トラウマ克服の為にクズに徹します

きるる

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イアン 9






「―――うん。やっぱりあの子の匂いだね」
「あんたの聴覚と嗅覚の鋭さは気持ち悪いくらいね」
「家柄もあるかもだけど性質的にもかなーそれにここ寂れているのに防音完璧だから中の音は流石に聞こえなかったよ」


この薬屋は建物全体が古めかしいのだが、防音だけでなく強度や安全も完璧に近い。それはエリックがここに住んでいるからなのだが、実際それだけではない。

防音などはイアンは詳しくないが魔術より錬金の類だろう。もう一つはこの薬屋周辺にはエリックの息のかかった手練があちこちに潜んでおり、その辺の要人の屋敷よりも堅牢だからだ。


「あの子と寝たの?」
「うん。たまたまあの子を諦めない雄を見かけてさ。その流れでちょっとクズ同士尋常に勝負ってやつ」


エリックは溜息を吐く。


「あの子にも色々あるから昼夜別生活ってことは放っておいてあげて」
「それは別に。でもシュナちゃんは気になるなぁ…リアと共に」


その言葉にエリックがゆっくりと瞬きした直後、視線が冷酷に変わる。


「そう。でもあの子は難しい。他の雌と同様に扱わない方が懸命」
「なるほど。それってあの子が作ったの?」


イアンはエリックの手元にある丸みのある小さな瓶を指さした。


「ああこれね。シュナが精製している髪の香油」
「さっきから良い香りがすると思ったーあの子の髪の香りもそうなのかな?」
「そりゃね。この香りは私専用だからあんたは駄目」
「あはは。良いなぁ」
「それで?」
「ん?ああ、ごめん。報告ね」


イアンはにこりと微笑み報告を始めた。




***************



「…ねえ、泊まっていかないの?」


シャワーを浴びたイアンに寝台で寝そべる雌が媚びたような視線と声色で尋ねてくる。


「うん。この後すぐに戻らないといけないんだ」


イアンは遠征中にちょっとした戦闘が起き血が騒いだ為、遠征先の娼館の一つに訪れていた。

すぐ戻らなければならない理由はなかったが、発散するものはしたのでこのまま戻ることにしただけだ。


「貴方の…信じられないくらい美しい顔も、体も、…性技も今までに経験したことないくらい凄かったわ」
「そ?それは良かった」
「こっちには住んでないのよね?――――また来て欲し…いえ、関係無く会いたいの」
「あは。僕一つの場所と相手に留まらない性質だから」
「っ…私が貴方の国に―――」
「君の仕事は?」
「っ!」
「ちゃんと弁えないとね。じゃあねー」


イアンはひらひらと手を振りながら部屋から出て行った。


(あんあん煩すぎ)


イアンで感じるのは良いが、あまりにも大きな声で獣のように吼える雌にどうにか達するまでには到ったが、途中萎えてしまいそうになった。


(感じているのに我慢して漏れちゃう声の方が余計に興奮するよね)


そう思った時に脳裏に浮かんだのはリアのことだ。


(あれはちょっと久々に興奮したからなー清純でもなく堂々と雄を喰らうのに、屈しないように声を抑えるのが堪らない)


リアの腰の動きと感じながらも声を必死に抑える声の艶めかしいこと。イアンはついさっき発散したばかりなのに、また滾りそうになって我に返る。


(危ない危ない。――――今から戻れば夕方前には着けるかな)


イアンは帰路と報告の時間配分を頭で計算しながら足早に戻っていった。





*****************



「こっちでは知らないし」


イアンは未だ嘗てここまで煩わしそうに嫌そうな低い声で話されたことはなかった。


バロアス国に戻り諸々用事を済ませてから腹を満たす為イアンが街を歩いていると、ふと遠くに大きな袋を持って軽やかに歩くシュナを見かけた。

元々シュナの所に行く予定だったので、イアンは気配を消してついて行く。

シュナは切り花や苗を購入したらしく、時折袋に顔を突っ込み匂いを嗅いでいるのか、柔らかい表情をしながら歩いていく。

その姿と酒場でのリアが同一人物だとは誰も思わないだろう。

シュナが薬屋隣の階段を昇る前に声をかけ、しらばっくれようとしたシュナに耳元でこそりとリアと同一であることを仄めかした時の言葉があれだ。


興味が無い以上に邪険にされたことに面白くなったイアンは上手く場を動かしシュナとタルカル食堂に向かった。

諦め顔で条件を言えと言ってきたシュナに微笑み、しっかりと小さな手を繋いで逃亡を防止させ、イアンは寝泊まりと雌との性交用に借りている部屋に向かった。

その間も逃げないから離せというシュナの顔はうんざり顔でイアンは余計愉しくなってきた。





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