トラウマ克服の為にクズに徹します

きるる

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イアン 3

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二十四歳になりイアンとフェリウスが少し長期の遠征から戻った後。

『正統派クズ』の異名を持っているイアンであるが、相方のフェリウスも『無表情無関心クズ』という異名を持っていた。

フェリウスは過去付き合ったり一時的な関係だけを持った雌達を何故か狂わせる才能があるらしく、執拗な執着にかなりうんざりし遠征などの戦闘でどうしようもなく血が騒ぐ以外は極力関わらないくらいの女嫌いになってしまっていたのだが。


遠征から戻り半年経つ頃に珍しくフェリウスから雌の匂いがしたのをイアンは元々の素質から早々に気づいていた。

獣人は基本鼻が効く者が多く、特にイアンとフェリウスは繁縁を結んでいたのでその匂いは顕著にわかる。

だがその相手がタルカル食堂でイアン達が長期遠征に行っている間に働き始めたイリエという小柄な女性だということ、更にはその関係がセフレだと聞いて流石に驚いた。

女嫌いのフェリウスが特定の相手を作ったことも勿論だが、イリエという女性の見た目や食堂での接し方など、どれをとってもセフレ要素があるようには見えなかったからだ。

しかも明らかにフェリウスに対して過剰に陶酔する態度も無く、始めはイリエの匂いを勘違いするくらいにイアンは首を傾げていたくらいだ。

態度には出さずともイリエも所詮他の雌と変わらないのかと思っていたが、彼女はそれ以降もフェリウスと食堂に行っても今まで通り何も変わらない客としての扱いのまま。

フェリウスと性交できたのだからと彼との関係を吹聴することもなく態度に表れない。

フェリウス曰く本当に性交のみの関係で、他を一切望まないと約束したらしく、そんな雌がいるものかとイアンは疑いに疑った。

食堂でそれっぽく牽制してみたり、たまたま石鹸屋に居る時に親友のイアンを使える体で話すも一向に靡かない。本当にフェリウスとの性交だけを目的とするイリエの行動にイアンは首を傾げっぱなしだった。

それでもフェリウスからの話を聞く限りはどうみてもフェリウスにお熱なはずなのに、セフレという関係から絶対にはみ出ない彼女の徹底した態度にイアンは初めてこんな雌もいるのかと驚いた。

イリエの貫く態度とは裏腹にフェリウスを想っていることは明白で、フェリウスも段々と意識を向けるようになり惹かれていった。

だがフェリウスも今までの経験からどう動けば良いのかあぐねいており、イアンはその度にヤキモキさせられた。


それから二人の間に大きな出来事があり、去ったイリエをフェリウスが必死に追いかけ、お互いにようやく心を通い合わせることができ、番縁を結ぶ運びとなったのだ。


イアンは今までの雌と全く違うイリエの行動や健気な様子に驚嘆しつつも、親友であるフェリウスが過去に見たことがないくらい愛しそうな表情で慈しむ行動の変化に驚きっぱなしではあるが、とても幸せそうな二人を心から祝福した。

イアンとしてもそれが自分に置き換えられることはないと思っているが、イリエのおかげでそんな雌もいるのだと僅かだが考えが緩和されたことは確かだった。



二人が幸せそうな生活を送り甘酸っぱい幸せのお裾分けをもらっていた頃、イアンは王都の端で営む薬屋のエリックから何度か裏仕事を請け負っていた。

いつも帽子を深く被り、色眼鏡をしたオネエ言葉で話すエリックは、本来とある要人ではあるのだが、現在は身分も素性も隠し活動している。

イアンは昔から伯爵家繋がりで関わっていたので顔見知りではあったが、特殊部隊になってからはその腕を買われ時たま依頼を受けていた。

最近隣国ロンダース国の動きがきな臭いという情報が入り遠征に赴き、数日ぶりにバロアス国へ戻ってきた時のこと。

エリックに報告した頃にはもう夜も更けていた。
このまま帰っても良いがちょっとした戦闘もあり最近あまり夜も出歩かなかったなと久々に酒場に繰り出すことにした。

それ目当ての相手を探す専用の酒場はいくつかあり、どれにしようか歩いていると、とある酒場の近くで雄が物陰から店の中の様子をずっと伺っていた。

誰かが来るのを待っていたのか、ふと「っ、リア…!」と叫び飛び込んで行ったのを見届けたイアンは首を傾げた。


「…リア?」


その名前をイアンは噂で何度も耳にしたことがあった。

イアンが特殊部隊に入ってある程度生活に慣れてから酒や遊びを覚え始めた頃。夜にしか現れない人族の妖美な女がいると噂になっていたからだ。


呼び名はリア。
人族でブロンド系の緩やかな髪と緑系の瞳。そして恐ろしく艶麗で魅惑的な女。それだけなら幾らでも居るしイアンの記憶に残らなかっただろう。だがその時から今までイアンの記憶にずっと残っている理由。





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