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悪夢の元凶 2※※
シュナが十二歳の時だ。
ジュリアはアーロ・オスモと出逢い惚れ込んでしまう。
アーロ・オスモは類まれなる商才で一代で男爵を賜った人族の男らしい。
巷では美しく整った顔立ちだと言われすらりと背の高い優男風に見られるアーロは、貴族服を着こなし粋にシルクハットを被り、人当たりが良く柔らかに微笑む彼にジュリアは一目で夢中になった。
「シュリアナの新しいお父さんよ」
シュナの元の名前は『シュリアナ』だ。今ではもうその名はバロアス国籍を取る際に喜んで捨てた。
『シュリアナ。アーロだ。これからよろしくね』
そう言って微笑むアーロの瞳がどろりと濁っていたのを当時の無知だったシュナは気づかなかった。
新しい家に引っ越し、シュナの部屋は彼らの部屋から一番遠い場所だった。
商才で築き上げた割には大きくない家で、使用人も通いの者だけだった。「成功したと言ってもまだまだ駆け出しだからね。家のことはジュリアが全部やってくれるって言うから、あまり大きな家にはしなかったんだ」と微笑むアーロ。
彼の言葉に、まだ幼く頭の回らなかったシュナは、これでジュリアの聞きたくない声を聞かなくて済むとしか考えていなかった。
その後も時折アーロから向けられる視線が居心地悪く、シュナは極力二人には会わないように暮らし、再び行き始めた学校も遅い時間までいつも残っていた。
シュナが十三歳になった時だ。他の子よりも遅く月のものが始まり、シュナはお腹を温める為にいつも大好きなホットミルクを作って飲んでいた。
ある晩、アーロがシュナの好きだったホットミルクを作ってあげると自らミルクを鍋に入れて少しの砂糖を入れて作ってくれた。
何でシュナの好物を知っているのか疑問だったが、ジュリアは少しでもシュナとアーロが共に居ると嫉妬心剥き出しで、シュナを責めてくるのであまり一緒にいたくなかった。
それを見越したのか「今夜は体調が優れないみたいで部屋で休んでいるよ」とアーロから言われ、それならとホットミルクを手渡されて飲んだ。
その後いつの間にか眠ってしまったらしく、朝起きるとシュナは自分の部屋で寝ており、何故か体の節々が痛んだ。
体に違和感というか、少しだけ膨らみ始めた胸がひりひりしたり、体に痣のようなものが沢山あったり、用を足す場所がじくじくしたり、びしょびしょだったりどろりと白い液体がでたりして、シュナは月のもの用のパットをしながら過ごしていた。
ジュリアから女性の体の作りを聞くことも出来ずにシュナは悶々としながら過ごしていた。
そして日が経つごとに、そんな状態になる共通点がわかったのは決まってアーロからホットミルクを飲ませられた後だということに気づく。
それが確信を得たのは、そして衝撃の事実を知らされたのはジュリアが体調を崩し数日間入院をした時だった。
シュナはアーロとの接触も彼が作るホットミルクも避けてはいたが、それでも義理父として不自由無く暮らさせてもらっているので強く言えず、その晩にホットミルクを飲ませられたシュナは、いつもより甘みが多いなと思いながらも飲み干して直ぐに部屋に戻ろうとすると、何故かアーロに止められた。
「今夜こそ私と共にゆっくり過ごそう」
アーロの言葉に何を言っているんだと思ったシュナは断りその場を離れようとするが、急に頭がくらりとして体が揺れた。それを難なく支えられ抱き上げたアーロの表情にシュナは戦慄いた。
「ようやくシュリアナ…いや、リア。私だけが呼べる、私のリア。君をゆっくり可愛がってあげられる」
そう言って蕩けるように微笑むアーロの顔と瞳。
昔ジュリアの元に訪れ、じろじろ舐めるようにシュナを情欲の目で見ていた雄達そのもので。
それ以上にどろりと濁った瞳にシュナは戦慄き叫んで暴れようとするが、何故か声も掠れる程度で体も何故か動けなかった。
「ああ、大丈夫だよリア。媚薬にちょっとだけ弛緩剤が入っているだけ。これ最近流行っているんだよ。ちょっと嫌がる相手を静かにさせる為の。良い物が出来て私の懐も潤った」
とんでもない話を暴露されたシュナは瞠目し、その顔を見たアーロはどろりと溶けた瞳で顔を近づけてきた。
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