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しおりを挟む酔っぱらって布団も被らずに寝たと思ったが、起きたらきちんと着ていた。寒くなって自分で着たのか?とも思ったがどうやらコクヨウが一生懸命着せてくれたようだ。布団に噛み跡が残っている。コクヨウの優しさに温かい気持ちになる。
「ありがとな、コクヨウ」
「すぅ…すぅ…」
俺の枕元で眠っているコクヨウを起こさないように撫でる。ふわふわとした柔らかな撫で心地に癒やされる。身体を起こせば少しひやりとした空気に触れる。コクヨウが布団を掛けてくれてなけりゃ風邪引いてたかもな。
金はあまりないが、今日はいつもよりも高級な肉を食べさせてやろう。お呼びがかかったということはそろそろ冒険者業も再開できる筈だしな。
コクヨウが起きるまでに風呂に入って酒の匂いを落としておかなきゃな。冒険者は飲んでる奴が多いから酒臭くても今更誰も気にしないが…冒険者ギルドの職員はその臭いに顔を顰めるものが多いことも知っているのだ。印象は少しでも良い方がいい。
風呂でさっぱりしたところで来客があった。ラウさんだ。宿主に昨日のことを聞いて訪ねて来たようだ。
「おう!昨日は悪かったな。世話かけた。」
「いえ、大丈夫でしたか?勝手に部屋取ったりして」
「ああ、むしろありがてぇ。金払いに来たんだ。建て替えてくれたんだろ?」
「はい、でもいいです。いつか恩返ししたかったんです。」
「あぁ?それじゃあ俺の顔が立たねぇっつうの。恩なんか感じなくていいっていつも言ってるだろ。相変わらず律儀だな。まぁそんなとこが気に入ってんだがよ」
「まぁまぁ今回は、伝言に来てくれた報酬とでも思っといて下さいよ」
「はぁ…わかったぜ。じゃあ今度とびきり美味いもん食わしてやる。約束だぜ。」
「はい!楽しみにしてます。」
「朝飯は?」
「まだです。コクヨウがまだ寝てて。でももうすぐ起きると思います」
「そうか、じゃあ待ってるからよ。一緒に食おうぜ」
「はい」
扉を締めて振り返れば、ベッドからじっとこちらを見つめるコクヨウがいた。誰と話してたんだ!と問い詰められている気がするのは俺だけか?若干言い訳のように訳を話す。
「ラウさんが昨日の礼を言いに来てくれたんだ。朝飯一緒に食うからな」
「…みー」
不満そうだな。ラウさんが嫌なのか?いつもは二人で食べているからな。まだまだ子供だし甘えたいのかもしれない。コクヨウは着替えなんかもしないし、そのまま食事場所に行ける。
「コクヨウ、飯行くぞ。」
「…」
「コクヨウ?」
「…」
黙ったまま動かない。お腹空いてないのか?それともラウさんが嫌なのか?ともかく朝食に行きたくないらしい。
「コクヨウ、行かないならお前の分も俺が食っちまうからな!」
「がう!」
「いやだろ?じゃあ食べに行くぞ」
「…みー」
物凄く渋々俺に近付いた。コクヨウを慣れた手つきで抱き上げる。機嫌を取るように撫でてやって食事場所に向かう。
「お!来たな。猫よく眠ったか?」
「がるるる!」
「こらコクヨウ!やめろ」
「…」
「いいぜ、気にしねぇからよ」
「すみません…」
「揃ったことだし食おうぜ!腹減って仕方ねぇんだ」
「そうですね」
普段なら大人しく下で食べているんだが、今日は断固拒否!という姿勢を崩さず俺の膝から降りなかった。昨日の夜二人で飲んでいたのが余程嫌だったのだろうか…?だとしたら酒は暫く控えた方がいいかもな。まぁ元々付き合いで飲む程度だしいいんだが。
膝の上では流石に不安定なので椅子に飯の皿を置いた。それを見てよだれを垂らしているコクヨウ。食べたいなら食べればいいだろうに…膝から降りないことのほうが優先されるらしい。
仕方がないので、飯を食う合間にコクヨウの口元にも飯を運んでやる。ようやく飯にありつけたコクヨウはガツガツと食べ始める。いい食べっぷりだ。正面のラウさんも昨日の泥酔ぶりなど嘘のようにガツガツ食べる。二日酔いにはならない質らしい。
「「ごちそうさま」」
「み!」
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