大好きな人に番が現れたので潔くセフレ離れします

きるる

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セフレ離れの先には 1

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あまりに都合の良い夢。
リアル過ぎるフェリウス。
触れ合う温かさと唇がぽってりしてしまうほどの数多に啄まれる口づけ。

イリエの我儘を聞いて肯定してくれたことで、強固に固められていた心の殻が解放感と共に瓦解していった。更に今までにない量の酒を飲んだことから、イリエの意識は段々と薄れていく。

睡魔に襲われ眠りたくないとイリエは小さく唸りながら拒むが「覚めない夢だから眠って良いよ」と頭を撫でられながら大好きな掠れた低音で諭され、そっかと納得して安心してすとんと眠りに落ちた。


温かい安心できる何かに包まれながら、揺蕩う意識の中でどこかで聞いたことがある渋みのある声や、綺麗な声なのに勇ましい話し方、坊ちゃまと連呼する声など様々な声が耳に届くが、イリエの脳内はふわふわしていて上手く処理が出来ない。

暫くすると背中からふわりと柔らかい場所に降ろされた。包まれる温かさから離れたくなかったイリエは何とかしがみつこうとすると、ふっと笑う声が聞こえた後に「目元冷やすだけ。一緒に眠るんだろう?」と言われ頷いて手を離した。程なくしてひやりと目元に布が当てられ、イリエは気持ちよくてほうっと溜息を吐きながら意識を沈める。

ふと大好きな人の石鹸の香りがして、再度包まれた温かみにすりすりと鼻を寄せる。時折口や頭に柔らかく温かい何かが触れ、やがて頭上から規則的な呼吸音が聞こえイリエも共に深い微睡みに委ねていった。







「夢…」
「この先ずっと継続」


イリエは現状に呆けていた。

酒をそれなりに飲んだとはいえ、いつもの習慣でイリエは朝早い時間に目覚めた。

いつもと違う風景と寝台の感触。
何より驚いたのは目の前に薄いグレーの夜着が見え顔を上げると居るはずのないフェリウスの寝顔。

勿論イリエは現時点で酒は抜けており、正常に頭は稼働しているはずだ。

それでもフェリウスとさよならしたことで、ちょっと頭がおかしくなったのかもしれないと頬を摘もうとすると、それを阻む節くれだった長い指先が止めた。

イリエの大好きな手。そして落ちてくる甘い掠れた低音。


「ほっぺ痛くなる」
「…あの、ここは」
「俺の部屋。侯爵邸の」
「……侯爵、邸っ……!」


居場所がまさかの侯爵邸にイリエは驚愕する。
動揺するイリエに「俺の話を聞いて欲しい」とフェリウスの軽い口づけが落ちてきた。

夢と同じ…いや、実際は現実であり今もそうなのだが、急展開過ぎる状況と目の前にいるフェリウスのあまりにも優しい見たことのない表情と口づけに、イリエはぽぽっと頬を染めてしまう。

更にその顔を見たフェリウスの愛おしいとばかりに片眉を僅かに下げた表情を目の前で素面で見てしまったイリエは鼻血が出そうになり、鼻を咄嗟に押さえた。

その手も優しく解かれ、また何度も唇を啄まれながら切なそうに顔が僅かに歪み、「ごめん。沢山苦しませて本当にごめん」とフェリウスは言う。

昨夜の夢だと思っていた馬車の中でも何度かそう言っていたことを思い出し、イリエは何故そんなに謝るのかわからなかったので、取り敢えずフェリウスの話を聞くことにした。




寝台に寝転んだままで聞いたのは、イリエにとって天地がひっくり返るような思いも寄らない数々の出来事であった。

初めこそイリエに対しおざなりな態度を取っていたが、早い段階で無意識に気になり始め、いつの間にか頭の片隅に存在する状態というフェリウスからすると稀な現象であったこと。

過去関わった女性全員から狂ったように求められ、そうなる要因が自分にあるのかすらわからず、イアンからも疑問を持たれていた。それ以降女性というものは姦しく身勝手で鬱陶しいという認識であった為、真逆に位置するイリエの言動や行動がとても不可解で気になってしまい、好意だと気づく頃にはもうどうしようもなく溺れていたのだという。

イリエとしては惚れた弱みであまり意見にもならないが、確かにフェリウスの怜悧で整った顔立ちと切れ長の銀色の瞳の美しさ、少し掠れ気味の艶のある低音に均整のとれた体型と長身、指先が長く綺麗な手など数えたらきりがない。つれない態度や話し方、仕草も全て魅力的に映ってしまうのだから。


「まともな恋愛なんてしたことがなかったから、イリエを想う感情が他と違い過ぎてどう対処すれば良いかすら分からなかった」


その未熟さ故に行動も態度も改めなかったことでイリエを沢山我慢させてしまったとフェリウスは吐露する。

イリエからすれば、初めこそちょっときつい言葉を言われたり粗雑な扱いはあったが、それらは全て覚悟の上で望んだことだ。それに途中から口調こそつれなかったが、性交中イリエを扱う手も、少し意地悪でも優しい言葉もかけてもらい全然不快とすら思っていなかった。


イリエがそう返しても、フェリウスはどうしても自分の高慢さを許せないのだと言った。

イアンや、両親、街で偶然出会ったララ達からの言葉で、ようやく動き出したフェリウスがイリエに向き合いちゃんと自ら告白をしようと思って誘ったあの日、何の因果か番の相手に出逢ってしまったのだ。





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