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番外編:使用人は見た!公爵家夫妻の情事と癒しの現場【限定婚姻編】5
「キリウ様?」
「しっ…!」
グェンが本日の仕事をそろそろ終えようとしていた時。
二階の階段付近から奥の廊下を覗くキリウの姿が。どう見ても怪しいその行動に声をかけると、人差し指を口に当て「絶対面白くなる展開…!」と目を輝かせていた。
実年齢より大人な雰囲気のキリウではあるが、スーランが関わった時にはまるで年の離れた弟のように表情を幼くし、ちょっと悪戯っこなモードになるのが使用人達にはとても新鮮だった。
キリウが人差し指はそのままで、もう片方の手で廊下の奥を指差す。グェンは頷きこっそりと死角から廊下を覗くと、バウデンの部屋の前で揉めている二人。
「昨日散々搾り取っただろうが」
「昨日は昨日です。今日は今日。魔力でなく単なるムラムラの方です」
「…お前な」
「ちょっとやらしてください。ちょっとだけ」
「その辺で食い散らかす雄のような言い方を止めろ」
「失礼ですね。食い散らかすだなんて。しっかり残さず食べてます」
この状態のスーランではバウデンは到底勝てそうにない。わざとらしく重い溜息を吐いたバウデンにスーランがこてんと首を傾げた。
「あれ。もしかして、勃たない感じですかね」
「……は?」
「いや、バウデンさんが言うように確かに昨日沢山いただきましたし。でも実はそれなりに――――」
「…それなりに、何だ」
「いえ、わかりました。今日は我慢するので数日間溜めといてください」
「…おい」
「バウデンさんとの性交マジ気持ち良いんでちょっと調子乗ってました。すみません」
「おい、何か勘違いして――――」
スーランが厳かに首を振り人差し指を左右に揺らす。
「今夜はゆっくり寝てくだ―――」
「おい」
ここでバウデンが去ろうとしたスーランを抱き上げた。
「私が性交できない状態だとでも?」
「雄は見栄を張りたいものです。何も言わずとも―――」
「毎日でも勃つと言っている」
そう言ってバウデンの部屋の扉が開き、中に入る瞬間。
キリウとグェンが確かにその目で見た。
スーランがしてやったりとした昏い笑みを溢しているのを。
パタンと扉が閉じられ、キリウが噴き出した。
「ふふ。あれに関してのスーランさんは狡猾だなー」
「押して駄目ならってやつですね」
「本当にスーランさんは父上を人にしてくれる。それが僕は嬉しくて仕方がない」
キリウは完璧で隙の無い父親の変化をとても喜んでいる。
公爵家の重責を担ってきた父親が人として素に戻れる瞬間がスーランとの時間だ。
「あー気分良い。グェン、寝る前にちょっと良い酒一杯だけ飲んでから寝たいな。付き合ってくれる?」
「喜んで」
グェンは最近イーガンから貰い受けた葡萄酒をキリウにご馳走しようと共に階下を降りていった。
****************
「カイザ?どうしました?」
「だ、…旦那様からローブをイーガンさんに持ってこさせるように、と」
本日スーランが予てからの友人と飲みに行くという話を聞き、イーガンは一応全体の概要と迎えに行くという内容を主宛に手紙を出した。その後主が迎えに行くという内容の返信にイーガンは僅かに口元が緩む。
そして今しがた馬車の音で戻ってきたことはわかったが、戻ってきたのはカイザだけ。そして何故かローブを所望されている。
それで大体のことを察知したイーガンは、寒さではないだろう顔を赤くしているカイザに「大変だったな、色々と」と労いの言葉をかける。
「いや、…いえ。それは良いんですけど、…恐らく酔っていらっしゃるスーラン様先制って感じだとは思うんですけど…旦那様の―――声色がとても優しかったので、何だか余計に恥ずかしくなってしまいまして―――」
「そうか。もう上がれ。後は私が対応する」
「っ、了解です」
それなりに馬車も揺れただろうし声も漏れただろう。娼館が開いていれば良いが、あのままではカイザが流石に可哀想である。
イーガンは濡れてもあまり目立たない大きめのローブを取り出し、馬車に向かう。
馬車の外からノックし声をかけると、あと半刻後に戻るから湯を入れとけとのお達しだ。スーランの声は聞こえない。
その先も予想したイーガンは少し開いた扉からローブを渡し、ドリスにスーランの部屋に湯を入れるように命じた。戻らないスーラン達と車庫に入らない馬車。ドリスは頬を染めながらも「承知致しました」と嬉しそうに戻っていった。
一応カイザが一番の被害者だろうことで、主には苦言として伝えたが報酬を渡しておけと言った主はとても心から満たされたような、今まで見たことがない良い表情だった。
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