【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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3章

129 初デート

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 街へ行くのは休日の前日になった。
 休日は人出が増えるので警備のことを考えても避けた方が良い。
 想定外の難題を課せられて若干自棄になったレオナルドの、「そのまま翌日も2人で寝室に籠ってしまえ」という意思表示でもあった。


「おかしくないかしら」

「いつもとは違いますが、とてもお綺麗ですわ。殿下もきっとお喜びになります」

「そうかしら?」

 鏡を見ながら不安気な表情を見せるアリシアにエレノアが頷く。
 レイヴンはアリシアであれば何でも気に入るのだから間違いない。

 お忍びで街へ出掛けるのでいつもの様なドレスではない。
 レイヴンに薦められて着るようになったコルセットをつけない、だけど質の良いワンピースでさえなく、平民の女性が着るような質素なワンピースを着ている。
 色も目立たない様にとベーシュをベースにしたものだ。

 それでもネックラインはレースアップ・フロントになっており、結ばれた濃い茶色の紐がポイントになっている。
 袖口やスカートの裾にもチェック柄が入っていて可愛らしい。
 靴も茶色のブラッチャーで、紐がワンピースのものとお揃いになっている。
 使われている革は質の良いものではないが、平民の間で一般的に使われているものだ。
 質素ではあるものの平民の女性であれば十分にお洒落な装いである。

 これを用意したのはレオナルドだった。

 デート用の服装を一式持って現れたレオナルドにアリシアは驚いた。
 そんなアリシアを見てレオナルドは苦笑する。

 アリシアへの想いを告げた後は自分の手でアリシアを着飾らせたいレイヴンだが、これは学生時代に果たせなかった夢だ。
 学生時代は公爵家がアリシアの衣服を用意していた。
 デートをするのにアリシアがどんな服を着ているのか、楽しみに迎えに行く。
 それも果たせなかった夢の一部だというレイヴンに、レオナルドがアリシアの服を用意することにしたのだ。

 ようやく初恋を叶えた義弟へのレオナルドなりの祝いでもあった。



 ドレッシングルームから部屋へ戻るとタイミングよく扉を叩く音がした。

「アリシア、入っても良い?」

 初デートのお迎えに緊張しているのか、レイヴンの硬い声がする。
 アリシアの許可を得たエレノアが扉を開くと小さな花束を持ったレイヴンが入って来た。
 アリシアを見て顔を輝かせる。

「すごく可愛いよ、アリシア!」

「…おかしくないですか?」

 真っ直ぐにアリシアを褒めるレイヴンに、アリシアが俯いて頬を染める。
 初めてする格好に自信が持てない。
 コルセットをしていない服装は動きやすいけれど、頼りなくて心許なく感じてしまう。

 それにレイヴンも平民に見えるよう普段とは違う格好をしている。
 無地の白いシャツに黒のスキニーパンツというシンプルな装いだが、シンプルなだけにレイヴンのスタイルの良さを引き立たせて見える。
 恥ずかしくて直視できない。
 
「おかしくなんかないよ。とても良く似合ってる。すごく可愛い」

 レイヴンはにこにこと楽しそうだ。
 学生の頃はどんなに美しいと思っていても言葉にすることができなかった。
 その鬱憤を晴らすかのようにアリシアを褒め称えている。

 だけどいつものように抱き締めることはしない。
 これは初デートなのだ。

 レイヴンは手に持っていた花束をそっと差し出した。

「…私に?」

 結婚する前、誕生日の贈り物として何度か花束が届けられた。
 今も指示を受けた庭師から毎日薔薇が届けられている。
 だけどレイヴンから直接花束を受け取るのは初めてだ。

「気に入ってくれた?」

「はい、とてもいい香りがします」
 
 嬉しそうに笑うアリシアにレイヴンはホッとしたような表情になる。

 こうして初めてのデートは順調に始まった。




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