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番外編:お酒と獣化は程々に 3
しおりを挟む「あれ。相方だ」
「こんばんはー。僕もお邪魔しても良い?」
「イリエに害が無いなら」
「ララに害が無いなら」
「酷いなー二人共」
本当にある意味お似合いの番二人にイアンが苦笑する。
そしてイリエはと言うと。
「…ララー?」
「はいよ」
「また夢?」
「ぷっ。前も夢じゃないでしょ。本物」
「本物…」
そう呟くとぽっと頬を染めるイリエが可愛くて仕方がない。
フェリウスはイリエの隣に、イアンはフェリウスの隣に座る。
「…どうしてここがわかったんですか?」
「ん?前から知ってた」
「前、から?」
とろんとした浅緑色の瞳とこてんと首を傾げる仕草に悶えそうになる。
「イリエちゃん、久しぶりー」
「イアン、さん…?お久しぶりです…」
「びっくりした?驚かそうと思って内緒にしてたんだよ」
「ない、ちょ…」
酒のせいか舌っ足らずなイリエにフェリウスだけでなくイアンも悶えそうになる。
「…やば。何これ」
「お前帰れ」
「嫌だね。これ絶対に楽しそうだし」
イアンはそう言いながら給仕に新しい酒とつまみを頼んでいる。
「そう言えばここの店どう?酒もつまみも美味いでしょ」
「うん。この葡萄酒も熟成された蒸留酒も最高」
「揚げ物とハーブチキンはマジ合格」
「あはは。それは良かった」
三人は揉めることもなく話し始めている間、イリエはぽーっとフェリウスを見ていた。
「イリエ?」
「驚きました…」
「驚かしたね」
そう言って熱く火照った頬を撫でると、目を伏せて気持ち良さそうにしている姿にフェリウスはこの時点でめろめろになりそうだ。
そこから暫くは楽しく過ごし酒が進んだ頃、ふとララからの視線で頷いたフェリウスは程良く酔っているイリエに話しかける。
「イリエ」
「っ、はひ?」
くぴりと葡萄酒を飲んでいたイリエが驚いたようにぴょいんと背筋を伸ばす。フェリウスはくすりと微笑んで少し顔を近づけた。
「イリエは俺のことまだ呼び捨てで呼んでくれないの?」
その言葉にイリエの浅緑色の瞳が揺れる。
「…呼び捨て」
「うん。フェリウスって」
イリエが少し目を伏せながら指をもじもじさせるのが、本当に子栗鼠のようで愛しい。フェリウスは細い指を大きな手で包む。
「…なんか実感というか、…恥ずかしくて、一緒に居られることが嬉し過ぎて悶えそうになって…上手く言えません」
その言葉にフェリウスが悶えそうになる。
「じゃあお呪いかけてあげる」
「お、まじない?」
イリエがこてんと首を傾げるのを見たフェリウスは、もう家にすぐ連れ帰って愛でたいのを必死に我慢する。
「うん。前にも酒飲んだ時に言いたいこと言えただろう?」
「言いたい、こと」
「何でも良いんだよ」
「良い…」
「もうずっと良いんだ」
そう言ってフェリウスはそっとイリエの目元を手で覆い、イリエの大好きな掠れた甘い声で囁く。
「何言っても、どう呼んでも、どう話しかけても、何でもずっと…良いんだよ」
言い終えたフェリウスはちゅっと軽い口付けをすると、イリエはポカンと口を開け、耳まで赤くなるのを、もうそのまま深く舌を入れてぐちゃぐちゃにしたくなるが、ぐっと我慢してゆっくりと手を外した。
「イリエ。名前呼んで?」
「フェぃ、ウ、ちゅ…じゃなくて、」
イリエの酔いが回り言葉を噛みまくる様子にフェリウスは顔を突っ伏したくなる。そしてその隣で聞き耳立てているイアンも顔を覆い、ララ達は慣れたものだ。
「フェ、ぅス……ふぇ、りゅ、す…フェ、ス?」
「っ…」
「あ。それ良いじゃん。イリエちゃんだけの呼び方。フェス」
「ふぇす…フェス」
「!」
「好きに呼んで、良いの?」
敬語ではない拙い言葉遣いと、酒で潤んだ瞳で見上げて請われて駄目と言える者がいるなら出会ってみたい。
しかもイリエだけが呼ぶフェリウスの名前。
「良いよ」
フェリウスは口を覆いながらなんとか平静を保って返す。
「呼んで良いんだって」
聞いて聞いてとばかりにイアンとララ達をきらきらとした瞳で振り返るイリエにイアンはテーブルに伏せてしまい、ララは「良かったね」と返しジェフはハーブチキンをあげていた。
これはやばい。
思った以上にクるとフェリウスは内心焦る。
嬉しいのだがそれ以上に恥ずかしいし顔を覆って首を振りたくなる衝動に駆られる。
フェリウスは半分程残っていた蒸留酒を一気に煽って落ち着けと自分に言い聞かせるのだが。
ジェフからもらったハーブチキンを半分に切ったイリエがフォークに刺してフェリウスに向き直る。
「フェス。半分こ。どぉぞ」
誰だ!イリエに酒飲ませればと言った奴は!
フェリウスがイリエの給餌に呆然としながらララを見ると、「いや大いに納得してたし」と返されぐうの音も出ない。
そして口にぴとりと付けられたハーブチキンと「あーん」と言われたイリエの言葉に思わず口を開けてしまいチキンをぽこんと入れられた。
ソースが少し口からはみ出してしまったのを指で拭ったイリエはそのまま自分の口にちゅぷんと入れて「ん、美味しい」なんて言うものだから、今までのいじらしさは偽物かと思ってしまうほどの変わりようである。
フェリウスは動揺しイアンの側にあった蒸留酒の瓶を自分のグラスに並々と注いで一気に飲んだ。
「おーい、フェリウス。流石にペース早すぎ」
「黙れ」
「こら。フェス?そんな言い方しないの。親友なんでしょ?」
更に無意識の追撃が放たれる。
窘めながらもフェリウスの頭を優しく撫でるイリエにフェリウスはもう我慢ならずひょいっと腰を持ち上げて膝に乗せ、首元に顔を埋め新しく二人で使っているムスキーサボンの石鹸の香りを堪能した。
「かわいいねぇ」
もう好きにしてくれ。
頭を撫でられながらも、これが現状のフェリウスの心境である。
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