トラウマ克服の為にクズに徹します

きるる

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終わらぬ悪夢 2




「うん。相変わらず綺麗な色と良い香りね」
「問題ない?」
「勿論。これ前回の分の報酬ね」


エリックが硬貨の入った巾着を渡してきた。


「毎度!最近までスーランの発注分と並行でやっていたから少なめだけど、来週あたりにあと五本くらいならいける。あとシダーウッドが入手出来ればエリックご愛用の香油も作れると思う」
「そうそれ。あと瓶の半分くらいしかないから作って欲しかったのよ」



シュナがこの国に来てユニュイスの酒場で出逢った治療魔術師のスーランは今では数少ない大切な友人だ。彼女もシュナの幼さの残る風貌が気になったようで話しかけてきた。

スーラン自身もシュナと目的が似通っていて、一夜限りの関係で魔力と快楽だけを求めて定期的にユニュイスに訪れていた。

長い琥珀色の髪を適当に纏めているスーランの垂れた藍色の瞳はいつも半分ほどしか開いておらず、化粧をしたら間違いなく化けるだろう整った容姿なのに面倒臭がりの無頓着で何もしていなかった。

彼女曰く化粧は分からないが性交時には化けるらしいから問題無いと欠伸しながら言っていた。


スーランは孤児だったが魔力量と魔術の能力を買われ、小さい時に魔術隊の寮に特例で入れてもらったらしい。

殆ど自分のことが出来ず寮の皆に世話になっているんだという怠惰な彼女は、何も出来ないというよりも能力が治療魔術師と薬の精製に特化しているといっても過言ではないほどの逸材だ。

ユニュイスで出逢った二人は互いがエリックと知り合いというところから始まって話が盛り上がり、その後も時々こうやって会うようになってから十年近く経つ。

シュナが現在髪の香油というものを精製して生活の基盤として稼げるようになったのは、ひとえにスーランのおかげだ。

シュナの生まれの国は魔術に疎く、魔力の何某かも良く分かっていなかった。―――学べる環境になかったことも。

そんなシュナにスーランは良い雄が居なかった夜や日中も時々時間を作ってくれて、基礎から魔力と魔術の知識を教えてくれた。

そしてそれらを教えている時のスーランの藍色の瞳はぱっちりと開きとても美しく格好良い。博識で初心者のシュナにわかりやすいように都度言葉を変えて教えてくれたり、必ず所々で応用編も付け足してくれるのだ。

そして性交による魔力を吸収する方法を教えてくれたのも彼女だった。こればかりはシュナも目から鱗で今まで勿体ないことをしていたと思ったものだ。

シュナの持つ魔力量や魔力の質、魔術の系統、シュナが昔から好きだった花に詳しいことから、花を精製して香水や香油などを作る技能が高いところまで突き詰めてくれた。

シュナはスーランから譲られた本や図書館や本屋で魔術や花の本を見て学び、髪の香油を精製出来るまでに上達し、仕事としてエリックの店で定期的に卸させてもらえるくらいまでになったのだ。



そしてスーランと最近飲みに行った時に聞いた衝撃の事実。

スーランは魔力の器というものが消滅してしまう病に罹っていて余命一年切っていた。

その残りの時間でやってみたいと思いついたのが王国三強部隊の一つ、魔術隊の統括総帥バウデン・ホークルとの半年間限定の婚姻だったらしい。

その後も色々あったがバウデンと番だということが判明し病も奇跡的に消え、今は限定ではない唯一の伴侶として仲良く暮らしているのだそうだ。

スーランから言えなかったことを謝られたが、シュナは首を横に振った。どうしようも出来ないことを誰にも言えない気持ちはシュナは痛いほど理解しているからだ。

シュナだって以前スーランから何となく過去を聞かれた時、弱みを見せたくなく強くありたいからと言わなかったのだからお互い様である。

今もこうしてスーランとお酒を酌み交わすことが出来てずっとこの先も友人として近くに居てくれる。更に番との巡り会いで彼女が幸せであることに、シュナは心から祝福していた。

ちょっと涙ぐみながらもシュナの香油をずっと使ってくれている美しい琥珀色の髪を撫で回した。

その後盛り上がった猥談に参加者が増え久々に笑い騒いだ。スーランの周りには逸材が多いようだ。


そして―――自分がこうなることは無いだろう未来に少しだけ羨ましいと思った。





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