絆のトレーニングノート:始まりの春、強さの種

たまに何かを書く人

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第5章 新しい風と、ひとつのチーム

第一節 その先を目指して

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セミの声が静かになり、夜風がほんの少しだけ涼しく感じられるようになったころ――
夏休みが終わり、学校にはまた、いつもの日常が戻ってきた。

6年2組の教室。
黒板には「二学期スタート!」の文字が踊り、廊下には自由研究を手にした子たちの声がにぎやかに響いていた。

さち、ハル、ユキの三人も、自分の席で笑い合っていた。

「夏、あっという間だったね……でも、すごく濃かった」

「うん。大会のこと、まだ夢みたい」

「でもちゃんと現実だったよ。体が覚えてる」

さちは笑いながら、そっと自分の腕をさすった。



放課後。
久しぶりに三人は、いつもの“トレーニングルーム”に集まっていた。

窓から差し込む光は、夏よりも少し柔らかくなっているようだった。

「今日は軽めにしよっか。学校、始まったばっかりだし」

「うん。でも、また新しい目標を立てたいよね」

そう言ったユキの一言で、三人は自然とホワイトボードの前に並んだ。
その横には、大きな鏡が立っている。

さちは、ふと鏡に映る自分たちを見て、小さくつぶやいた。

「……なんか、変わったよね、私たち」

ハルが腕を上げて、自分の肩に触れる。

「肩の形、前より丸くなった気がする。昔は“女の子らしく”って思ってたけど、今はこの筋肉がちょっと好きかも」

「背中も締まってきたし……お腹も」
ユキも鏡を見ながら、そっと自分の体を確かめた。

さちは腹筋のあたりに手を置いて言った。

「前は、すぐに諦めるタイプだった。でも、今はちょっと違う気がする。お腹の線も、がんばってきた証みたいで」

鏡の中の三人の姿には、確かに変化があった。
肩や腕、お腹にうっすらと力強さが感じられ――そのすべてが、続けてきた日々を物語っていた。



「……ねえ、中学でも一緒にがんばろう」

ユキの声に、ふたりが静かに頷いた。

「私は、水泳を続けたい。もし中学に部活がなかったら、スクールでも。もっと速くなりたいから」

「私は、体を鍛えるのも続ける。高校生になったとき、“やってきた人の体”って言われたい」

さちは少しだけ間を置いて、ゆっくり言った。

「……私は、ふたりみたいに泳げるようになりたい。ちゃんと“勝てる自分”になってみたい」

「じゃあ、目標を書こう」

ハルがマーカーを取り出す。
三人で考え、ホワイトボードに書かれたのは――

『中学1年の終わりに、自分史上最高の体と心でいよう』

「“大会で優勝”とか“何秒出す”っていうのも大事だけど、いちばんは“自分の最高”だよね」

「うん。自分で“これだけがんばった”って、胸を張れることがいちばん大事だと思う」

三人は、それぞれ鏡に映る自分を見ながら、そっと微笑んだ。

――あの夏が終わっても、努力は終わらない。
その先に待つ、自分たちだけの“未来”のために。
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