゃあ、どうして世界がずっと平和なのか、知ってるってことだよねー?」
「………もしかしてお前も、そうなのかい?」
「だって、またあれやるのヤダもんっ」
「おじいちゃんも、本当にそう思うよ………」
今、この世界で生きる『生命体』の殆どは転生者である。それも殆どが前世が勇者だった者である。
彼らは争い続けることに疲れたのだ。もしまた争いになってその命を落とすことになれば、また勇者に転生するハメになってしまう。
一度、勇者となってしまった者は次に転生しても必ず勇者となってしまう運命なのだ。だが誰もが争わなければやがて勇者という存在がこの世界から必要なくなる。魔王がいたとしても、勇者がいたとしても、争わなければそれらは単なる肩書に他ならない。そしていつの日か、魔王は生まれなくなる。なぜならこの世は、勇者だけになってしまうのだから。
おわり
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる