1 / 39
当たり前の離縁
「おれがおまえの姉ディアーヌといい仲だということは知っているよな?ディアーヌの離縁の決着がついた。だからやっと、彼女を妻に迎えられる。というわけで、おまえはもう用済みだ。そうだな。どうせだから、異母弟のところに行くといい。もともと、あいつはディアーヌと結婚するはずだったんだ。妹のおまえでもかまわないだろう」
この日、バロワン王国の第一王子マリユス・ノディエからそう宣言された。
この一年、わたしたちは夫婦だったのかしら?とにかく、形式上はそうだったみたい。政略結婚とかうわべだけの仮面夫婦とか、そういうケースはよくある。だけど、わたしたちの場合はそれすら当てはまらない。
一年もよくぞ耐えられたものだわ。
このバカもわたしも。
彼にロクに返事をすることが出来なかった。
お姉様が、奥の宮殿の「迎えの間」に入って来たからである。
バカ男とバカ女は、親衛隊や執事や侍女たちが見守る中、恥ずかし気もなく熱い抱擁をしてのけた。それから、さらに熱い口づけをかわした。
わたしも含めて、こんな見苦しい、いえ、官能的なシーンを見たいなんて思っていない。
だれもがいたたまれない思いを抱き、必死に視線をあらぬ方向へ向けている。
ずっと周囲と自分自身を偽り、演技をしてきたのがバカバカしくなってきた。
だから、何も言わずに背を向け歩きだした。
「弟によろしくな」
バカ男のかすれ声が背中にあたった。
「ひきこもり王子によろしくね」
そして、バカ女、もといお姉様の興奮しきっている声も背中にあたった。
はいはい。真昼間からお盛んなことね。
せめて、寝室に行くまではガマンしたほうがいいわよ。
一応、王子と王子妃なんだから。
ここでやっちゃったら、それはただの野獣ですものね。
この国も、もうおしまいかもしれないわね。
こうして、わたしは辺境の地へ旅立った。
あらたな夫になる「ひきこもり王子」のもとへ。
この日、バロワン王国の第一王子マリユス・ノディエからそう宣言された。
この一年、わたしたちは夫婦だったのかしら?とにかく、形式上はそうだったみたい。政略結婚とかうわべだけの仮面夫婦とか、そういうケースはよくある。だけど、わたしたちの場合はそれすら当てはまらない。
一年もよくぞ耐えられたものだわ。
このバカもわたしも。
彼にロクに返事をすることが出来なかった。
お姉様が、奥の宮殿の「迎えの間」に入って来たからである。
バカ男とバカ女は、親衛隊や執事や侍女たちが見守る中、恥ずかし気もなく熱い抱擁をしてのけた。それから、さらに熱い口づけをかわした。
わたしも含めて、こんな見苦しい、いえ、官能的なシーンを見たいなんて思っていない。
だれもがいたたまれない思いを抱き、必死に視線をあらぬ方向へ向けている。
ずっと周囲と自分自身を偽り、演技をしてきたのがバカバカしくなってきた。
だから、何も言わずに背を向け歩きだした。
「弟によろしくな」
バカ男のかすれ声が背中にあたった。
「ひきこもり王子によろしくね」
そして、バカ女、もといお姉様の興奮しきっている声も背中にあたった。
はいはい。真昼間からお盛んなことね。
せめて、寝室に行くまではガマンしたほうがいいわよ。
一応、王子と王子妃なんだから。
ここでやっちゃったら、それはただの野獣ですものね。
この国も、もうおしまいかもしれないわね。
こうして、わたしは辺境の地へ旅立った。
あらたな夫になる「ひきこもり王子」のもとへ。
あなたにおすすめの小説
地味顔令嬢の私を「嘘の告白」で笑いものにするつもりですか? 結構です、なら本気で惚れさせてから逆にこっちが盛大に振ってあげます!
