余命の残りを大切な人にくれてやります

きるる

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言うか言わないか 1





倒れた日の翌日。何故かスーランは継続して夫婦の寝室に寝かされていた。


あれから執務室奥の仮眠室でバウデンからたっぷり魔力をもらい、気を失っている間に屋敷に連れ帰られていた。

そのまま朝までぐっすりと睡眠を貪ったので、次の日には問題なく仕事に行けたはずなのに、バウデンからもう一日休息だと言われ許可が下りなかったのだ。

呪いの消滅可能な方法をガブリアルノに報告しなければと伝えても「記録をキリウにやらせていただろう。大まかには理解している。明日でも十分だ」と言われてしまえば、まあそうかとスーランは部屋で怠惰に過ごし食事も寝台の上だったのだが。


「…いや、流石に自分で食べれますよ。もう体も動けますし」
「起こした時は最後まで責任を取るんじゃないのか?」


バウデンがパン粥を掬い、スーランの口元に持ってきている。

以前言った責任取れ発言を存外に根に持ってるなと思いながらも、楽な方へ流れることを得意とするスーランは、まあ良いかと口を開けると温かいふわりとしたものが口の中に広がった。

本調子でないとのことで作ってもらった消化の良いパン粥はほんのり甘く、胃に優しく温かさが染みてくる。スーランは風邪の時はこれが良いなと思い、もうそんな時間もないかと一人突っ込みをしながら目を閉じ口を開けて待っているとなかなか次がやってこない。

給餌のタイミングよろしくないぞと目を開けると、バウデンが目を丸くしてこちらを見ている。


「もっとください。ちゃんと最後まで責任持って世話してくださいよ」
「…案外楽しいものだな」
「はい?」


何がと聞く前にほんのり甘いパン粥が口の中にほわりと放り込まれ、バウデンはこれが今日の俺の仕事だとばかりに絶妙な間隔でパン粥を食べさせてくれた。

そもそも本物の仕事はどうしたのかと思ったが、最近忙しかったので休みを取ったらしい。

水分も摂りお腹いっぱいになってうとうとしていると、寝台端に座ったバウデンがさらりとスーランの頭を撫でてくれた。

最近共に眠るようになってからバウデンはことある事にスーランの頭を撫で髪を綺麗だと褒めてくれる。毛先だけ整えた琥珀色の髪を一房摘みくるりと回し、時に顔に近づけて香りを嗅いだりと何度も繰り返している。


「綺麗な髪だな。香りも良い」
「シュナの香油最強」
「保てよ」
「もう少し短くても―――」
「駄目だ。この長さだ」
「はいはい」


バウデンは長い髪がお好みなのだろうか。
テレサの時もこうやって――――と思ったところでまた胸がしくしく痛み出したのでスーランはすぐに考えることを止める。


「…頭も撫でてください。せっかく大きな手をしているんですから、活用しないと」
「お前な…」


バウデンは溜息を吐きながらもスーランの願い通り額から頭頂部にかけてさりさりと、そして蟀谷から頬、耳の後ろまで愛でるように優しく撫でてくれるのがとても嬉しくて気持ちが良い。

スーランはそのままうとうとしながらバウデンの頭撫でを堪能した。



*************************



翌日、朝一でスーランはバウデンと魔術隊長の二人と共に王宮の謁見室で報告をしていた。


「―――というわけで、キリウの記録からの私の見解になります」


ガブリアルノは頷き悩ましい表情をしながら額を撫でた。


「そうか。…スーラン、魔力の方はもう問題なく?」
「はい。総帥にたっぷり補給してもらったので体は元気ですよ」


何を以て補給したのかを理解したバウデン以外の全員が目を彷徨わせる。当の本人は無表情で堂々とした出で立ちだ。

ガブリアルノは恐らく小さくなった器の魔力量のことを言いたかったのだろうが、聞けないので少し濁してきたところをスーランはあっちの方向にさりげなく持っていった。


「…うん、そっか。…さて、全体の話はわかった。それでスーラン、実際突然変異した呪いに直接侵入された経緯、どう考える?」
「総帥達が治療魔術を施した時、促進はされても残滓の動きは一律であり変わらなかったとのこと。私が指先に魔力を込め攻撃魔術を編み出している最中に異なる動きをしたと言うことは、それに反応…駆除に動いたのかもしれません」
「攻撃魔術だけに反応…」
「はい。治療魔術は促進させ悪化の一途を辿る。防御魔術は試していませんが無効と仮定するなら、攻撃魔術が己を消滅させるものだと認識して、その前に攻撃を仕掛け撲滅させる為に動いたと考えるのが妥当かと思われます」
「…なるほどね。残滓はもう無いからなぁ」


特殊部隊が根城を探しているがまだ報告は上がっていない。それがあればもっと詳しく調べて対応策が取れるのだが。





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