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1 ジェレミー ーダイアナに何があったのか?
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ジェレミーが次に目を覚ましたのは古びた病院だった。
見慣れない天井に、ここは何処かと考えていると、泣きそうな顔の両親とライナス、ミリアムが駆け寄ってきた。
何かを言っているようだったが、彼らの声は聞こえなかった。
………父上と母上は領地にいるはずなのに、どうして此処に?
ぼんやり考えている内にまた意識は暗闇に沈んでいった。
ジェレミーが話せるようになったのは最初に目覚めてから五日も経った後だった。
それまでは少し目覚めてもすぐに眠ってしまっていたらしい。
それからジェレミーは事件のあらましを聞かされた。
同行していた騎士や従者、侍女たちは皆殺され、生き残ったのはジェレミーだけだった。
「彼らには申し訳ないけれど、あなただけでも助かって良かったわ。全然目を覚さないから駄目かと思ったのよ」
「こうして話せるようになってホッとしたわ。本当に心配したのよ」
ベッドの傍らに座るエレナは目を赤くしていた。並んで座るミリアムも目元をハンカチで拭っている。
ジェレミーが病院に運び込まれてから目を覚ますまでに半月も掛かったという。領地に居た両親もライナスからの早馬を受けて慌てて駆けつけたらしい。
事件の報せを受けてからはミリアムも婚家の了解を得て病院に通い詰めているという。
「本当に………伯爵令嬢には感謝してもしきれないわ」
ジェレミーを助けてくれたのは、偶然通りかかった伯爵令嬢らしい。
明らかに盗賊の仕業とわかる惨状の中、怖かったはずなのに令嬢は自ら馬車を降りて生存者を探してくれた。
そして横転した馬車の下で微かに動くジェレミーを見つけて病院へ運んでくれたのだ。令嬢が居なければジェレミーも死んでいただろう。
ジェレミーも消え掛かる意識の中で聞いた女性の呼び掛ける声を覚えている。
それからもエレナとミリアムは何かとジェレミーに話し掛けていた。
だけどジェレミーは何も応えなかった。応えるだけの気力が無かったのだ。
命は確かに助かった。
だけどそれが幸運なのかは分からない。
盗賊に斬られ、馬車の下敷きになったジェレミーは足に大きな傷を負っていた。ジェレミーの意識がはっきりした後、病室を訪れた医師は「二度と歩けないかもしれない」と言ったのだ。
それを聞いた時、ジェレミーは絶望した。
ジェレミーは生まれた時から公爵家の後継ぎとして生きてきた。
だけど歩けなくなったら爵位は継げない。
思えば公爵家の嫡男が入院しているというのに見舞客は驚くほど少なかった。家門の人たちの中でもジェレミーが後継者から外されると思われているのだろう。
治療の経過を見てみなければわからない、訓練に依ってはまた歩けるようになる、と医師の話は続いていたが、呆然としたジェレミーの耳には入っていなかった。
そんな中でもアイリーンは何度も見舞いに来てくれていた。
アイリーンもジェレミーの状態は既に知っているだろう。結婚は大きな契約なので、両親がペレスフォード侯爵家へ知らせていないはずがない。
ジェレミーが後継者から外されるとアイリーンも次期公爵夫人の立場を失ってしまう。
自分の将来がどうなるのか不安なはずなのに、それまでと変わらない態度で接してくれるアイリーンが嬉しくて苦しかった。
ペレスフォード侯爵家から婚約解消の申し入れがあったのは事件から半年後、11月に入ってからのことだった。
見慣れない天井に、ここは何処かと考えていると、泣きそうな顔の両親とライナス、ミリアムが駆け寄ってきた。
何かを言っているようだったが、彼らの声は聞こえなかった。
………父上と母上は領地にいるはずなのに、どうして此処に?
ぼんやり考えている内にまた意識は暗闇に沈んでいった。
ジェレミーが話せるようになったのは最初に目覚めてから五日も経った後だった。
それまでは少し目覚めてもすぐに眠ってしまっていたらしい。
それからジェレミーは事件のあらましを聞かされた。
同行していた騎士や従者、侍女たちは皆殺され、生き残ったのはジェレミーだけだった。
「彼らには申し訳ないけれど、あなただけでも助かって良かったわ。全然目を覚さないから駄目かと思ったのよ」
「こうして話せるようになってホッとしたわ。本当に心配したのよ」
ベッドの傍らに座るエレナは目を赤くしていた。並んで座るミリアムも目元をハンカチで拭っている。
ジェレミーが病院に運び込まれてから目を覚ますまでに半月も掛かったという。領地に居た両親もライナスからの早馬を受けて慌てて駆けつけたらしい。
事件の報せを受けてからはミリアムも婚家の了解を得て病院に通い詰めているという。
「本当に………伯爵令嬢には感謝してもしきれないわ」
ジェレミーを助けてくれたのは、偶然通りかかった伯爵令嬢らしい。
明らかに盗賊の仕業とわかる惨状の中、怖かったはずなのに令嬢は自ら馬車を降りて生存者を探してくれた。
そして横転した馬車の下で微かに動くジェレミーを見つけて病院へ運んでくれたのだ。令嬢が居なければジェレミーも死んでいただろう。
ジェレミーも消え掛かる意識の中で聞いた女性の呼び掛ける声を覚えている。
それからもエレナとミリアムは何かとジェレミーに話し掛けていた。
だけどジェレミーは何も応えなかった。応えるだけの気力が無かったのだ。
命は確かに助かった。
だけどそれが幸運なのかは分からない。
盗賊に斬られ、馬車の下敷きになったジェレミーは足に大きな傷を負っていた。ジェレミーの意識がはっきりした後、病室を訪れた医師は「二度と歩けないかもしれない」と言ったのだ。
それを聞いた時、ジェレミーは絶望した。
ジェレミーは生まれた時から公爵家の後継ぎとして生きてきた。
だけど歩けなくなったら爵位は継げない。
思えば公爵家の嫡男が入院しているというのに見舞客は驚くほど少なかった。家門の人たちの中でもジェレミーが後継者から外されると思われているのだろう。
治療の経過を見てみなければわからない、訓練に依ってはまた歩けるようになる、と医師の話は続いていたが、呆然としたジェレミーの耳には入っていなかった。
そんな中でもアイリーンは何度も見舞いに来てくれていた。
アイリーンもジェレミーの状態は既に知っているだろう。結婚は大きな契約なので、両親がペレスフォード侯爵家へ知らせていないはずがない。
ジェレミーが後継者から外されるとアイリーンも次期公爵夫人の立場を失ってしまう。
自分の将来がどうなるのか不安なはずなのに、それまでと変わらない態度で接してくれるアイリーンが嬉しくて苦しかった。
ペレスフォード侯爵家から婚約解消の申し入れがあったのは事件から半年後、11月に入ってからのことだった。
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