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2章
101 鞭打ち③
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「恐れながら陛下。今のことからもわかるように、この者たちには慈悲の心が欠片もありません。これまで踏みにじられてきたジェーンやサンドラ殿のことを思うと、厳罰に処して頂きたいと思います」
デミオンとアンジュに報いを。
アリシアたちが本心では願い続けてきたことである。
「おまえ、よくも余計なことを…っ!」
アリシアの言葉に激高したアンジュが飛び掛かろうとする。
だが上段にいるアリシアに届くはずがない。
「がぁっ!」
控えていた衛兵がアンジュを突き倒して押さえつけた。顔を床に叩きつけられたアンジュは、衝撃でおかしな声を上げる。そのまま顔を押さえつけられ、腕を後ろに捻り上げられていた。
「ア、アンジュッ!!」
「お母様!!」
デミオンとエミリーが悲鳴を上げるが、衛兵に押さえつけられたアンジュを助けることはできない。
「王太子妃への恫喝と傷害未遂だ」
レイヴンの冷え冷えとした声が響く。
レイヴンは今度こそその背にアリシアを庇っていた。アリシアも大人しく従っている。
今のが恫喝と言えるかは疑問だが、この2人に容赦するつもりはない。
「侯爵夫人は己の罪を認めることも、反省することもないようです。人に打たれる痛みを教える為にも、鞭打ち刑を求刑致します」
アリシアが冷たい声で国王へ告げた。
馬鹿な女だ。
アリシアは鼻白む。
マルグリットはジェーンの為に、2人には「社会的な死」を与えると言っていた。
ジェーンへの暴力行為で与えられる罰は、恐らく生涯幽閉などそんなところだろう。
それなのに両陛下の前で王太子妃へ暴行未遂を起こしてその罪を上乗せするなんて。
だけど命を失うような罰を与えてもいけない。鞭打ちの数は死なない程度に抑えてもらわなければ。
ジェーンが結婚する日まで、2人には生きていて貰わなくてならないのだ。
いや、生きているのはデミオンだけでいいのか。
「ひ…っ!!」
アリシアから不穏な空気を感じたのだろうか。
アンジュが引き攣った声を上げた。
ようやく自分が引き起こした事態が理解できたようだ。
「お、お待ちください、陛下!誤解でございますっ!妻は王太子妃殿下に危害を加えようとなどしておりません!!どうか鞭打ちなど、そのような惨いことは…っ」
デミオンが慌てふためいてアンジュを庇うが、それは皆の怒りを煽るだけだ。
「惨いですって?侯爵、知っているのですよ。ジェーン嬢を鞭で打っていたのはあなたでしょう。それが惨いと言うなら、なぜあなたは自分の娘を打つのです?!侯爵夫人への鞭打ちは、王太子妃に対する恫喝と傷害未遂への処罰です。では、あなたがジェーン嬢を鞭で打った理由は何ですの?!」
「そ、それは…」
デミオンがたじろいて黙り込む。
本当の理由を話せるわけがない。
だけど、先妻が生んだ実子が疎ましいからとも言えるわけがなかった。
「…求刑通り、侯爵夫人には王太子妃への恫喝と傷害未遂で鞭打ち刑を与える」
「ひいぃ…っ!!」
アンジュが逃げようとして身悶えるが、衛兵が力づくで抑え込む。
国王から鞭打ち刑が言い渡された時、アリシアはアンジュよりデミオンの表情を見ていた。
「ア、アンジュっ!アンジュ…!!」
デミオンはアンジュに与えられる苦痛を思い描き、狼狽している。
鞭で打たれるのはアンジュだが、アンジュを痛めつけることでデミオンに精神的な苦痛を与えることができる。
これを狙っていたわけではないが、デミオンとアンジュ、どちらにも苦痛を与えられる素晴らしい展開だ。
デミオンとアンジュに報いを。
アリシアたちが本心では願い続けてきたことである。
「おまえ、よくも余計なことを…っ!」
アリシアの言葉に激高したアンジュが飛び掛かろうとする。
だが上段にいるアリシアに届くはずがない。
「がぁっ!」
控えていた衛兵がアンジュを突き倒して押さえつけた。顔を床に叩きつけられたアンジュは、衝撃でおかしな声を上げる。そのまま顔を押さえつけられ、腕を後ろに捻り上げられていた。
「ア、アンジュッ!!」
「お母様!!」
デミオンとエミリーが悲鳴を上げるが、衛兵に押さえつけられたアンジュを助けることはできない。
「王太子妃への恫喝と傷害未遂だ」
レイヴンの冷え冷えとした声が響く。
レイヴンは今度こそその背にアリシアを庇っていた。アリシアも大人しく従っている。
今のが恫喝と言えるかは疑問だが、この2人に容赦するつもりはない。
「侯爵夫人は己の罪を認めることも、反省することもないようです。人に打たれる痛みを教える為にも、鞭打ち刑を求刑致します」
アリシアが冷たい声で国王へ告げた。
馬鹿な女だ。
アリシアは鼻白む。
マルグリットはジェーンの為に、2人には「社会的な死」を与えると言っていた。
ジェーンへの暴力行為で与えられる罰は、恐らく生涯幽閉などそんなところだろう。
それなのに両陛下の前で王太子妃へ暴行未遂を起こしてその罪を上乗せするなんて。
だけど命を失うような罰を与えてもいけない。鞭打ちの数は死なない程度に抑えてもらわなければ。
ジェーンが結婚する日まで、2人には生きていて貰わなくてならないのだ。
いや、生きているのはデミオンだけでいいのか。
「ひ…っ!!」
アリシアから不穏な空気を感じたのだろうか。
アンジュが引き攣った声を上げた。
ようやく自分が引き起こした事態が理解できたようだ。
「お、お待ちください、陛下!誤解でございますっ!妻は王太子妃殿下に危害を加えようとなどしておりません!!どうか鞭打ちなど、そのような惨いことは…っ」
デミオンが慌てふためいてアンジュを庇うが、それは皆の怒りを煽るだけだ。
「惨いですって?侯爵、知っているのですよ。ジェーン嬢を鞭で打っていたのはあなたでしょう。それが惨いと言うなら、なぜあなたは自分の娘を打つのです?!侯爵夫人への鞭打ちは、王太子妃に対する恫喝と傷害未遂への処罰です。では、あなたがジェーン嬢を鞭で打った理由は何ですの?!」
「そ、それは…」
デミオンがたじろいて黙り込む。
本当の理由を話せるわけがない。
だけど、先妻が生んだ実子が疎ましいからとも言えるわけがなかった。
「…求刑通り、侯爵夫人には王太子妃への恫喝と傷害未遂で鞭打ち刑を与える」
「ひいぃ…っ!!」
アンジュが逃げようとして身悶えるが、衛兵が力づくで抑え込む。
国王から鞭打ち刑が言い渡された時、アリシアはアンジュよりデミオンの表情を見ていた。
「ア、アンジュっ!アンジュ…!!」
デミオンはアンジュに与えられる苦痛を思い描き、狼狽している。
鞭で打たれるのはアンジュだが、アンジュを痛めつけることでデミオンに精神的な苦痛を与えることができる。
これを狙っていたわけではないが、デミオンとアンジュ、どちらにも苦痛を与えられる素晴らしい展開だ。
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