日々埋没。
恋愛
「お前が好きだ。この俺と付き合ってくれないか?」
学園のアイドル、マルスからの突然の告白。
憧れの人からの言葉に喜んだのも束の間、伯爵令嬢リーンベイルは偶然知ってしまう。それが退屈しのぎの「嘘の告白(ウソコク)」だったことを。
「あの地味顔令嬢が俺に釣り合うわけないだろ。ドッキリのプラカードでも用意しとくわ」
親友のミネルバと共に怒りに震える彼女は、復讐を決意する。まずは父の言いつけで隠していた「絶世の美貌」を解禁! 嘘の恋を「真実の恋(マジコク)」に変えさせ、最高のタイミングで彼を地獄へ突き落とす――。
「……今さら本気になった? 冗談はやめてください、これドッキリですよ?」
妹に全てを奪われた私、実は周りから溺愛されていました
日々埋没。
恋愛
「すまないが僕は真実の愛に目覚めたんだ。ああげに愛しきは君の妹ただ一人だけなのさ」
公爵令嬢の主人公とその婚約者であるこの国の第一王子は、なんでも欲しがる妹によって関係を引き裂かれてしまう。
それだけでは飽き足らず、妹は王家主催の晩餐会で婚約破棄された姉を大勢の前で笑いものにさせようと計画するが、彼女は自分がそれまで周囲の人間から甘やかされていた本当の意味を知らなかった。
そして実はそれまで虐げられていた主人公こそがみんなから溺愛されており、晩餐会の現場で真実を知らされて立場が逆転した主人公は性格も見た目も醜い妹に決別を告げる――。
※本作は過去に公開したことのある短編に修正を加えたものです。
氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!
柚屋志宇
恋愛
「お前を愛することはない」
『氷の騎士』侯爵令息ライナスは、伯爵令嬢セルマに白い結婚を宣言した。
セルマは家同士の政略による契約結婚と割り切ってライナスの妻となり、二年後の離縁の日を待つ。
しかし結婚すると、最初は冷たかったライナスだが次第にセルマに好意的になる。
だがセルマは離縁の日が待ち遠しい。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
【完結】「元カノが忘れられないんでしょう?」と身を引いた瞬間、爽やか彼氏の執着スイッチが入りました
恋せよ恋
恋愛
「元カノが忘れられないなら、私が身を引くわくべきよね」
交際一周年、愛するザックに告げた決別の言葉。
でも、彼は悲しむどころか、見たこともない
暗い瞳で私を追い詰めた。
「僕を捨てる? 逃げられると思っているの、アン」
私の知る爽やかな王子の仮面が剥がれ落ち、
隠されていた狂おしいほどの独占欲が牙を剥く。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました
小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」
二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。
第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。
それから二十年。
第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。
なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。
不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。
これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。
※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。
10回目の婚約破棄。もう飽きたので、今回は断罪される前に自分で自分を追放します。二度と探さないでください(フリではありません)
放浪人
恋愛
「もう、疲れました。貴方の顔も見たくありません」
公爵令嬢リーゼロッテは、婚約者である王太子アレクセイに処刑される人生を9回繰り返してきた。 迎えた10回目の人生。もう努力も愛想笑いも無駄だと悟った彼女は、断罪イベントの一ヶ月前に自ら姿を消すことを決意する。 王城の宝物庫から慰謝料(国宝)を頂き、書き置きを残して国外逃亡! 目指せ、安眠と自由のスローライフ!
――のはずだったのだが。
「『顔も見たくない』だと? つまり、直視できないほど私が好きだという照れ隠しか!」 「『探さないで』? 地の果てまで追いかけて抱きしめてほしいというフリだな!」
実は1周目からリーゼロッテを溺愛していた(が、コミュ障すぎて伝わっていなかった)アレクセイ王子は、彼女の拒絶を「愛の試練(かくれんぼ)」と超ポジティブに誤解! 国家権力と軍隊、そしてS級ダンジョンすら踏破するチート能力を総動員して、全力で追いかけてきた!?
物理で逃げる最強令嬢VS愛が重すぎる勘違い王子。 聖女もドラゴンも帝国も巻き込んだ、史上最大規模の「国境なき痴話喧嘩」が今、始まる!
※表紙はNano Bananaで作成しています
【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」
仙冬可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。
「で、政略結婚って言われましてもお父様……」
優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。
適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。
それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。
のんびりに見えて豪胆な令嬢と
体力系にしか自信がないワンコ令息
24.4.87 本編完結
以降不定期で番外編予定