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2章
102 鞭打ち④
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「さて、おかしなことになったが話を元に戻す。侯爵と侯爵夫人が長年ジェーン嬢を不当に扱い、虐げていたことは既にわかっている。更には度重なる暴力行為。これは許されることではない」
アンジュはまだ呻き、藻掻いているが国王は無視することにしたようだ。
淡々と話を進めていく。
「公爵も把握していたそれを公に訴え出なかったのは、偏にキャンベル侯爵家の後継の為だな」
「はい、陛下。侯爵が処罰を受け、爵位が縁戚の者に移ってしまう可能性を考えました。それではサンドラ殿の遺志に背くと思い、訴えることができませんでした」
「侯爵夫妻はそれを悪用したのだな」
「…申し訳ありません」
アダムが頭を下げる。
「恐れながら陛下。キャンベル侯爵がこれまで好きに振舞えたのはジェーン嬢が女性である為、爵位の継承を認めらていないからだと思えます。男性と同様に嫡子であれば未婚の女性であっても爵位の継承が認められていれば、公爵も迷いなく侯爵を告発できたのではありませんか」
「女性の継承問題か。…わかっている。先程のことも継承の問題であった。そもそもジェーン嬢が爵位を継いでいれば、夫の愛人が子を生んでもその子に爵位がいくことはない」
国王はマルグリットへ淡々と答えているが、これは重要なことだ。
先日とは違い、ここは公の場で書記官が記録を取っている。
「女性に爵位の継承を認めるよう議会に諮ろう」
国王に女性の爵位継承を認める意志があることを書記官がしっかりと記録した。
「だが、今はまだそれは認められていない。だから今回はこの措置を取る」
国王が一同を見渡した。
「キャンベル侯爵家の次期後継者は、ジェーン嬢とその夫と定める。ジェーン嬢の婚姻前に不慮のことがあった時は、傍系のヨラン・ダナッシュが跡を継ぐこととする。エミリー嬢とその夫に爵位が渡ることはない」
ヨラン・ダナッシュはキャンベル侯爵家の血筋の者で、今でもジェーンに次ぐ継承権の持ち主だ。
だが次女のエミリーが結婚することで、ジェーンが未婚のまま死んだ場合エミリーとその夫に爵位が移る可能性が生まれていた。
デミオンやアンジュは、ジェーンを虐げてはいても手にかけるほどの勇気はない。
そうは思うが、国王はその可能性を根本から断ち切ったのだ。
「またジェーン嬢が婚姻を結ぶまでは、現侯爵が爵位を保つことを認める。しかしジェーン嬢が結婚した暁には、即時にその爵位はジェーン嬢とその夫へ移ることとする。それまで侯爵と侯爵夫人には先日の王命違反への罰と併せて邸敷地内での幽閉を命じ、その権限も取り上げる。侯爵としての代行権をジェーン嬢へ与え、更にジェーン嬢が任ずる者に代行権を一時的に委譲する。ジェーン嬢はしばらく国を離れるのだからな」
処罰の内容はアリシアが予想した通りだった。
軽いようで惨い罰である。
これでデミオンとアンジュが表に出てくることはなくなった。そして当主としての全権を握ったジェーンが、2人に遠慮する必要もない。邸で何か起こったとしても、それが表に出ることはないだろう。
今まで2人がジェーンに対して、してきたことだ。
そして元から嫌われているデミオンとアンジュが幽閉されたとしても、社交界で気に留める者はいない。
2人は訪ねてくる者もいない邸で、ジェーンの仕打ちに怯えながら生涯を2人きりで過ごすことになる。
そう、2人きりだ。
あの邸に2人の世話をしたがる侍女がいるとは思えないのだから。
アンジュはまだ呻き、藻掻いているが国王は無視することにしたようだ。
淡々と話を進めていく。
「公爵も把握していたそれを公に訴え出なかったのは、偏にキャンベル侯爵家の後継の為だな」
「はい、陛下。侯爵が処罰を受け、爵位が縁戚の者に移ってしまう可能性を考えました。それではサンドラ殿の遺志に背くと思い、訴えることができませんでした」
「侯爵夫妻はそれを悪用したのだな」
「…申し訳ありません」
アダムが頭を下げる。
「恐れながら陛下。キャンベル侯爵がこれまで好きに振舞えたのはジェーン嬢が女性である為、爵位の継承を認めらていないからだと思えます。男性と同様に嫡子であれば未婚の女性であっても爵位の継承が認められていれば、公爵も迷いなく侯爵を告発できたのではありませんか」
「女性の継承問題か。…わかっている。先程のことも継承の問題であった。そもそもジェーン嬢が爵位を継いでいれば、夫の愛人が子を生んでもその子に爵位がいくことはない」
国王はマルグリットへ淡々と答えているが、これは重要なことだ。
先日とは違い、ここは公の場で書記官が記録を取っている。
「女性に爵位の継承を認めるよう議会に諮ろう」
国王に女性の爵位継承を認める意志があることを書記官がしっかりと記録した。
「だが、今はまだそれは認められていない。だから今回はこの措置を取る」
国王が一同を見渡した。
「キャンベル侯爵家の次期後継者は、ジェーン嬢とその夫と定める。ジェーン嬢の婚姻前に不慮のことがあった時は、傍系のヨラン・ダナッシュが跡を継ぐこととする。エミリー嬢とその夫に爵位が渡ることはない」
ヨラン・ダナッシュはキャンベル侯爵家の血筋の者で、今でもジェーンに次ぐ継承権の持ち主だ。
だが次女のエミリーが結婚することで、ジェーンが未婚のまま死んだ場合エミリーとその夫に爵位が移る可能性が生まれていた。
デミオンやアンジュは、ジェーンを虐げてはいても手にかけるほどの勇気はない。
そうは思うが、国王はその可能性を根本から断ち切ったのだ。
「またジェーン嬢が婚姻を結ぶまでは、現侯爵が爵位を保つことを認める。しかしジェーン嬢が結婚した暁には、即時にその爵位はジェーン嬢とその夫へ移ることとする。それまで侯爵と侯爵夫人には先日の王命違反への罰と併せて邸敷地内での幽閉を命じ、その権限も取り上げる。侯爵としての代行権をジェーン嬢へ与え、更にジェーン嬢が任ずる者に代行権を一時的に委譲する。ジェーン嬢はしばらく国を離れるのだからな」
処罰の内容はアリシアが予想した通りだった。
軽いようで惨い罰である。
これでデミオンとアンジュが表に出てくることはなくなった。そして当主としての全権を握ったジェーンが、2人に遠慮する必要もない。邸で何か起こったとしても、それが表に出ることはないだろう。
今まで2人がジェーンに対して、してきたことだ。
そして元から嫌われているデミオンとアンジュが幽閉されたとしても、社交界で気に留める者はいない。
2人は訪ねてくる者もいない邸で、ジェーンの仕打ちに怯えながら生涯を2人きりで過ごすことになる。
そう、2人きりだ。
あの邸に2人の世話をしたがる侍女がいるとは思えないのだから。
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