トラウマ克服の為にクズに徹します

きるる

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拙い孔雀 3





「シュナさん、お初にお目にかかる。私はガイアン・ピーフォック。ここの当主でイアンの父だ」


イアンの父親であるガイアンは胸元までのロイヤルブルーからグラデーションがかった毛先が濃紺の髪を一つに結い、ミントグリーンの瞳を細めて微笑みながら挨拶してくれた。


「私の番!そこの異常者の母親でっす!」
「あは。母上酷いなぁ」
「エリィ。ちゃんと名前から言おうか」
「エリゼ・ピーフォックよ。シュナちゃん初めまして!」


軽やかに跳ねているエリゼはダークブロンドの緩やかな長めの髪を揺らめかせながら薄緑の瞳をきらきらさせシュナを見ている。とても二人の子供を産んだとは思えないくらい若々しい。

イアンがからからと笑いながら対応しているのを見ると、エリゼはいつもこんな調子なのだろう。


「次は私!」
「ジール、順番的に私だろうに。ちょっとだけ待ってくれ」


眉を下げながらジールの頭を撫でている男性がこちらを見て微笑する。


「イアンの兄ローアンだ。シュナさんに会えて光栄だ」


水色の優しい瞳で微笑み胸元までの真っ直ぐなアイスブルーからグラデーションがかったネイビーの毛先の髪がさらりと揺れる。

そしてそんなローアンを揺らし続けていたのはジールだ。


「もう良い?もう良いよね?ローアンの妻のジールです!」


薄茶色の巻き髪に大きな青い瞳を輝かせながらジールがにっこりと笑う。

ふわりとイアンがシュナを下ろしてくれて、後ろから腰に手を回して支えてくれる。まだ足腰が完全でないことをわかって配慮してくれることに心が温かくなる。

シュナはとても賑やかなイアンの家族に圧倒されていたが、改めてと四人に向き直る。


「ご挨拶が遅れ…そして少し足元が危なっかしいので、この状態で失礼します。シュナと申します。皆さんにお会いできて嬉しいです」
「あーん可愛いー」


ここで突撃してきたエリゼにイアンが颯爽とシュナを動かして躱し、後ろからはガイアンがエリゼを捕獲していた。


「ほら、エリィ。シュナさんはまだ体力が戻っていないんだ。抱擁はまた今度ね」
「わかった。マジ可愛い。イアンよくやった!」
「はいはいありがとー」


そんな会話の中、鼻を啜る音が聞こえた。

皆が一斉にそちらに目を向けると目元を覆ったローアンがぼろぼろと泣いているのだ。


「あら、ローが泣くの久々に見た」
「あらー昔は良く泣いていたけどねぇ」
「イアンを一番憂いていたからねぇ。嬉し泣きだよ」
「あはは。兄さん気にしすぎ」
「っ、よ、かった…!」
「ローは誰よりもイアンを心配していたものね」


何だかとても賑やかでとても温かく感じる。シュナは彼らに巻き込まれるような空間のおかげでいつの間にか緊張は解けていた。

それよりも。
誰かが悪女と言っていなかっただろうか。
それはシュナの噂を知っているということだ。


「イアン。あの、悪女って…」
「ん?僕が言ったよ」
「え」
「巷で噂の悪女を手に入れるって」
「でかした!流石我が息子!」


エリゼが満面の笑みで褒め称えている。
――――それで良いのだろうか?


「シュナ。母上に聞いてご覧?」
「え?」
「婚姻前は何をしていたのかって」
「ああ、例のやつやれってー?」


そう言って頷いたエリゼが、突如先ほどの華やかな笑みから妖艶な笑みになり、その変わりざまにシュナは目を見開いた。


「シュナさん。お目にかかれて光栄ですわ。元高級娼婦のエリゼと申します」
「ぇ」
「うふふ。私がヤバい奴らに輪姦されている時にガイアンが助けてくれたの」


なかなかに壮絶な過去をさくさく話すエリゼにシュナが唖然としてしまう。


「そんな状況でも凛として戦っていたエリィに私が惚れ込んで何とか手中に収めたんだよね。一月も経たないうちに番縁を結んだんだ」


ガイアンがエリゼを後ろからぎゅっと抱き締めて頭に口を落としている。


「あら。悪女ってことで心配してるの?なら私も発表しまーす」


続いて挙手したジールがにっこりと微笑んだ。


「私、とある国で踊り子してたんだけど、ある日拉致されて薬盛られて調教されて人形として売られそうになったの。それでも頑張って抗っている時に偵察に訪れていたローに確保されました!」
「あの時匂いで番絆って本能的にわかったんだ。久々に腕を鳴らしたな。鈍ってなくて良かった」


ローアンは宰相の右腕ではあるが、出身は孔雀族なのでそれなりに腕に自信はあるのだろう。

ぱっと見が普通に華麗な夫人のような出で立ちの二人から、まさかの過去を聞いたシュナは口が開きっぱなしだ。

エリゼがそんなシュナにゆっくりと近づいて軽く、でも優しく抱擁してくれる。


「あなたの過去がどうだとかどうでも良いの。イアンが唯一を選んだこと、それが全てなの。イアンがその辺のしょうもないのを選ぶわけないとわかっているから、私たちは祝福するのみよ」


そう言って先ほどとは違う、伯爵夫人としての素敵な微笑みを見せてくれたエリゼにシュナは過去の重荷が軽くなったような気がした。


「…ありがとうございます」
「うふ。そのうち三人でわいわい雄の猥談でもしましょ!」
「賛成!シュナちゃんもいける系?」
「ふふ。遠慮無しでいけます」
「いいねー」
「やったー」


この二人とは何だかシュナも上手くやっていけそうだ。

そしてわいわい賑やかな四人が去っていった。

イアン曰く、「家ではあんなんだけど外ではピーフォック家として舐められない為にがらりと変わるんだ。まるでシュナみたいに上手く使い分けてる」と言われ、少しだけ親近感をもった。





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