「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と私を嫌う夫に言われましたので、素直に従った結果……

ぽんた

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当たり前の離縁

「おれがおまえの姉ディアーヌといい仲だということは知っているよな?ディアーヌの離縁の決着がついた。だからやっと、彼女を妻に迎えられる。というわけで、おまえはもう用済みだ。そうだな。どうせだから、異母弟のところに行くといい。もともと、あいつはディアーヌと結婚するはずだったんだ。妹のおまえでもかまわないだろう」

 この日、バロワン王国の第一王子マリユス・ノディエからそう宣言された。

 この一年、わたしたちは夫婦だったのかしら?とにかく、形式上はそうだったみたい。政略結婚とかうわべだけの仮面夫婦とか、そういうケースはよくある。だけど、わたしたちの場合はそれすら当てはまらない。

 一年もよくぞ耐えられたものだわ。

 このバカもわたしも。

 彼にロクに返事をすることが出来なかった。

 お姉様が、奥の宮殿の「迎えの間」に入って来たからである。

 バカ男とバカ女は、親衛隊や執事や侍女たちが見守る中、恥ずかし気もなく熱い抱擁をしてのけた。それから、さらに熱い口づけをかわした。

 わたしも含めて、こんな見苦しい、いえ、官能的なシーンを見たいなんて思っていない。

 だれもがいたたまれない思いを抱き、必死に視線をあらぬ方向へ向けている。

 ずっと周囲と自分自身を偽り、演技をしてきたのがバカバカしくなってきた。

 だから、何も言わずに背を向け歩きだした。

「弟によろしくな」

 バカ男のかすれ声が背中にあたった。

「ひきこもり王子によろしくね」

 そして、バカ女、もといお姉様の興奮しきっている声も背中にあたった。

 はいはい。真昼間からお盛んなことね。

 せめて、寝室に行くまではガマンしたほうがいいわよ。

 一応、王子と王子妃なんだから。

 ここでやっちゃったら、それはただの野獣ですものね。

 この国も、もうおしまいかもしれないわね。

 こうして、わたしは辺境の地へ旅立った。

 あらたな夫になる「ひきこもり王子」のもとへ。

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