大好きな人に番が現れたので潔くセフレ離れします

きるる

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番外編:坊ちゃま黒豹と無自覚子栗鼠のとある一日 3

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「皆お疲れ様。私の可愛い娘になったイリエだよ」
「旦那様、些か言葉が足りないかと。フェリウス様の名前が入っておりません」


華麗な突っ込みをするジュダ。そして外ではちゃんとフェリウスの名前で呼ぶのだとイリエは新しい発見を得る。

誰もがポカンとして驚き固まっている。
そしてイリエも流石にこの位置から挨拶するのはと思っていると、カルロが微笑みながらふわりとイリエを下ろしてくれた。

未だに開けた時からのまんまの状態でいる暗部部隊の面々に少し緊張しながらもイリエは小さいながら胸を張る。


「改めまして、お初にお目にかかります。カル…統括総帥様にご紹介いただいた…フェリウスさんの伴侶、のイリエと申します。よろしくお願いします」


伴侶という言葉にイリエは未だに慣れず頬を染めもじもじしたくなるが、精一杯背筋を伸ばして挨拶し、ぺこりとお辞儀をした。

この時カルロ始め数人の隊員がイリエの頬を染めながらもじもじを耐え言葉を紡いでいる姿に悶えていたことは頭を下げているイリエは知らぬままだ。


後方からジュダの「適性な素晴らしい角度です」とお辞儀の褒め言葉をもらった。

イリエの挨拶にようやく周りも時が動き出したようだ。


「フェリウスの同僚のバルトガ・ライグンです。父は騎士隊統括総帥なのですが、能力的にこちらに向いていたのでお世話になっています」


一歩前に出て胸に手を当て優雅に一礼してくれたのは、眩いほどの金色の髪にシアン色の鮮やかな瞳の美丈夫だ。

公爵という立場で先陣を切ってくれた彼のおかげで雰囲気が和らぎ、それを皮切りにその場にいたメンバーが次々に挨拶をしてくれる。

その中には数名食堂で会ったことのあるメンバーも居て少し緊張が解れた。


「今日は私が彼女に我儘を言ってな。差し入れを頼んだんだ」


話しながら首を傾げてイリエを見たカルロに一つ頷いて暗部のメンバーに向き直る。


「三種類のサンドイッチの差し入れを作らせていただきました。お口に合うかはわかりませんが、手作りが苦手でなければどうぞ召し上がってください」


その言葉にジュダがテーブルの一つに軽々と持っていたバスケットを置く。カルロが少し体を屈めてイリエの耳元でこっそりと話しかけた。


「イリエちゃん。私は残念ながらタルカル食堂で元気に働く君を見たことがない。久しぶりに接客を見せてもらうことはできるかい?」


イリエは一つ瞬いた。
フェリウスの伴侶としてここまで来たが、それなりの緊張感はどうしてもあった。
そこにカルロから接客を見たいというお願いが。それは勿論彼の希望でもあるかもしれないが、イリエの緊張を和らげる為にお客としての対応ならどうかという粋な計らいに聞こえたのだ。

イリエはぱっと花が綻ぶように微笑んだ。


「はい!お任せください」


そしてジュダを見ると準備は出来ているとばかりにテーブルにはサンドイッチの他にナフキンと小さな紙袋を用意してくれている。手際の良さにイリエの笑みは深まった。


「…総帥。そういえばフェリウスは何処に行かれたんです?飛んできそうなものですが」


ふと素朴な疑問を持ったバルトガが近づきカルロにそっと尋ねる。


「ああ、息子が居たら間違いなくイリエちゃんを瞬く間に連れ去るのは目に見えているからね。門前に迎えに行く前にイアンと共に私の暗器の確認をさせに行ったんだ。半刻は戻らないだろう」
「なるほど。暗器の扱いは難しいですから手先が器用なイアンも一緒というところが、確実性を重視されている」
「イアンは聡いからね」


そう言いながらカルロはイリエがサンドイッチの説明しているところを優しい瞳で見つめている。


「サンドイッチはグリルチキンのタルタルソース、海老とアボカドのジェノベーゼソース、そしてグラタンコロッケの三種類です。王道ならグリルチキン、爽やかにいきたいなら海老アボカド、がっつり濃厚にいきたいならグラタンコロッケをお薦めします」


まるで食堂のランチのようだと思いながら説明を終えると、まずはカルロが注文をしてきた。


「では私は大好物のグリルチキンで頼むよ」
「承知しました!」


イリエは滑らかな動作でサンドイッチとナフキンを取り紙袋に入れてカルロに渡す。


「お待たせしました。ごゆっくりお召し上がりくださいね!」
「ああ。味わっていただくよ」


すると、バルトガが三つのサンドイッチを見ながら顎に手を当てる。


「うむ、悩みますね。全て食べてみたいのですが、バジルの香りが好きなので海老アボカドでお願いします」
「はい!」


先ほどもじもじしていたのがまるで嘘のようにてきぱきと動き出したイリエに周りは驚きながらもテーブル付近に集まり始めてきた。

何人かが同時に声が重なってしまうのを食堂での経験が生かされているイリエは一度で聞き取り、間違えずに的確に相手にサンドイッチを渡していく。


「ちょこちょこ食堂に行っていたんだよ」
「ご贔屓に感謝です!いつも三人で来られていましたよね」

「フェリウスが背が高いからでこぼこ夫婦で可愛い」
「ふふ。ミルクだけでは背はこれっぽっちも伸びてくれませんでした」

「もう食堂には戻らないの?」
「予定は今のところ無いです。女将さんの腰も良くなりましたし新しく入った人もだいぶ慣れてきたって聞いてます」

「実は俺の知り合いが君を狙っていたんだよ」
「まあ。食堂でちょこまかと動く様子が物珍しかったんでしょうね」

「小さくてマジで可愛い。羨ましいわぁ」
「ふふ。私も貴女のような綺麗で魅惑的な女性に憧れていました」


話してみたかったメンバーの言葉にも都度対応しながらもイリエの手の動きは止まらない。

それを少し遠くで見ていたカルロの元に、粗方手伝いを終えたジュダが気配もなく近づきこそりと囁く。


「旦那様の坊ちゃまへの所業、なかなかに人が悪い。…まあ私なら地下にある訓練所に誘い込みトラップを仕掛けて閉じ込めますが。一刻はもたせますね」
「はは!それに比べたらあまりイリエちゃんに関わらせてくれないフェリウスへの仕返しを半刻にしたのは私の優しさだよ。何よりイリエちゃんの為にもね。そう言えば何人かは未だにお前の存在に畏怖していたな」
「はて。もう遥か昔のこと。記憶にございませんね」


カルロが前線に出ている時に唯一共についてこられたのはジュダだけだった。カルロの右腕として敵国だけでなく味方ですら恐れられた伝説は未だに特殊部隊では語り継がれているという。





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