【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

文字の大きさ
132 / 697
2章

102 鞭打ち④

「さて、おかしなことになったが話を元に戻す。侯爵と侯爵夫人が長年ジェーン嬢を不当に扱い、虐げていたことは既にわかっている。更には度重なる暴力行為。これは許されることではない」

 アンジュはまだ呻き、藻掻いているが国王は無視することにしたようだ。
 淡々と話を進めていく。

「公爵も把握していたそれを公に訴え出なかったのは、偏にキャンベル侯爵家の後継の為だな」

「はい、陛下。侯爵が処罰を受け、爵位が縁戚の者に移ってしまう可能性を考えました。それではサンドラ殿の遺志に背くと思い、訴えることができませんでした」

「侯爵夫妻はそれを悪用したのだな」

「…申し訳ありません」

 アダムが頭を下げる。

「恐れながら陛下。キャンベル侯爵がこれまで好きに振舞えたのはジェーン嬢が女性である為、爵位の継承を認めらていないからだと思えます。男性と同様に嫡子であれば未婚の女性であっても爵位の継承が認められていれば、公爵も迷いなく侯爵を告発できたのではありませんか」

「女性の継承問題か。…わかっている。先程のことも継承の問題であった。そもそもジェーン嬢が爵位を継いでいれば、夫の愛人が子を生んでもその子に爵位がいくことはない」

 国王はマルグリットへ淡々と答えているが、これは重要なことだ。
 先日とは違い、ここは公の場で書記官が記録を取っている。

「女性に爵位の継承を認めるよう議会に諮ろう」

 国王に女性の爵位継承を認める意志があることを書記官がしっかりと記録した。

「だが、今はまだそれは認められていない。だから今回はこの措置を取る」

 国王が一同を見渡した。

「キャンベル侯爵家の次期後継者は、ジェーン嬢とその夫と定める。ジェーン嬢の婚姻前に不慮のことがあった時は、傍系のヨラン・ダナッシュが跡を継ぐこととする。エミリー嬢とその夫に爵位が渡ることはない」

 ヨラン・ダナッシュはキャンベル侯爵家の血筋の者で、今でもジェーンに次ぐ継承権の持ち主だ。
 だが次女のエミリーが結婚することで、ジェーンが未婚のまま死んだ場合エミリーとその夫に爵位が移る可能性が生まれていた。
 デミオンやアンジュは、ジェーンを虐げてはいても手にかけるほどの勇気はない。
 そうは思うが、国王はその可能性を根本から断ち切ったのだ。

「またジェーン嬢が婚姻を結ぶまでは、現侯爵が爵位を保つことを認める。しかしジェーン嬢が結婚した暁には、即時にその爵位はジェーン嬢とその夫へ移ることとする。それまで侯爵と侯爵夫人には先日の王命違反への罰と併せて邸敷地内での幽閉を命じ、その権限も取り上げる。侯爵としての代行権をジェーン嬢へ与え、更にジェーン嬢が任ずる者に代行権を一時的に委譲する。ジェーン嬢はしばらく国を離れるのだからな」

 処罰の内容はアリシアが予想した通りだった。
 軽いようで惨い罰である。
 これでデミオンとアンジュが表に出てくることはなくなった。そして当主としての全権を握ったジェーンが、2人に遠慮する必要もない。邸で何か起こったとしても、それが表に出ることはないだろう。
 今まで2人がジェーンに対して、してきたことだ。

 そして元から嫌われているデミオンとアンジュが幽閉されたとしても、社交界で気に留める者はいない。
 2人は訪ねてくる者もいない邸で、ジェーンの仕打ちに怯えながら生涯を2人きりで過ごすことになる。
  
 そう、2人きりだ。
 あの邸に2人の世話をしたがる侍女がいるとは思えないのだから。




感想 441

あなたにおすすめの小説

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。 隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。 周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。 ※設定はゆるいです。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

大人になったオフェーリア。

ぽんぽこ狸
恋愛
 婚約者のジラルドのそばには王女であるベアトリーチェがおり、彼女は慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でている。  生まれてくる子供の為にも婚約解消をとオフェーリアは言われるが、納得がいかない。  けれどもそれどころではないだろう、こうなってしまった以上は、婚約解消はやむなしだ。  それ以上に重要なことは、ジラルドの実家であるレピード公爵家とオフェーリアの実家はたくさんの共同事業を行っていて、今それがおじゃんになれば、オフェーリアには補えないほどの損失を生むことになる。  その点についてすぐに確認すると、そういう所がジラルドに見離される原因になったのだとベアトリーチェは怒鳴りだしてオフェーリアに掴みかかってきた。 その尋常では無い様子に泣き寝入りすることになったオフェーリアだったが、父と母が設定したお見合いで彼女の騎士をしていたヴァレントと出会い、とある復讐の方法を思いついたのだった。

壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~

志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。 政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。 社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。 ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。 ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。 一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。 リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。 ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。 そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。 王家までも巻き込んだその作戦とは……。 他サイトでも掲載中です。 コメントありがとうございます。 タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。 必ず完結させますので、よろしくお願いします。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。