絆のトレーニングノート:始まりの春、強さの種

たまに何かを書く人

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第2章 初レースと手にした自信

第二節 結果と、わたしの答え

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金曜日の午後、6時間目。

体育の先生が教室に入ってくると、生徒たちの視線が一斉に集まり、教室がざわめいた。

「体力テストの結果、返しまーす!」

さちは、胸の奥で小さく鼓動が高鳴るのを感じた。数日前、全力を出し切ったあの日。筋肉痛が何日も続いたけれど、それさえ少し誇らしかった。

配られた紙を、そっとめくる。

「……B」

ほんの少し、肩が落ちた。でも、すぐに思い出す。最後まで走って、起き上がって、握って、跳んだ自分の姿を。

(Aじゃなかった。でも、逃げなかった)

「わたし、ちゃんとやったよね」

隣の席で、ハルとユキが紙をのぞき込んできた。

「おっ、私たちもBだったー!」

「やっぱAは難しいね。でも、Bって“優れてる”の評価だよ?」

さちは少し驚いたように言った。

「えっ、ふたりでもBなの?」

「そりゃそうよ! Aは一部のスーパー中学生とかでしょ? Bは十分立派な結果だよ」

ユキが穏やかに笑って言った。

「……なんだ。じゃあ、Bのわたしたちって、めっちゃいいチームじゃん」

三人は目を見合わせて、同時に笑った。

***

家に帰ると、リビングには母・真由美の姿があった。今日は少し早く帰ってきたらしい。

「おかえり、さち。……体力テストの結果、出た?」

「……うん、Bだった」

真由美は少し目を見開き、やがてやさしくうなずいた。

「そう……がんばったんだね」

「うん。すごく。全部、全力でやったの」

さちの声には、迷いがなかった。

真由美は立ち上がり、そっと娘の頭に手を置いて言った。

「ありがとう。がんばってくれて、ありがとうね」

その言葉が胸に染みて、さちはほんの少しだけ涙をこぼした。

「ねえ、ママ。明日も、トレーニングしていい?」

真由美はにっこりと微笑んで答えた。

「もちろん。あなたがやりたいなら、何度でも」

***

その夜、ハルとユキの家でも、ふたりは結果を見せながら両親に報告していた。

「Bだったよ。でも、あとちょっとでAだったんだ」

「ねえ、パパ、ママ。わたしたち、どうだったと思う?」

「……最高だったと思うわよ」母・あかねが言った。

「それに、最近ふたりが努力してる姿を見て、僕たちも夜にウォーキングを始めたんだ」と父・たくみが笑う。

「えっ、ほんと?」

「うん。きっと、君たちに影響されたんだよ」

家族全員で笑い合う、そんなひとときが、ふたりにとっては何よりもうれしかった。

***

その夜、さちのノートに新しいページが増えた。



体力テスト結果:B判定
でも、最高の“成長”があった。



ページの端には、三人で考えた次のテーマが書かれている。

「この夏、スイミングで50mを楽に泳ぎきる!」

また、新しい挑戦が始まろうとしていた。

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