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3章 〜過去 正妃と側妃〜
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「リーザ、顔色が悪い。疲れているんだろう?晩餐会は出なくて良いから休んでくれ」
執務を早めに切り上げ、薔薇の宮を訪れたカールはエリザベートを見て表情を曇らせた。
ほとんど眠れないまま3日過ごしたエリザベートは、化粧でも誤魔化せないほど顔色が悪化していて今にも倒れそうだ。
それなのにエリザベートは無理をして笑う。
「まさか、そんな訳にはいきませんわ」
「本当に出席しなくて構わない。無理をして寝込んでしまったら、その方が心配だよ」
今夜行われるのは側妃を迎えたお披露目の晩餐会だ。
通常正式な席には正妃しか参席しないし、国王と並べるのは王妃だけである。
だけどこの晩餐会だけは違う。
この晩餐会では新しく迎えた側妃と国王が並んで座り、王妃は招待客として主賓の席に座る。
形だけでも王妃が側妃を歓迎していると示す為だと言われているが、カールにしてみれば余計な世話だ。側妃を迎えて傷ついている王妃を更に痛めつける必要があるだろうか。
それに形式とはいえ、他の女と並んでいるところをエリザベートに見せたくはない。
「そんな顔色のリーザを見たら皆も不安になると思う。無理をせずに休んだ方が良い」
カールが言葉を重ねると、迷うようにエリザベートの瞳が揺れた。
エリザベートの気持ちはわかる。晩餐会を欠席して、側妃を受け入れていないと思われるのが嫌なのだ。
だけど幸いというべきか、エリザベートの体が弱いことは皆知っている。カールが「体調を崩したから休ませた」と言えば、疑う者はいないだろう。
「頼むよ、リーザ」
目を合わせてカールが頼み込むと、エリザベートは躊躇いながら頷いた。
夕方近くに両親と別れたルイザは、侍女たちに体中を磨かれ、この日の為に作ったドレスに着替えた。
側妃は結婚式を挙げられないのでこの晩餐会が結婚式の代わりになる。白を基調にしたイブニングドレスで、スカート部分に重ねられたレースに小粒のルビーが散りばめられていて、キラキラと輝いている。ドレスに合わせて作ったルビーのネックレスとイヤリング、花の形を模したローズクォーツのヘッドドレスを付ければウェディングドレスとは違った趣になるのが不思議だ。
ルイザがこうして着飾るのはこれが2回目である。
1度目はデビュタントの時で、さすがにデビュタント前の令嬢を王家に迎えるわけにはいかないと言われて近場の領地で急いで済ませた。
あの時もいつもと違う自分の姿に鏡から目を離せなかった。
だけど今日はあの時以上に美しく輝いているように見える。
「妃殿下、とてもお綺麗ですわ!」
そう思っているのはルイザだけではないようで、ミザリーも興奮して何度もそう繰り返している。
「ありがとう。すごく嬉しいわ」
はしゃぐミザリーの声を聞きながら、ルイザはにっこりと笑った。
晩餐会が行われるのは外宮の食堂だ。
国王を待たせないようにと言われて、ルイザは急いで馬車へ乗り込む。
何故国王は迎えに来ないのか。
経験の浅いルイザにはそんな疑問は浮かばなかった。
執務を早めに切り上げ、薔薇の宮を訪れたカールはエリザベートを見て表情を曇らせた。
ほとんど眠れないまま3日過ごしたエリザベートは、化粧でも誤魔化せないほど顔色が悪化していて今にも倒れそうだ。
それなのにエリザベートは無理をして笑う。
「まさか、そんな訳にはいきませんわ」
「本当に出席しなくて構わない。無理をして寝込んでしまったら、その方が心配だよ」
今夜行われるのは側妃を迎えたお披露目の晩餐会だ。
通常正式な席には正妃しか参席しないし、国王と並べるのは王妃だけである。
だけどこの晩餐会だけは違う。
この晩餐会では新しく迎えた側妃と国王が並んで座り、王妃は招待客として主賓の席に座る。
形だけでも王妃が側妃を歓迎していると示す為だと言われているが、カールにしてみれば余計な世話だ。側妃を迎えて傷ついている王妃を更に痛めつける必要があるだろうか。
それに形式とはいえ、他の女と並んでいるところをエリザベートに見せたくはない。
「そんな顔色のリーザを見たら皆も不安になると思う。無理をせずに休んだ方が良い」
カールが言葉を重ねると、迷うようにエリザベートの瞳が揺れた。
エリザベートの気持ちはわかる。晩餐会を欠席して、側妃を受け入れていないと思われるのが嫌なのだ。
だけど幸いというべきか、エリザベートの体が弱いことは皆知っている。カールが「体調を崩したから休ませた」と言えば、疑う者はいないだろう。
「頼むよ、リーザ」
目を合わせてカールが頼み込むと、エリザベートは躊躇いながら頷いた。
夕方近くに両親と別れたルイザは、侍女たちに体中を磨かれ、この日の為に作ったドレスに着替えた。
側妃は結婚式を挙げられないのでこの晩餐会が結婚式の代わりになる。白を基調にしたイブニングドレスで、スカート部分に重ねられたレースに小粒のルビーが散りばめられていて、キラキラと輝いている。ドレスに合わせて作ったルビーのネックレスとイヤリング、花の形を模したローズクォーツのヘッドドレスを付ければウェディングドレスとは違った趣になるのが不思議だ。
ルイザがこうして着飾るのはこれが2回目である。
1度目はデビュタントの時で、さすがにデビュタント前の令嬢を王家に迎えるわけにはいかないと言われて近場の領地で急いで済ませた。
あの時もいつもと違う自分の姿に鏡から目を離せなかった。
だけど今日はあの時以上に美しく輝いているように見える。
「妃殿下、とてもお綺麗ですわ!」
そう思っているのはルイザだけではないようで、ミザリーも興奮して何度もそう繰り返している。
「ありがとう。すごく嬉しいわ」
はしゃぐミザリーの声を聞きながら、ルイザはにっこりと笑った。
晩餐会が行われるのは外宮の食堂だ。
国王を待たせないようにと言われて、ルイザは急いで馬車へ乗り込む。
何故国王は迎えに来ないのか。
経験の浅いルイザにはそんな疑問は浮かばなかった。
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