大好きな人に番が現れたので潔くセフレ離れします

きるる

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夢現と現実 1

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数日前から少し調子がおかしいとは感じていた。
何となく喉に痛みがあり、その晩は少しの倦怠感も出てきたので市販の薬を飲んで早めに寝た。

翌朝喉の痛みは強くなっていたが、倦怠感は緩和されていたので仕事に出かけたが、後半にかなりしんどくなってきた。

帰りに薬局で熱冷ましを購入して何とかお腹に食べ物を少しだけ詰め込み薬を飲んで休んだが、翌朝それが緩和されることはなく、イリエは少しふらつく体で家を出た。

今日を何とか乗り越えれば明日は休みだ。イリエは少しぼーっとする頭で気合いを入れ食堂に向かった。

昼の準備が出来た頃、ダンジがいつもの野太い声でイリエを呼んだ。


「イリエ」
「はーい」
「お前今日はもう帰れ」
「はい?」


突然の帰れ宣言にイリエはポカンと呆ける。


「お前数日前から調子良くなかっただろ」
「え、何でわかったんですか?」
「仕事はいつも通り頑張って無理していたが、時折喉付近をしきりに触れていたからな」


ダンジの言葉にイリエは無意識に喉の腫れ具合など気にしていたらしい。


「明日休みだからって何とか今日まで無理してたんだろうが。帰れ」
「で、でもこれからが一番忙し―――――」
「私が居るから大丈夫だよ!」


厨房の奥から声が聞こえ、イリエがそちらを見ると、そこには快活に微笑むふくよかな年配の女性、ダンジの妻のマリーが立っていた。


「女将さん!もう腰は大丈夫なんですか?」
「ああ。心配かけたね。大丈夫だって言っても旦那がなかなか家から出してくれないんだから困ったもんだよ」
「そう言って無理して再発したらどうするんだ」
「あんたねぇ、それが結局のところイリエが無理してこうなったら意味ないでしょ!」
「う、うむ…」


強面元騎士隊のダンジもマリー相手には形無しだ。
マリーはイリエが働き始めて半年過ぎた頃に慢性的に腰を痛めていたらしいが、それでも働いていたところ無理が祟って悪化してしまい入院レベルになってしまったのだ。それからのダンジの心配性は拍車がかかったらしい。

そんな夫婦の関係はとても素敵で、イリエは食堂に雇われた当初この二人の厳しくも温かい人柄に本当に感謝しているのだ。


「それに何?さっきの帰れ発言は。イリエのおかげでこんだけ客が捌けるようになったのに、いつもありがとうの一言もないなんて!」
「…わ、悪い。イリエ、いつも助かっている。ありがとな」
「ふふ。とんでもないです。私こそいつも居心地の良い職場と美味しい賄いに感謝しています」
「ほら。もう今日は帰りな。昼の準備してくれただけで十分。イリエが休みの時は昼間もちょこちょこ出るようにはしていたから問題ないよ。そろそろ本格的に動かないと身体が訛っちまうよ」


せめて昼時の客がある程度引くまではと思いはしたが、ここで無理をして次に響いたら本末転倒だ。

それにもし今日の昼にフェリウスが訪れてあめ玉の包み紙を渡されたら。断りたくないのに断らなくてはならない。万が一風邪が移りでもしたら大変だ。それだけは避けたかった。

使えない都合の良い女なんて何の役にも立たないのだから。


「では今日だけお言葉に甘えさせてもらいます、ありがとうございます」
「こっちこそいつもありがとね!これ持って帰りな」


そう言ってマリーは賄いを二種類も用意し持たせてくれた。

イリエは帰り際に医院に寄り、薬をもらって帰った。

喉の風邪らしく、今夜は熱が上がるだろうが明日以降喉の痛みと共にひいていくだろうとのことだった。

帰宅後、軽くシャワーを浴びてから少しだけ朝の残りのパンを齧り温かいミルクティーを飲んだあとに薬を飲みイリエはすぐに寝台に入った。賄いは明日いただくことにしよう。



熱い吐息と倦怠感に目が覚める。ゆっくり体を起こし外を見るともう真っ暗だった。医師の予想通り熱が上がっていた。

イリエは季節の変わり目に風邪をひきやすい傾向にある。今はちょうど寒さが増した冬の手前だ。


「きっつー…」


ズキズキする喉と、ふらふらする頭を押さえながら、イリエはゆっくりと寝台から降り、冷蔵庫から果実水を汲んで飲み干すが嚥下するごとに喉が痛む。

夜の薬を飲む前に胃に何か入れなければと思うのだが、食欲がどうしても湧かずに賄いを始め何も喉を通りそうにない。


「…喉越しの良い冷たいものでも、買っておけば良かった」


医院に行った時点で正直なところかなり体調は悪く、何か買って帰る元気はもう残っていなかったのだ。

テーブルに薬と水を置き、さてどうしようかと悩んでいるとドアのチャイムが鳴った。


(こんな時間に誰?)


時刻は夕飯時だ。配達も頼んでいないし、この時間に誰かが訪れることは滅多にない。

いっそのこと居留守を使いたいが、起きてから明かりを灯してしまっているので、それもできない。もう一度鳴るドアチャイムに、はいはいと小さな声でぼやきながらイリエは玄関に向かう。


「どなたですか?」
「俺」


少し掠れた低音が返ってきてイリエは驚愕した。


「…え?」
「開けろ」


その言葉にイリエは恐る恐るドアを開けた。
そこにはラフな格好のフェリウス。


「え、え、どうしたんですか?今日は―――」
「食堂の女将から聞いた」
「…ぇ」


フェリウスはそれだけ言うと、イリエの許可無くずんずんと中に入っていった。

その姿を呆然として見ていたイリエだが、流石に今夜だけは体の辛さもそうだが、フェリウスに移すわけにはいかない。


「あ、あの」


フェリウスはイリエの言葉に答えることなく、何やら大きい買い物袋をどさりとテーブルに置いた。それでもイリエは声をかける。


「あの、私風邪みたいで、医院で薬もらって、それで、あの…、今夜は流石に、…レオダッドさんに移してしまったら、大変なので、だから―――」
「俺がそこまで鬼畜に見えるのかお前は」


眉を僅かに顰めたフェリウスは袋の中身を出していく。イリエとしては性交目的でないのなら、逆に何故家に来たのかと首を傾げ疑問に思っていると、彼が置いて並べていくものを見て目を瞠った。





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