病弱な姉は、何でも許されると勘違いしている。だから、あえて婚約者を譲ってやった。が、姉は知らない。彼は「病弱な幼馴染」を最優先することを

ぽんた

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「ランは、うるさいことを言わなかった。それどころか、わたしに関心や興味を抱こうともしなかった。その彼女との関係が心地よかったんだ。だが、アビゲイルだっけ? きみは違う。きみのさきほどの言葉で、めちゃくちゃ面倒なレディだということがわかった。きみみたいなレディは苦手だ。というか、好きではない。わたしは『病弱な幼馴染』を優先したいし、彼女とずっといっしょにいたい。婚約者ごときに邪魔をされたくないんだ」
「な、な、なんですって? アーノルド様、わたしだって病弱なのです。ずっと寝台の上ですごし、不幸で不遇な人生を送っています。やっとほんとうの婚約者との『真実の愛』を見つけ、未来が見えてきたのです。それなのに、ひどすぎるじゃありませんか」
「きみが病弱? それだけ舌がまわるのならたいしたことのない病だろう? わたしの『病弱な幼馴染』は、きみのようにパーティーに出席出来ない。ペラペラとくだらないことをさえずりもしない。わたしの婚約者でありたいのなら、ランのようにわたしの人生に踏み込まないでほしい。それがイヤなら婚約破棄だ」
「それはイヤです。せっかく公爵夫人になれるチャンスなのですから」

 突如始まった諍いを、クリスとわたしだけでなく周囲の人たちも面白がって見ている。まぁ、両親と兄は困惑かつ当惑しているけれど。

「公爵夫人? きみは、公爵夫人になりたいのか? ああ、なるほど。結局は、わたしではなくその肩書きが欲しいだけなのだね。だとすれば、残念だったね。きみは、弟と婚約破棄をすべきではなかった」
「どういうことですか?」
「簡単なことさ。フェアバーンズ公爵は、弟のクリスが継いだというわけさ」
「なんですって? クリス。あなた、だましたわね? わたしに婚約破棄をされたからといって、意地悪をしたんでしょう?」

 姉は、金切り声をあげた。

 あまりの元気のよさに、病弱はたいそう驚いているだろう。

「だました? 人聞きの悪いことを言うんだね。わたしは、兄が公爵家を継ぐとはひと言も言っていない。アビゲイル、ひとえにきみの早合点だ。というか、勘違いだ」
「クリス、あなたの言い方が悪かったのよ。責任をとりなさい。再婚約をなさい」

 姉は、無茶苦茶すぎる。

「お断りさ。わたしには、すでに婚約者がいるのだから。というか、すぐにでも結婚をするつもりだ」

 クリスは、そう宣言するとわたしの前に立ってわたしに手を差しだした。

「ラン。わたしの愛する婚約者さん、踊ってくれるよね?」

(なんですって? クリス、だましたわね? というか、ちゃんと言わなかったわね?)

 姉同様、金切り声をあげた。もちろん、心の中でだ。

 が、ここで拒否ることはできない。クリスに恥をかかせることになるからだ。それだけではない。フェアバーンズ公爵家の家門に泥を塗ることになる。

「よろこんで」

 彼の手を取るしかなかった。自分でも笑顔がひきつりまくっているのがわかった。

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