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前回のお礼を 3
公園から離れた露店でホットサンドと具沢山のクラムチャウダーを買い、シュナ達はイアンの部屋に向かった。
寝台以外に何もないので寝台の端に座り夕食を済ませる。
「これ」
シュナは持っていた香油の瓶を渡した。
「ありがと。僕のことを想ってどんな調合をしてくれたの?」
「イアンの髪の質と香り諸々のことだけを思って考えた結果、ブラックカラントとレモンの組み合わせなら良いかと思って。あとはレモンバームを少しだけ」
つれないシュナの対応に再度噴き出したイアンが瓶を受け取り、蓋を開けて香りを嗅ぐ。
「……ん、これ良いね。甘い感じだけでなく爽やかというかすっとする感じ」
「ベリー系が主体の香りだけど複雑にさせるグリーンノートが組み合わさることで深みが出て更にレモンの清涼さを加えると華やかな感じなのにちょっとミステリアスな香りに変わるの」
イアンが目を閉じながら香りをすっと吸い込んでいる。
「ああ、良いね…シュナから何をどう使用してこうしたって詳しく聞くと、より深みを感じて香りの判別がわかるような気がする。これ凄く気に入った」
そう言って微笑むイアンの表情は本当に嬉しそうだ。
シュナとしては小癪な相手ではあるが、面と向かってこうして香油を褒めてくれるのは素直に嬉しい。香油の代金を渡しながらイアンが尋ねてくる。
「ちょっとつけてくれる?どの程度使うの?」
瓶を差し出されたので、シュナは受け取り細い先端から少し振って数滴手に垂らした。
「イアンの髪の長さならこのくらいが一回分。湯を浴びた後でも出掛ける前でも良いよ」
手の平に乗った香油の量を見せてから瓶を置き、両手でまぶしてからイアンの桃色の毛先につけてから全体に馴染ませていく。
イアンは目を閉じて気持ち良さそうにしている。睫毛も長いし眉も綺麗で鼻筋もスッとしている。この孔雀に欠点無いのかと思いながらもシュナが髪を整えていく。
「そう言えば、この前起きたらもうシュナが居なくて寂しかったんだけど」
その言葉に先週の夢が思い出されて手を止めてしまうが、再度動かす。
「朝方に目が覚めたから帰った。今更だけどシャワー借りた」
「うん。それは別に良いんだけど。ところでさ…何でシュナは髪の香油を作ろうと思ったの?」
不意にイアンからそんなことを尋ねられた。
「何で…花が好きだから」
「ふふ。それだけ?」
「この国に来てエリックや優秀な治療魔術師に会って、色々教わったの。それで花を使った香水や香油が良いと言われた」
香水でなく香油にした理由。
アーロが昔、シュナの髪を摘みながら「髪の色を変えたいな。あれと同じブロンド系統は何だか気に食わない」と一応伴侶だろう相手を疎ましがる発言をしたのだ。
だからこそシュナは母だった女はともかくこのバターブロンドの髪が好きなので、逆に綺麗に保ってやろうではないかと選んだことがきっかけだった。
「…治療魔術師…それって女の子?」
「うん。私のたった一人の友人」
「それってもしかして普段は怠惰で―――」
「そうそう。大体半分くらいしか綺麗な藍色の瞳が開いていない子」
「マジか…出逢ったのってさ、…ユニュイス?」
「良く分かったね。そこそこ」
イアンは珍しく驚きながらも「何だか納得…性嗜好とか諸々」と呟いていた。
「今ちょっとエリックからの頼まれ仕事で久しぶりに関わっているんだよね」
「そうなんだ。エリックも会っていないって言ってたな」
その間にもイアンの髪に塗り込めた香油が馴染んで、シュナは顔を近づけて香りを嗅ぐと、イアンの香りという感じに仕上がっていて、我ながら良い仕事をしたと満足した。
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