余命の残りを大切な人にくれてやります

きるる

文字の大きさ
98 / 110

番外編:使用人は見た!公爵家夫妻の情事と癒しの現場【限定婚姻編】5






「キリウ様?」
「しっ…!」


グェンが本日の仕事をそろそろ終えようとしていた時。
二階の階段付近から奥の廊下を覗くキリウの姿が。どう見ても怪しいその行動に声をかけると、人差し指を口に当て「絶対面白くなる展開…!」と目を輝かせていた。

実年齢より大人な雰囲気のキリウではあるが、スーランが関わった時にはまるで年の離れた弟のように表情を幼くし、ちょっと悪戯っこなモードになるのが使用人達にはとても新鮮だった。

キリウが人差し指はそのままで、もう片方の手で廊下の奥を指差す。グェンは頷きこっそりと死角から廊下を覗くと、バウデンの部屋の前で揉めている二人。


「昨日散々搾り取っただろうが」
「昨日は昨日です。今日は今日。魔力でなく単なるムラムラの方です」
「…お前な」
「ちょっとやらしてください。ちょっとだけ」
「その辺で食い散らかす雄のような言い方を止めろ」
「失礼ですね。食い散らかすだなんて。しっかり残さず食べてます」


この状態のスーランではバウデンは到底勝てそうにない。わざとらしく重い溜息を吐いたバウデンにスーランがこてんと首を傾げた。


「あれ。もしかして、勃たない感じですかね」
「……は?」
「いや、バウデンさんが言うように確かに昨日沢山いただきましたし。でも実はそれなりに――――」
「…それなりに、何だ」
「いえ、わかりました。今日は我慢するので数日間溜めといてください」
「…おい」
「バウデンさんとの性交マジ気持ち良いんでちょっと調子乗ってました。すみません」
「おい、何か勘違いして――――」


スーランが厳かに首を振り人差し指を左右に揺らす。


「今夜はゆっくり寝てくだ―――」
「おい」


ここでバウデンが去ろうとしたスーランを抱き上げた。


「私が性交できない状態だとでも?」
「雄は見栄を張りたいものです。何も言わずとも―――」
「毎日でも勃つと言っている」


そう言ってバウデンの部屋の扉が開き、中に入る瞬間。
キリウとグェンが確かにその目で見た。

スーランがしてやったりとした昏い笑みを溢しているのを。

パタンと扉が閉じられ、キリウが噴き出した。


「ふふ。あれに関してのスーランさんは狡猾だなー」
「押して駄目ならってやつですね」
「本当にスーランさんは父上を人にしてくれる。それが僕は嬉しくて仕方がない」


キリウは完璧で隙の無い父親の変化をとても喜んでいる。
公爵家の重責を担ってきた父親が人として素に戻れる瞬間がスーランとの時間だ。


「あー気分良い。グェン、寝る前にちょっと良い酒一杯だけ飲んでから寝たいな。付き合ってくれる?」
「喜んで」


グェンは最近イーガンから貰い受けた葡萄酒をキリウにご馳走しようと共に階下を降りていった。


****************


「カイザ?どうしました?」
「だ、…旦那様からローブをイーガンさんに持ってこさせるように、と」


本日スーランが予てからの友人と飲みに行くという話を聞き、イーガンは一応全体の概要と迎えに行くという内容を主宛に手紙を出した。その後主が迎えに行くという内容の返信にイーガンは僅かに口元が緩む。

そして今しがた馬車の音で戻ってきたことはわかったが、戻ってきたのはカイザだけ。そして何故かローブを所望されている。

それで大体のことを察知したイーガンは、寒さではないだろう顔を赤くしているカイザに「大変だったな、色々と」と労いの言葉をかける。


「いや、…いえ。それは良いんですけど、…恐らく酔っていらっしゃるスーラン様先制って感じだとは思うんですけど…旦那様の―――声色がとても優しかったので、何だか余計に恥ずかしくなってしまいまして―――」
「そうか。もう上がれ。後は私が対応する」
「っ、了解です」


それなりに馬車も揺れただろうし声も漏れただろう。娼館が開いていれば良いが、あのままではカイザが流石に可哀想である。

イーガンは濡れてもあまり目立たない大きめのローブを取り出し、馬車に向かう。
馬車の外からノックし声をかけると、あと半刻後に戻るから湯を入れとけとのお達しだ。スーランの声は聞こえない。

その先も予想したイーガンは少し開いた扉からローブを渡し、ドリスにスーランの部屋に湯を入れるように命じた。戻らないスーラン達と車庫に入らない馬車。ドリスは頬を染めながらも「承知致しました」と嬉しそうに戻っていった。

一応カイザが一番の被害者だろうことで、主には苦言として伝えたが報酬を渡しておけと言った主はとても心から満たされたような、今まで見たことがない良い表情だった。





あなたにおすすめの小説

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした

こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】 伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。 しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。 そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。 運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた―― けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった―― ※「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【R18】熱い夜の相手は王太子!? ~婚約者だと告げられましたが、記憶がございません~

世界のボボブラ汁(エロル)
恋愛
激しい夜を過ごしたあと、私は気づいてしまった。 ──え……この方、誰? 相手は王太子で、しかも私の婚約者だという。 けれど私は、自分の名前すら思い出せない。 訳も分からず散った純潔、家族や自分の姿への違和感──混乱する私に追い打ちをかけるように、親友(?)が告げた。 「あなた、わたくしのお兄様と恋人同士だったのよ」 ……え、私、恋人がいたのに王太子とベッドを共に!? しかも王太子も恋人も、社交界を騒がすモテ男子。 もしかして、そのせいで私は命を狙われている? 公爵令嬢ベアトリス(?)が記憶を取り戻した先に待つのは── 愛か、陰謀か、それとも破滅か。 全米がハラハラする宮廷恋愛ストーリー……になっていてほしいですね! ※本作品はR18表現があります、ご注意ください。