トラウマ克服の為にクズに徹します

きるる

文字の大きさ
37 / 140

破裂する前に空気抜きを 3






「何故今夜のことを私に言わなかった」
「ん?キリウと賭けしたんだー。朝一でイーガンに伝えたらばうでんがお迎えに来るか否か」
「お前な…それでどっちが勝った」
「キリウ。金貨一枚損したー今月ヤバい」
「…お前なぁ。…いつも世話になっているな。それと髪の香油の提供も感謝する」
「こちらこそいつもご贔屓にありがとうございます。…公爵様は分かるけどいあんはどした?」
「僕はちょっと野暮用で今帰り。今日シュナが飲みに行くって言っていたから寄ってみた」
「野暮用…なるほど、捕食したか」
「してないよ。例の頼まれ仕事。嗅いでも僕の匂いだけだって」
「うぬ。シュナ、ちゃんと嗅いでおけ」
「うむ。スーランもだぞ」
「むむ。…ばうでんの匂いだけだ。堪らん」
「お前達な…」
「あはは!」


蒸留酒一瓶と発泡葡萄酒もほぼ空けていたシュナ達はそこそこの酔っぱらいになっていた。


「蒸留酒一瓶を空けたのか…」
「シュナは酒豪なんだよ。負けてられない」
「何を競っている」
「女と度胸と酒の量」
「あっちの店ではそんなに飲まないよね」
「あっちは目的が違うからねー」
「ばうでん、だっこ」


ここでスーランの甘え発動だ。バウデンは少し眉を下げるが慣れたように屈んでひょいっとスーランを片腕に乗せると、彼女はすぐに首に手を回して肩に頭を乗せている。

それを見たイアンが「おお。初めて見た…」と呟いていた。

本当にスーランがバウデンを好きで慕い、安心出来る場所なのだとシュナは嬉しくなり微笑んでにこにこしてしまう。

すると何故かシュナもふわりと脇を持たれて浮かんだ。そして同じ目線にはイアンの姿が。


「あれ?」
「ん?僕もシュナを抱っこしてみたくなった」


シュナ達のやり取りを見ていたスーランがほぼ目が開かない状態でシュナに声をかける。


「シュナ。またぐびぐび飲むぞ」
「うん。ぐびぐび飲もう」
「今度は蒸留酒二瓶開けよう」
「良いね、乗った」


酔っ払い二人の会話に二人の雄がやれやれと肩を諌めていたのには気づかない。

そして酒代の硬貨を出そうとした雄二人にシュナは素早く自分の懐から今夜の分の硬貨をしゃきんっと取り出す。


「施しを受けまいよー」
「嫌なんだよね。はいはい」


イアンがシュナから硬貨を受け取ってテーブルに置くと、スーランも同じく「流石シュナ漢前」と自分も硬貨を取り出そうとするが、上手く出てこないようでさっさとバウデンが払っていた。


「ばうでん。後で払う」
「わかったわかった」
「これでまた馬車の中でヤれ―――もがが」


俊敏な動きでスーランの口を何故か塞いだバウデンは颯爽と扉に向かうのをイアンが続く。

その間に久々にたっぷり酒を飲んだシュナはいつもなら降ろせと言うだろうイアンの抱っこを享受しながら顎を肩に乗せてうとうとしていた。

冷たい外気が顔を叩くが、背中をぽんぽんとあやされているので、そんなに寒くない。何やらスーランとイアンの話す声が聞こえるが、うとうとしていたシュナはすっと意識が飛びそうになっていた。

イアンがシュナを抱えて歩いている揺れにどんどん眠くなるが、シュナはふと気になった。


「いあん?こっち私の家じゃない。どこ向かってるー?」
「僕の部屋。明日休みだから一緒に寝よ」
「うむ。抱き枕を許す」
「ふはっ。ありがと、助かるー」


イアンはいつもこう言ってくれる。シュナの方がとても助かっているのに、自分主体なのだという言葉を敢えて伝えてくれることでシュナの我儘なこだわりを柔らかくしてくれるのだ。

そのまま抱っこされてイアンの部屋に向かったシュナは、最近ではシュナ専用になっている淡い朱色の夜着を着させられた。

だが、それを酔っぱらいのシュナがまるでマントを放るが如く脱ぎ捨ててイアンに襲いかかった。

イアンは笑いながら「酔っ払いは元気だなー」と迎え撃ったのだった。





あなたにおすすめの小説

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした

こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】 伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。 しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。 そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。 運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた―― けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった―― ※「小説家になろう」にも投稿しています。

【R18】熱い夜の相手は王太子!? ~婚約者だと告げられましたが、記憶がございません~

世界のボボブラ汁(エロル)
恋愛
激しい夜を過ごしたあと、私は気づいてしまった。 ──え……この方、誰? 相手は王太子で、しかも私の婚約者だという。 けれど私は、自分の名前すら思い出せない。 訳も分からず散った純潔、家族や自分の姿への違和感──混乱する私に追い打ちをかけるように、親友(?)が告げた。 「あなた、わたくしのお兄様と恋人同士だったのよ」 ……え、私、恋人がいたのに王太子とベッドを共に!? しかも王太子も恋人も、社交界を騒がすモテ男子。 もしかして、そのせいで私は命を狙われている? 公爵令嬢ベアトリス(?)が記憶を取り戻した先に待つのは── 愛か、陰謀か、それとも破滅か。 全米がハラハラする宮廷恋愛ストーリー……になっていてほしいですね! ※本作品はR18表現があります、ご注意ください。

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮
恋愛
出会いは、ブライトン公爵邸で行われたガーデンパーティ。それまで婚約者候補の顔合わせのパーティに、一度も顔を出さなかったエレアーナが出席したのが始まりで。 彼女のあまりの美しさに、王太子レオンハルトと宰相の一人息子ケインバッハが声をかけるも、恋愛に興味がないエレアーナの対応はとてもあっさりしていて。 優しくて清廉潔白でちょっと意地悪なところもあるレオンハルトと、真面目で正義感に溢れるロマンチストのケインバッハは、彼女の心を射止めるべく、正々堂々と頑張っていくのだが・・・。 王太子妃の座を狙う政敵が、エレアーナを狙って罠を仕掛ける。 忍びよる魔の手から、エレアーナを無事、守ることは出来るのか? 彼女の心を射止めるのは、レオンハルトか、それともケインバッハか? お話は、のんびりゆったりペースで進みます。