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1章
19 初めての喧嘩②
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納得してしまえばいけないのはすべてアリシアだった。
それなのに酷い態度を取り、酷いことを言ってしまった。
私はなぜあの様なことを――。
思い返してみれば、すべて感情に任せたものだった。
過度に干渉されたと思って苛立ち、シスターや子ども達に距離を置かれた哀しみに憤り、最後は癇癪を起して泣いて喚いた。
常に感情を制御し、感情的になることがないように。
それはお妃教育の中で最も重要とされていたことで、繰り返し鏡の前で笑顔の練習をした。
いつの間にかその笑顔が身に染みついて、レイヴンの前で感情的になることなんてなかったのに。
『これからはお互いに本当の気持ちで話そう。色んな表情を見せて。これからは僕もそうするよ』
レイヴンの言葉が蘇る。
あの日からレイヴンは、これまで見せなかった感情を――表情を見せるようになった。
アリシアもそれに引きずられているのか。
物思いに沈んでいると、扉を叩く音が聞こえた。
同時にアリシアへ呼びかけるレイヴンの声も聞こえてくる。
あれからどれくらいの刻が経ったのだろうか。
本当はこれまでにも何度か扉を叩く音とレイヴンの声が聞こえていた。けれどアリシアは答えたくなくて、聞こえない振りをしていたのだ。
暫くしてまた扉を叩く音がする。
「妃殿下、そろそろ晩餐の時間です。お支度をなさいませんと」
アリシア付きの侍女頭、エレノアの声だった。
そうだ、晩餐の支度をしなければならない。未だ外出用のドレスのままだ。
王太子妃として相応しくある為には、晩餐の為に身だしなみを整え、決して時間に遅れてはならない。
「入っていいわ」
応えると同時に勢いよく扉が開き、エレノアよりも先にレイヴンが入ってきた。
思い切り泣いた後の顔を見られたくないアリシアは思わず顔を伏せたけれど、レイヴンは気にした素振りも見せずにアリシアを抱き締めた。
「良かった、アリシア…。酷いことを言ってごめんね」
レイヴンは悪くない。
間違っていたのはアリシアだ。
そう思うのに、口を開くとまた感情的な言葉を言ってしまいそうな気がして、応えることが出来なかった。
「…着替えますわ」
顔を伏せたまま呟いた。
一目で泣いていたとわかる顔をエレノアに見られるのは気が重いが、晩餐用のドレスに着替えて化粧をし直さなければならない。
「今日の夕食はここで食べよう。だから楽なドレスでいいよ」
エレノアが頷いていた。レイヴンは部屋に食事の用意をするよう侍女たちに言いつけている。
ドレッサーの前に座ると、目が腫れて化粧の崩れたみっともない顔が鏡に映っていた。
だけど流石に王太子宮の侍女頭である。
エレノアは表情を変えることなく、アリシアの顔から涙の跡を完璧に消してくれた。
コルセットをつけずに着られる楽なシュミーズドレスに着替えて部屋に戻ると、既に食事の準備がされていた。
使用人たちをすべて下がらせたようで、部屋の中にはレイヴンしかいない。
レイヴンの意図を察したエレノアも一礼して部屋を出ていった。
完全に2人きりである。
アリシアが席に着くと食事が始まった。
アリシアはほとんど言葉を返すことができなかったが、レイヴンは気にしない様子で話し掛けてくれていた。
その日の夜は、久しぶりに体を重ねることなく眠った。
レイヴンはただアリシアを抱き締め、優しく髪を撫でてくれていた。
それなのに酷い態度を取り、酷いことを言ってしまった。
私はなぜあの様なことを――。
思い返してみれば、すべて感情に任せたものだった。
過度に干渉されたと思って苛立ち、シスターや子ども達に距離を置かれた哀しみに憤り、最後は癇癪を起して泣いて喚いた。
常に感情を制御し、感情的になることがないように。
それはお妃教育の中で最も重要とされていたことで、繰り返し鏡の前で笑顔の練習をした。
いつの間にかその笑顔が身に染みついて、レイヴンの前で感情的になることなんてなかったのに。
『これからはお互いに本当の気持ちで話そう。色んな表情を見せて。これからは僕もそうするよ』
レイヴンの言葉が蘇る。
あの日からレイヴンは、これまで見せなかった感情を――表情を見せるようになった。
アリシアもそれに引きずられているのか。
物思いに沈んでいると、扉を叩く音が聞こえた。
同時にアリシアへ呼びかけるレイヴンの声も聞こえてくる。
あれからどれくらいの刻が経ったのだろうか。
本当はこれまでにも何度か扉を叩く音とレイヴンの声が聞こえていた。けれどアリシアは答えたくなくて、聞こえない振りをしていたのだ。
暫くしてまた扉を叩く音がする。
「妃殿下、そろそろ晩餐の時間です。お支度をなさいませんと」
アリシア付きの侍女頭、エレノアの声だった。
そうだ、晩餐の支度をしなければならない。未だ外出用のドレスのままだ。
王太子妃として相応しくある為には、晩餐の為に身だしなみを整え、決して時間に遅れてはならない。
「入っていいわ」
応えると同時に勢いよく扉が開き、エレノアよりも先にレイヴンが入ってきた。
思い切り泣いた後の顔を見られたくないアリシアは思わず顔を伏せたけれど、レイヴンは気にした素振りも見せずにアリシアを抱き締めた。
「良かった、アリシア…。酷いことを言ってごめんね」
レイヴンは悪くない。
間違っていたのはアリシアだ。
そう思うのに、口を開くとまた感情的な言葉を言ってしまいそうな気がして、応えることが出来なかった。
「…着替えますわ」
顔を伏せたまま呟いた。
一目で泣いていたとわかる顔をエレノアに見られるのは気が重いが、晩餐用のドレスに着替えて化粧をし直さなければならない。
「今日の夕食はここで食べよう。だから楽なドレスでいいよ」
エレノアが頷いていた。レイヴンは部屋に食事の用意をするよう侍女たちに言いつけている。
ドレッサーの前に座ると、目が腫れて化粧の崩れたみっともない顔が鏡に映っていた。
だけど流石に王太子宮の侍女頭である。
エレノアは表情を変えることなく、アリシアの顔から涙の跡を完璧に消してくれた。
コルセットをつけずに着られる楽なシュミーズドレスに着替えて部屋に戻ると、既に食事の準備がされていた。
使用人たちをすべて下がらせたようで、部屋の中にはレイヴンしかいない。
レイヴンの意図を察したエレノアも一礼して部屋を出ていった。
完全に2人きりである。
アリシアが席に着くと食事が始まった。
アリシアはほとんど言葉を返すことができなかったが、レイヴンは気にしない様子で話し掛けてくれていた。
その日の夜は、久しぶりに体を重ねることなく眠った。
レイヴンはただアリシアを抱き締め、優しく髪を撫でてくれていた。
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