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小さな希いが特大に 3
あまり物がないシュナの部屋はあっという間に片付けと準備が出来てしまった。そして昼食を食べに行っている間に伯爵家の人が運び去っていると聞かされまたもや呆然としてしまった。
「さ、次は買い物行ってから番絆の申請ね。早く僕の伴侶にしないと落ち着かない」
幸せで嬉しいことしか言わないイアンにシュナは思わずつられて頬が緩んでふわりと微笑む。
「…ん。そんなシュナの顔、ずっと見たかった」
イアンがぼそりと言った言葉はこれから何を買いに行こうか考えていたシュナには聞こえなかった
******************
街で二人で使う食器やカーテンなど少しずつ買い足していく。それらに関してもいつの間にか誰かに運び去られている。「うちの者はほら、そういうのばかりしかいないから」と言われ頷くしかなく、シュナごときでは認識もできないものなのだと思うことにした。
一通り生活できる日用品などを買った後、王宮に番絆の申請に向かった。
「今日あたり来ると思ってました」
番絆の申請の受付に居たのはこれまた麗しい容姿の男性だ。
綺麗な白銀色の長い髪に毛先だけがエメラルド色という王族特有の色合い。マゼンタ色の瞳を細めながら話しかけてきた人物にイアンが目を丸くした。
「あれ、リグリアーノ。耳聡いなー」
「スーランや周囲から色々情報は入ってきますので」
スーランの知り合いでもあるのかとシュナは取り敢えずぺこりとお辞儀だけしておいた。
「スーランと同等にやりあえると聞いております。見た目の儚さからは想像できないほどの猛者なのでしょうね。長…コーネインからも色々と聞いております」
以前テゼルやコーネインと飲んだことがある。それを知っているのならばシュナの過去も多少は知っているのだろう。
「シュナ、この王子は一番好き勝手動いている放蕩者なんだ」
「へえ…」
「おや、酷い言われようですね」
「この話し方も外面用なんだ。スーランの前でしたら暫く口聞いてもらえないから」
「へえ…何かわかるかも」
「つれない方なんです」
確かにと頷けるようなリグリアーノの取って付けたような態度はスーランは好まないだろう。
「貴女も珍しい部類ですね。この容貌に魅入られないのは」
「そりゃ僕だって始め邪険にされてたからね」
「おや。イアンがですか?」
「うん。他の雄と同じ扱いだよ?僕が」
「それはそれは」
「スーランと同類って少ないよねぇ。僕達の見た目が通用しないんだ」
「分かります。あの属性はなかなか―――」
「ねえ、何で私達の愚痴に発展してるの?」
話が何だか違う方向に向かっているので思わず突っ込むと「ぶっ」と明らかにリグリアーノから噴き出す声が聞こえた。
シュナが見ると、にこりと美麗な顔を微笑ませるがイアンとはまた系統の違う胡散臭い笑みである。先ほど噴き出した彼が本来の姿なのだろう。スーランはそこだけを受け入れているということだ。
「なんとなくスーランの言ってることがわかったかな」
「おや。何でしょう」
リグリアーノが片眉を上げながら面白そうな表情をするのに対してシュナはちょっとだけ『悪女』の笑みで返す。
「ふふ。外面が胡散臭過ぎて、スーランも私も苦手な部類になります」
その言葉に目を丸くしたリグリアーノが思わず口元を歪ませながら「くくっ」と口を抑えて笑うが、しっかりと悪辣な笑みが見えてしまった。
「そっちの悪どい笑顔の方が素で素敵に見えます」
「ぶふっ」
「ほらほら。もっと喜んじゃうから」
イアンの抱擁にシュナももう良いかなと申請書に名を書く。
「流石僕のシュナだなー」
「流石スーランの相方…」
二人の言葉はシュナにとっては何よりの褒め言葉だ。にこりと微笑んだシュナはイアンも書き終えた番絆の申請書を差し出した。
「では表向きのリグリアーノさん、お願いしますね?」
「ふはっ了解」
口調も声色も変わったリグリアーノに、シュナとしてはそちらの方が彼らしいと初めて会ったが感じてしまった。
申請を受け付けたリグリアーノがふと麗しい顔を少しだけ近づけてこそりと話しかけてきた。
「孔雀族は貴女も知る通り狡猾で冷淡、用意周到で先読みに長けていて頭が回るなど、国にとってかなり重要な立場の者が多い。――――ですが、孔雀族の唯一への執着はまあ重くて攻撃的。人によっては人格すら変わる者もいる。相手への愛情が大き過ぎて、ね。―――――気をつけろよ?マジで」
最後には間違いなく本性剥き出しの言葉が漏れ聞こえ、「ほらー余計なこと言わないでーじゃあねー」とイアンにくるりと方向転換させられ手を引かれシュナは受付を後にした。
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