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番外編:お酒と獣化は程々に 1
しおりを挟む「呼び方と話し方?」
この日フェリウスはたまたま特殊部隊へ騎士隊からの書類を届けに来ていたララに出くわした。
以前から幼馴染みの彼女に聞いてみたかったことを思い出し丁度良いと声をかけたのだ。
二人は特殊部隊の門に向かって歩きながら話す。
「ああ。イリエは…君に対しては、君の番も含めて名前も呼び捨てで、話し方も砕けているだろう」
「名前で良いよ」
「ララ嬢?」
「嬢とかマジ無理。呼び捨てで。私もで良いよね?」
「分かった」
門前に着き、数分なら問題ないよとララが止まってくれたので話を続けた。
「私は元々小さい頃からずっと居て同い年だから。ジェフに関しては年上だけど私の番ということと、彼が甘えてる姿を見てるからどっちかと言うと姉的な目線で見てるんじゃないかな」
通常気怠げで興味というものがあるのかと思うくらい無関心なジェフの行動を思うと、どうにも想像が上手く構築出来ない。
「何度も呼び捨てと敬語を外してくれと言っているが、なかなか変わってくれない」
「んーまあ、フェリウスが年上なのもあるし、自分は平民で相手は格上の侯爵子息ってのもあるのかも」
「イリエも侯爵の一員だ」
「それでも元は平民だし、侯爵家族のおかげで貴族としてのあれこれさせられている訳ではないでしょ?」
確かにレリエル自身元々工作員だった為、侯爵夫人なんてクソ喰らえと宣言し年に一度の王宮舞踏会のみドレスは嫌々着るが、他で見たことは一度もない。
だが元工作員のレリエルは仕事柄任務の為か、そこいらの令嬢よりもいざとなった時の所作は美しい。…口を開かなければが前提ではあるが。
「だからこそ、そのままのイリエで居られることは親友の私としても嬉しいけど、まだ数月しか経ってないしおいおい変わっていくんじゃない?」
「…窮屈に感じていないか…それが原因でと思うこともある」
貴族のフェリウスにはわからないことだ。
ララは首を傾げながらうーんと唸る。
「私にはそう言ってないから思ってないと思うけど…弁えてとは無意識に感じているのかなーイリエのことだから」
そうなのだ。本人が意識していないところで内心感じていることが態度に出てしまっているのならフェリウスは何とか少しでもそれを和らげてあげたいし、ララとの会話のように屈託なく話す姿をフェリウスに対しても僅かにでも良いから見せてほしい。
憂うフェリウスの無表情の顔を見ながらララが一つ頷いた。
「一肌脱いでやる。時間限定にはなるけど」
その言葉にフェリウスは僅かに首を傾げた。
「時間限定?」
「そう。こればかりは直接言ったところで、はいじゃあこれからすぐ止めますねとはならない。でも本心はなんとなく聞けるかも」
「どういうことだ?」
「おい」
そこでララの腰から手が生えた…ように見えて腰に回してきたのはジェフだった。
「ララ、遅い」
「ちょっとフェリウスから悩みごとをね」
「…フェリウス…だと」
「イリエの伴侶だから特別。ジェフだってイリエって呼んでるじゃん」
「…」
ジェフは納得がいかないらしく、腰に手を回したままララの頭に頬を擦り寄せながらそっぽを向いている。見たことがない彼の行動にフェリウスは僅かに目を丸くするが、ジェフをそのまま放置したララはフェリウスに向き直った。
「飲みに行こう」
「飲みに?」
「許さん」
「ジェフも一緒だよ」
「許す」
「フェリウスと始めから一緒に居たら多分イリエはいつも以上に飲まないと思うから、私らが一刻ほど酔い潰れない程度に飲ませて気楽にさせておく。途中参加して聞いてみれば良いよ」
そこで以前イリエがララと飲んでいた時に、夢だと思い敬語を使わなかったことを思い出したフェリウスにララは頷く。
「人によって酒が入るとそれぞれ変化はあるけど、イリエは解ける系」
「なるほど」
「ララは見た目変わらない」
二人だけでしている会話が面白くないのかジェフが参入し始める。ララの頭に口を落としながら目を瞑る光景に些か驚くが、今のフェリウスにはその気持ちがとても理解できる。そうしたい気持ちがとても良くわかるからだ。
イリエがこうして誰か雄と話していたらフェリウスも間違いなく後ろから…いや、もう片腕抱っこをして首に顔を埋めながら立ち去っているだろう。
「でも中身が柔らかくなって口調が優しくなって撫でてくれるのが堪らない」
「はいはい。余計なこと言わなくて良いから。髪型崩れちゃうし流石にフェリウスが引くよ」
「無理」
「構わない。気持ちも行動も分かる」
「分かるのかよ」
「同類か。それならララと話すのを許す」
今まで許していなかったのかと思ったが、それすらも何となく理解できるのでフェリウスは突っ込まなかった。
「来週あたりで良い?」
「ああ。…協力に感謝する」
「最近イリエから聞く話は幸せなものばかり。フェリウスがそれなりに努力しているんだと思っているから」
「わかった。ララ頼んだ」
「ララだと…」
「だからジェフもイリエって呼んでるから」
フェリウスに軽く手を振ったララがそのままへばりついているジェフを半ば引き摺るように戻っていった。
*******************
「三日後の夕方からララ達と久しぶりに飲みに行こうと思っているんです」
数日後、湯を浴びた後のイリエからそう切り出された。
「そうか。外で会うのは久々だな」
「はい。行ってきても良いですか?」
「彼女達となら構わない」
その言葉に頬を緩めるイリエにフェリウスが指の背で緩んだ頬を撫でる。
「反対すると思ってた?」
「いえ」
「それくらいは我慢出来る」
「ふふ。我慢なのですか?」
「…違うな。妥協だ」
イリエは微笑み頬に触れていたフェリウスの手を小さな手で包んだ。
「気遣ってくれてありがとうございます」
イリエがフェリウスの手を取ってそこに口づけをする。
その仕草が尊くも煽られたフェリウスはイリエを抱き上げ軽い口づけをしながら寝台に移動していった。
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