トラウマ克服の為にクズに徹します

きるる

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イアン 6




しかし半刻もしないうちに小さく息を呑む声にイアンは瞼を上げた。眠ってしまっていたことに驚きながらも目の前の抱き心地の良い体が微かに強張り更に小さな体を丸くしたことに疑問が起きる。

怖い夢でも見たのか息遣いが少しだけ荒い。
イアンは起きてないふりをして様子を見ることにした。

リアは自分が意識を飛ばしたことに呆然としたのか、ハッと我に返りイアンの腕から抜け出した。

事後は執拗にくっついてくる雌ばかりだった中でリアの行動に内心驚いていると、彼女はさっさと服を持って浴室へ消えた。

そんな対応をされたことがなかったイアンはぽかんとしながらも、そっと脱衣所に入りリアの服を持って戻る。

リアの着ていたワンピースはほつれもよれも殆どない。普段着ていない服のように新しい。

その後のリアはイアンが出逢ったままの彼女で、一瞬身体が強張ったりイアンを真顔で止めた仕草や蹲る様子をした相手とは思えなかった。

そんなリアがイアンは気になり、足元がふらついた瞬間に思わず抱き上げてしまった時の彼女のぽかんとした顔は何だかとても可愛く幼く感じて。

無意識に抱き上げていた自分自身にも驚いた。


その後リアがいつも雄を『仕留めた』後に飲むという、デュークが作るマンダリンベースのジュースのような幼い味のカクテル。

それを美味しそうに飲むリアはとても妖美には見えず。そして十六歳から通っていることに驚き十年近いということでイアンより年上だろうことも想定できた。

今のリアは年上に見えなくもないが、起きた直後の彼女は年下にしか見えなかった。

そのアンバランスさが気になる。送ると言ったイアンを適当にいなし、裏口から出て行ったリアにイアンは何故表で雄が見張っていたのかを理解した。

裏口から颯爽といなくなったリア。デュークに手を振ってもイアンとは視線を合わすことすらなかった。


「ねえ。あの子デュークの?」


デュークは眼帯をしてないマンダリン色の目を向ける。


「そんなわけあるか」
「まあそうならこんなこと許す訳ないか。でも何かとても大切にしてない?」
「昔からの付き合いだからな」
「このカクテルの時から?」


イアンはまるでジュースのような鮮やかな橙色に煌めくカクテルを見る。デュークがこれを作ってやったと言うことは、それほどに当時のリアが幼く見えたのだろう。


「昔からの付き合いなのに、刹那的な生活を止めてあげないの?」
「お前が言うな」
「あは。確かに」


すっと視線を戻したデュークは無表情だ。イアンは表情を見ずとも大体の感情を把握出来ることが多いがデュークに関してはなかなかに難しい。

彼はここが開店した当初からマスターとしているが本業は別だろう。ある店で彼の微かな気配を察知したことが何度もあるからだ。

普通なら気づかない程の僅かな気配。
イアンだからこそ気づけたもの。
そのデュークが気にかけるリア。


「僕こんなに邪険にされたの初めて」
「リアは誰に対しても同じだ」
「それでも、だよ」


つれない態度は取られたがここに現れると言うことはわかった。またそのうち会えるだろう。

イアンはジュースのようなカクテルを飲み干す。マンダリンの爽やかな喉越しが、確かに情事の後には美味しいかもと思ってしまった。



その後思ったよりも早くリアと再会することが出来た。





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