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しおりを挟むこの世界には男しかいない。同じ男ではあるが、更にバース性と呼ばれるもので分けられる。バース性では、高確率で相手を孕ませる事ができるアルファ、相手がアルファなら高確率で孕むことができる発情期を持つオメガ、妊娠率は低いものの産む事も孕ませる事も可能なベータに分けられる。
そしてアルファと呼ばれる孕ませることのできる性を持つ者はこの世界では希少で、能力も高く地位も保証されている。アルファに選ばれた者だけが子を孕み子孫を残す。オメガはアルファと番関係を結ぶことが出来、番った相手とならアルファが生まれる確率が上がると言われている。
というのがこの世界の常識だ。
アルファ1割、オメガ3割、ベータと呼ばれる一般的な孕み腹持ちが6割の世界だ。アルファはより多くのオメガやベータと関係を持つことが推奨されている。アルファは大切な種馬ってわけだな。ハーレムを持たないアルファには精液提供の義務が発生するしな。
まぁ…そんなわけでこの世界ではバース性次第で立場が変わってしまうって訳だ。中学3年に上がると同時に強制的なバース性検査が行われる。人生がかかっていると言っても過言ではない、そんな大事な大事なバース性の検査結果が返ってきた。
#イオリ・フォックシス____ α
検査の結果、αだと判定されました。おめでとうございます。
後日バース校への入学案内及び入学手続きに関する書類が届けられます。期日までに手続きを終えていただきますようよろしくお願いします。
「はぁーあ…」
「おいおい、アルファだってわかってそんな顔するのお前くらいだぞ。」
「ムル」
中学に上がって出会った大事な友達のムルは愛らしい顔立ちながら、さっぱりとした性格をしている。ムルは家で結果を見るらしい。他のやつにも見られる可能性があるしな。
ムルの言うとおり確かにαはαというだけでモテるし、人生勝ち組に分類されるんだよな。俺としてはβが良かったんだけど。αは優遇されてる代わりに課される義務も多いからな。
「こんなとこでよく見る気になるな、結果。お前しか開けてないぞ。」
「…だって自覚あったからな。」
「昔から優秀だったよな、イオリは。俺は帰ってから見るつもり。」
「お前のバース性が何でもいいけど、進学しても一緒がいいよなー」
「そうだね、まぁたとえ進学先が別れても友達で居てやるよ。」
「ありがと。ムル」
「卒業したら…冒険者やるって…今でも思ってんの?」
「ん?おう。俺の天職は冒険者。」
そう、俺は基本的に戦闘狂と呼ばれる部類の人間だ。戦ってる時間はすげぇ昂るし楽しい。だから日常的に戦う冒険者は天職ってわけだ。まぁ、αで強いやつは基本的に騎士とかになるらしいけどな。でも騎士は訓練ばっかだからな。
「なら…ならさ、俺、お前のパーティー入ってやってもいいよ。」
「マジ?お前、優秀だし、国家魔術師とかになるかと思ってたわ。」
「ま、それも考えたけどお前といるほうが楽だからね。」
「ふはは!そっか、じゃあよろしくな。」
ムルがパーティーに入る、なんていうと思わなかった。パーティーメンバーは信頼できる奴を集めたかったし、将来が楽しみになってきた。
「ん、じゃあ帰る。」
「おう、また明日。」
「じゃーね。」
ムルが帰っていくのを見送って、冒険者ギルドへ顔を出した。幼い頃から顔を出しているので、周りは顔見知りばかりだ。周りは年上ばかりで俺のことを可愛がってくれている。剣の訓練にも良く付き合ってくれるし、依頼にも連れて行ってくれたりする。
「お!今日も来たのか!イオリ、今日はバース性の結果帰ってくる日だろ?」
「イオリはアルファだろ!」
「俺のこと抱いてくれてもいいぜー?」
「ササはベータだろうよ、抱くなら俺だろ?なぁイオリ!」
ギルドに入った途端に声がかかる。度々依頼に連れてってくれるパーティーの人たちだ。盾役やってるリーダーのササさんに、剣士のシマさん、後方支援及び斥候やってるリンさんの3人だ。ササさんとシマさんはベータ、リンさんはオメガだ。冒険者でΩなのは珍しいんだが、リンさんは凄い優秀で頼りになる。今は悪ふざけして、抱くなら俺だろ?とか言ってるけど…。
てか、何でバース性の結果貰う日とか把握してんだよ、この人たち。話した覚えないんだけど…?っていうか今絡んで来てるけど相手いるの知ってるし、絶対手なんか出さねぇ。
「…勝手に盛り上がり過ぎ。俺はここに相手探しに来てる訳じゃないからな?」
「そんな釣れないこと言うなよ。冗談だろ?」
「そうだそうだ!ちょっと冷た過ぎるぞ?昔はもっと可愛げある反応してただろ!!」
「昔は昔、今は今だろ。俺しばらく顔出さないから。その報告に来ただけだし。」
俺が顔を出さないというと、三人は悪ふざけしていた雰囲気を一変させ、真剣な表情に変わる。
俺がガキだった頃、他所から来た冒険者に嫌がらせされた事があった。今はもう強くなったし大丈夫なんだが、ここのギルドの人達は皆それを覚えていて、少しでも何かあれば直ぐに過保護モードが発動する。
「顔出さねぇってなんかあったか?いつでも話聞くぞ。」
「俺達が力になってやるからな。」
「そうだぞ、俺が頼めばユウだって力貸してくれるし。」
ユウさんっていうのはこの国でS級冒険者やってるリンさんのお相手さん。んでもって俺のことも可愛がってくれてる。たまに会うと手合わせしてもらったりしてる。まぁ全然敵わないんだけど。この国の最強格の人だからな。アドバイスとかもしてくれる優しいお兄さんだ。リンさんに変なちょっかいさえ出さなきゃ、だけど。
「ふっありがと、でも大丈夫。バース校の見学の予定あるだけだから。」
俺が理由を告げれば、皆フッと表情を緩める。
「なるほどな!やっぱりアルファだったんじゃねぇか。」
「祝いだなー!!今日は飲むぞ!」
「うぇーい!ウチのギルドの可愛い末っ子がアルファだった祝いだ!皆今日は宴だぜ!」
「「「「おおおお!」」」」
皆我が事のように嬉しそうで、少し暖かい気持ちになった。
が、その後散々玩具にされることになり、ギルドの面々の顔は暫く見たくないと思わされるのだった。
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とても久しぶりに連載してみます。ゆっくり更新です。よろしくお願いします。
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