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破裂する前に空気抜きを 3
しおりを挟む「何故今夜のことを私に言わなかった」
「ん?キリウと賭けしたんだー。朝一でイーガンに伝えたらばうでんがお迎えに来るか否か」
「お前な…それでどっちが勝った」
「キリウ。金貨一枚損したー今月ヤバい」
「…お前なぁ。…いつも世話になっているな。それと髪の香油の提供も感謝する」
「こちらこそいつもご贔屓にありがとうございます。…公爵様は分かるけどいあんはどした?」
「僕はちょっと野暮用で今帰り。今日シュナが飲みに行くって言っていたから寄ってみた」
「野暮用…なるほど、捕食したか」
「してないよ。例の頼まれ仕事。嗅いでも僕の匂いだけだって」
「うぬ。シュナ、ちゃんと嗅いでおけ」
「うむ。スーランもだぞ」
「むむ。…ばうでんの匂いだけだ。堪らん」
「お前達な…」
「あはは!」
蒸留酒一瓶と発泡葡萄酒もほぼ空けていたシュナ達はそこそこの酔っぱらいになっていた。
「蒸留酒一瓶を空けたのか…」
「シュナは酒豪なんだよ。負けてられない」
「何を競っている」
「女と度胸と酒の量」
「あっちの店ではそんなに飲まないよね」
「あっちは目的が違うからねー」
「ばうでん、だっこ」
ここでスーランの甘え発動だ。バウデンは少し眉を下げるが慣れたように屈んでひょいっとスーランを片腕に乗せると、彼女はすぐに首に手を回して肩に頭を乗せている。
それを見たイアンが「おお。初めて見た…」と呟いていた。
本当にスーランがバウデンを好きで慕い、安心出来る場所なのだとシュナは嬉しくなり微笑んでにこにこしてしまう。
すると何故かシュナもふわりと脇を持たれて浮かんだ。そして同じ目線にはイアンの姿が。
「あれ?」
「ん?僕もシュナを抱っこしてみたくなった」
シュナ達のやり取りを見ていたスーランがほぼ目が開かない状態でシュナに声をかける。
「シュナ。またぐびぐび飲むぞ」
「うん。ぐびぐび飲もう」
「今度は蒸留酒二瓶開けよう」
「良いね、乗った」
酔っ払い二人の会話に二人の雄がやれやれと肩を諌めていたのには気づかない。
そして酒代の硬貨を出そうとした雄二人にシュナは素早く自分の懐から今夜の分の硬貨をしゃきんっと取り出す。
「施しを受けまいよー」
「嫌なんだよね。はいはい」
イアンがシュナから硬貨を受け取ってテーブルに置くと、スーランも同じく「流石シュナ漢前」と自分も硬貨を取り出そうとするが、上手く出てこないようでさっさとバウデンが払っていた。
「ばうでん。後で払う」
「わかったわかった」
「これでまた馬車の中でヤれ―――もがが」
俊敏な動きでスーランの口を何故か塞いだバウデンは颯爽と扉に向かうのをイアンが続く。
その間に久々にたっぷり酒を飲んだシュナはいつもなら降ろせと言うだろうイアンの抱っこを享受しながら顎を肩に乗せてうとうとしていた。
冷たい外気が顔を叩くが、背中をぽんぽんとあやされているので、そんなに寒くない。何やらスーランとイアンの話す声が聞こえるが、うとうとしていたシュナはすっと意識が飛びそうになっていた。
イアンがシュナを抱えて歩いている揺れにどんどん眠くなるが、シュナはふと気になった。
「いあん?こっち私の家じゃない。どこ向かってるー?」
「僕の部屋。明日休みだから一緒に寝よ」
「うむ。抱き枕を許す」
「ふはっ。ありがと、助かるー」
イアンはいつもこう言ってくれる。シュナの方がとても助かっているのに、自分主体なのだという言葉を敢えて伝えてくれることでシュナの我儘なこだわりを柔らかくしてくれるのだ。
そのまま抱っこされてイアンの部屋に向かったシュナは、最近ではシュナ専用になっている淡い朱色の夜着を着させられた。
だが、それを酔っぱらいのシュナがまるでマントを放るが如く脱ぎ捨ててイアンに襲いかかった。
イアンは笑いながら「酔っ払いは元気だなー」と迎え撃ったのだった。
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